9・八方丸く収まった?!
しかし更に場をかき乱す諸悪の根源(?)が現れた
「そう! ワシが変態じゃあああ!!」
ドバァァン!!と豪快に扉が開き、現れたのは胸元をはだけさせた真っ赤なバスローブ姿のデブ親父、フシダラン子爵! 鼻息は荒く、瞳は怪しい光でギンギラギンに輝いている。
「出たーーーーーっ!!(絶叫)」
俺とタツヤは反射的にスクラムを組むように肩を寄せ合った。あまりのインパクトに、ゴーグルがまたズレかける。
フシダラン子爵は、ガングロな俺の全身を舐めるように見回すと、うっとりと頬を染めて両手を広げた。
「ふははは! 噂のガングロヤンキー冒険者やな~! もちろんユウマ君がワシの妻を…を寝取ってくれてもええんやで!? さあ! ワシに絶望と屈辱を味合わせてくれぇぇぇ!!」
「イメージプレイは他所でやれぇぇぇ!!」
俺は間髪入れずに全力で叫んだ。
なんなんだこのオッサンは!!
『寝取られの屈辱を味わいたい』という欲望がこじれすぎて、もはや恐怖すら覚えるレベルだ!!
その時、今まで黙って拳を震わせていたタツヤが、ついに限界を迎えたように一歩前に踏み出した。
「お、おのれぇ……! 拙者とセリーナたんの清らかな純愛(※ただし熟女好き)を、貴殿の不貞で不潔な変態プレイのダシにしおってからに……!!」
タツヤの全身から、大魔導士としての絶大な魔力がメラメラと溢れ出す。
あまりの激怒に、タツヤの目が血走っていた。
「そんなに!! そんなに寝取られ感が味わいたくば……!! 信用できる者を集めて、秘密のスワッピングサークルでも作っておられませい!! 目の前でご自身の奥方を他の男といちゃつかせ、閣下の寝取られ欲求を満たせばよかろうがあぁぁぁぁっ!!(怒髪天)」
「……え?」
それまで「早く妻を寝取れ~!」とウキウキしていたフシダラン子爵が、ピタリと動きを止めた。
「それ何!? 詳しく!!(ガタッ)」
フシダラン子爵の目が、まるで実験材料を見つけたマッドサイエンティストのようにギラギラと輝き出した。
「ちょっと待てタツヤぁぁぁぁっ!?!?」
俺は思わずタツヤの首を絞めかけた。
「お前何教えてんだよ!! なに異世界に『スワッピングサークル』なんて超ディープな大人の嗜みを輸出しようとしてんだよ!!」
「だって! だって拙者、セリーナたんを返してくれればこの際なんだってよかったのでござるよ!!」
タツヤは半狂乱で言い返したが、もう遅かった。
フシダラン子爵はハァハァと荒い息を吐きながら、タツヤにズリズリと詰め寄っていく。
「素晴らしい……! なんという画期的なシステムなのだ……! お互いの同意のもと、合法的に、目の前で愛する妻が他の男と……!? しかもそれを仲間内で競い合えるだと……!? 大魔導士殿、それはまことに実現可能なのか!? ワシのような貴族仲間でも作れるのか!?」
「あ、はい。お互いの合意と秘密保持の契約魔法さえ結べば、法律的にもグレーゾーンで存分に寝取り・寝取られプレイが楽しめますぞ……」
「採用!! 今すぐセリーナという娘は返却しよう!! ついでに君たちに金貨100枚と子爵家の推薦状をあげよう!! だからもっとその『さーくる』のシステムを詳しく教えてくれえぇぇぇっ!!」
「「交渉成立(大勝利)!!!」」
俺とタツヤの叫び声が、子爵邸の廊下に響き渡った。
……こうして。
フシダラン子爵はセリーナさんを即座に解放。
さらにタツヤから「健全(?)なスワッピングサークル設営マニュアル」のレクチャーを受けた子爵は、すっかりその準備に夢中になり、悪政や不当な連れ去りをキッパリとやめたのだった。
【事件解決後:街の喫茶店にて】
「ユウマ氏……本当にありがとうでござる……っ!」
喫茶店のテーブルで、タツヤは涙を流しながら、豊かな母性を漂わせる美熟女・セリーナさんと手を繋いでいた。
「よかったなタツヤ。これで晴れて二人で暮らせるな」
俺はメカニックゴーグルをくいっと直し、冷たいジュースを飲んだ。
「ええ……セリーナたんのこの包み込むような優しさ……やっぱり拙者には彼女しかいないでござる……」
「ふふっ、タツヤさんったら。助けてくださったユウマ様にも感謝しないとダメですよ?」
セリーナさんが優しく微笑む。
(よし……! これで本当に円満解決だ! タツヤの純愛も守られたし、子爵も変な方向に欲望を消化し始めたし、誰も不幸になっていない!!)
俺が「光のNTR男」としての達成感に浸っていた、
──【後世の歴史書『NTR領史・変革の系譜』より抜粋】──
かつて、フシダラン領は「悪徳貴族による暴政と経済の停滞」に喘ぐしがない一地方に過ぎなかった。
しかし、異世界より降臨した伝説の英傑――『光のガングロ・ユウマ』の介在により、その運命は劇的な変貌を遂げることとなる。
正妻ルクレチアの手で、領主邸の地下室に密かに設立されたサロン。
通称《NTR体験スワッピング・サークル》。
当初はただの奇癖を解消するための非公式な集まりに過ぎなかった。
しかし、「己の恥部や秘密を互いに曝け出し合う」という極限の心理的安全性(?)が生んだ謎の連帯感により、サロンは瞬く間に領内の真の最高幹部会議へと変貌を遂げたのである。
•経済の飛躍: 商人たちはサロンの秘密を共有することで互いに絶対に裏切らない絶対的信頼関係を構築。商取引は活性化し、物流は劇的に改善された。
•治安と防衛の強化: 騎士団長と闇ギルドのボスが同じサロンの「同志」となったことで、裏社会と表社会が奇跡の一枚岩を形成。犯罪率はゼロ近くまで低下した。
•政情の安定: 領主フシダラン子爵は自身の欲求が完璧に満たされたことで全権を妻ルクレチアに譲渡。「世界一機嫌が良い置物トップ」として領民から謎の愛され方をし始めた。
こうして誕生した通称【NTR領】は、異世界で最も治安が良く、最も経済が発展した「奇跡の都市」としてその名を轟かせることとなったのである。
一方、その頃のユウマは――
「なぁマグダレナさん……俺、ただのF級冒険者として平穏に生きたいだけなんだけど……」
ゴーグルをずらし、頭を抱えるユウマ。
その傍らには、妙に頻繁に遊びに来るようになったルクレチア夫人と、エプロン姿のマグダレナさんが仲良くお茶を淹れている。
「何を言っているのですかユウマ様? 今やあなたは、NTR領の影の最高顧問……『光のNTR聖帝』として全勢力から崇められているのですよ?」
「拙者もセリーナたんと一緒に、そのサークルの『魔法障壁セキュリティ担当』として月給金貨50枚もらうことになったでござる! ありがとうユウマ氏!」
「今回俺何もしてねえ……(ただガングロでゴーグル被ってただけ!!)」
『純愛派』の少年が目指した平和な青春は遠く及ばず――。
ガングロヤンキーの「意図しない英雄伝説」は、今日もNTR領の青空のもとで絶叫とともに続いていくのであった。




