久しぶり、だから、ね
そのまま、会話が止まって、見つめ合う。
瞳をそらすタイミングも話も見つからない。
頭の中が真っ白で、ひたすら、翔の瞳を見つめるだけ。彼も、そのまま。
かたん、と、私の後ろの席に人が座った音で、目覚めたように瞳が見開いて、頭が覚醒した。
首から、音が出そうなくらいのぎこちなさで、翔から顔をそらして、バックから携帯端末を出す。
「亜紀に連絡してもいい? 今」
彼の視線は、私に留まった瞳のまま、手を差し出して、了承の合図。
「どうぞ」
ほんのすこし指先が震えてて、タッチがもたつく。
文字数のわりに時間がかかったメールを送り、端末から顔を上げると、彼は両肘をテーブルについて組んだ指に唇をあて、外を見ていた。
その横顔は去年と違い随分、男の子感が抜けた感じがする。
どこが変わったんだろうとじっと探るように彼を見ていると、気付いたようにこちらに向いた。
「ん、終わった?」
「うん、お待たせ」
正面から見る翔は今まで通りの顔をしてる。なぜか、ほっとした。
「どこに泊まるの?」
ここから近いホテルの名前をあげた。
私が住んでいるのは女性限定マンションだから、翔は泊められない。
「へー、あのホテル、いいところじゃない」
彼は時計を見て、立ち上がる。
「だね。チェックインしてくる。朝陽んとこ、行きたい。いいだろ?」
「うん、管理人さんに言ってあるし」
「ちょっと、待ってて」
そう言って、ボストンバックを持ち上げ店を出て行った。
窓越しに彼が横断歩道を渡っていくのを見送る。
背も伸びたかなー、細くってひょろっとして見える。
あ、女の子が振り返ってる。正面からくる娘も顔を上げて見た!
翔が女の子にカッコよく見えてることがなんか、嬉しくなる。




