久しぶり、だから、ね 戸惑う
横断歩道を見ながら、飲み終わったカップをもてあそんでいると、翔がこちらに向かってくるのが見えた。席を立って、店の外へ出る。
今日、初めて彼と立って並ぶ。
目の高さがまた、違う。
前は瞳を上げるだけだったのに、今は顎も少し、上向きにしなくてはならない。
「え、背伸びたねぇ。まだ、伸びてんの」
翔は私の瞳と合うように、少しかがむ。
「また、きた。そん時、関節痛くてひどかった。朝陽は縮んでない?」
余計な一言にカチンときて、彼と距離をとるように軽く胸を突く。
ほんの少し触っただけなのにわかる筋肉質の固い胸。
昔はまだぷよぷよ感あったのに。
冗談だよとくすくす笑う彼が前に会った時より、変わっていることばかりで戸惑う。
「行こうか」
と私の腕をとって、引っ張るように歩き出した。
つまずきそうになるのを彼の腕にしがみつくようにして抑えた。
「ごめん」
謝ると、彼の方が戸惑った顔をしている。
「いや、俺が急に引っ張ったから。大丈夫?」
「うん、平気」
結構、体重がかかったはずなのに、彼はびくともしなかった。
さっきの表情が気になって、なんとなく、腕を外しそびれた。
翔も気にしてないようだから腕に手を添えたまま歩く。
前から向かってくるひとと、目が合ったような気がして、思わず、彼の腕から手を抜いた。
「どうかした?」
翔が、驚いたような声を出して、瞳を曇らせて心配そうな表情で私を見てる。
「うん、知り合いかなと思って……、違ってた」
喉に何かが詰まったように声が出しにくくて、細くて小さい声になった。
とたんに、翔は、眉をひそめ、私から顔をそらして、一歩大きく踏み出した。
「あ、そ」
歩幅が合わないから、少し早足で彼を追いかけるように後ろについて歩く。
彼の腕を掴んでいた手を見て、ぎゅっと握る。
さっきまで、隣で話してたのにな。
また、腕を掴んだら、隣で一緒に歩けるのかな。
なんだか、さみしいなんて思うの。
手放したのは、私なのに。




