番外編~阿木 謎胡~
カツッカツ……
無機質な真っ白い廊下を高いヒールで歩く音だけが
響いていた
これはまだ阿木 謎胡が表の世界にいる時の話だ
「阿木さん!!!殺人事件が発生したようで…上から要請が…」
「………わかった」
謎胡は少しため息をつきながら立ち上がった
「科警研の阿木です……」
謎胡は現場に着くなり、黄色いテープのなかにずかずかと入っていった
そこには…綺麗に切断された死体があった
まるでパズルで遊んでいるような感じだった
「(切断して隠そうとはしていない…)」
謎胡は死体を眺めながらわくわくしていた
以前までこんな感覚を味わっただろうか…いや…初めてだった
「はははは…あはははははははは!!!!!!」
自宅に帰った後、謎胡は部屋で笑いが止まらんかった
犯人が何を考えているかわからなかった
楽しくて震える感覚が堪らなく気持ちよかった
「今日…面白いものにあったんだよ~…雲母…」
硝子ケースに手をあて謎胡は楽しそうに微笑んだ
中にはドレスを着た小さな女の子が入っていた
「どんな…犯人なんだろう…この中に入らないかしら?ふふふ…」
謎胡は立ち上がり周りを見渡した
そこには無数の硝子ケースが並んでいた
中には子供から大人、男女関係なく飾られていた
共通点は……綺麗な顔立ちということ
謎胡は死体コレクターだった
科警研という立場を利用して、謎胡にとって面白い死体、興味がある犯人を
自分で探しだし殺し…ケースに飾るのだった
ただ…一つだけ違うのは雲母という小さな女の子だった
雲母は謎胡の娘だった
若くにして生んだものの…育てられなかった…
しかし、謎胡は雲母を施設に行かせるのは嫌だった
他の人に雲母の世話なんてさせたくない…そして…謎胡は雲母を殺してしまった
ただの独占欲だけだった
それをきっかけに謎胡はコレクターになった
「…いつでも殺せるように…準備しなきゃ…その前に探さないと」
謎胡は雲母のケースをなでながら
部屋の奥で消えていった
数日間、奇妙な殺人事件は置き続けていた
事件が発生するたびに、謎胡は心躍るような気分だった
警察に気付かれないように重要な証拠を抜き取り
事件を解決させないようにした
「私が…見つけるのよ…あんな野蛮な警察なんかに…渡してなるものか…」
連日、謎胡は調べた
そしてようやく犯人にたどり着いた…
「今日…会える逢える…」
子供のように目を輝かせていた
「わぁぁぁああああ!!!!…や…め…あ゛ぁあぁぁぁああぁぁぁああ!!!!!」
その声を合図に謎胡は走り出した
自分が殺されるかもしれない…そんなことは謎胡の頭になかった
「はぁ…はぁ…やっと会えた…」
嬉しさに犯人に近づいて行った
手には毒を仕込んでいた
「…あなたはだぁれ?」
ザシュッ…グチュッ
っと生々しいを立てながら
暗がりの中声がした
子供のような…したったらずな発音で謎胡に問いかけた
「アナタに会いに来たの…私のコレクションに入ってほしいの」
「いやー…おねぇさんもわたしのじゃまをするなら…ころしてあげう…」
犯人の子は殺した男性を切断し終えると
迷うことなく謎胡のほうへ走って行った
「・・っ!!!」
謎胡は犯人の身軽さに驚いた
声からして犯人は子供…それが自分のほうへ走ってくる
謎胡は恐怖のあまり笑っていた
暗闇で犯人の顔が見えなかった
しかし、こっちに走ってくるにつれ犯人の顔が月明かりの中見えた
それは、髪の長い幼い少女だった
謎胡はそれを見た瞬間、家にある硝子ケースにいる雲母にそっくりだった
手に持っていた毒を謎胡は手から離していた
その瞬間、少女の持っていたナイフが
謎胡の目を貫いていた
謎胡は痛みに耐えながら
少女を抱きしめていた
抱きしめられた少女は困惑した様子で固まっていた
たまたま近くを通っていた男性が、目を突かれた謎胡を見て驚き声をかけようと近寄ってきた
「おい!だいじょうb…あ゛ぁあ゛ぁぁぁあああああ」
「うるさい…取り込み中…」
片腕で少女を抱きしめ、もう片腕で予備に持ってきていた毒で男性を殺した
それを見ていた少女は目を輝かせていた
「おねぇさん!!!しゅごいね!」
「そう?」
謎胡は微笑んでいた
「お名前は?」
長い髪をなでながら
愛おしそうに少女を見つめていた
「ないよ?」
少女は首をかしげていた
ホントはあるはずの名前がない…謎胡は不思議に思ったが
最愛の娘にそっくりの彼女を手放したくはなかった
「じゃー私がつけてあげる…あなたの名前は雲母よ」
「きらら?………うん!」
雲母は笑顔で返事をした
謎胡は雲母を抱き上げ目に刺さったナイフを抜き
闇に消えていった
それから謎胡は表の仕事を辞め
消息もつかめなくなった
友人からの捜索願を受け、警察が謎胡の家を尋ねると
そこには硝子ケースに飾られた死体が警察を迎え
それを見た警察は狂い自殺するもの、奇声をあげるものがいたという
ただ一つ
娘、雲母のケースはなかったらしい




