10.「俺たちの戦いは……まだ終わってなかったみたいだ(白目)」
ゴーグルを装着し、マグダレナさんの手料理を味わっていたユウマの自宅に、激やせから少し持ち直したタツヤ(大魔導)が爆走してきた。
「ユウマ氏ぃぃぃぃぃっ! 大変でござる! 第三の転移者が現れたでござるぅぅぅ!」
「……は?」
シチュ―を吹き出しそうになるユウマ。
「第三の転移者……? え、まさか……あいつか!?」
病院の退院祝いに「マックでナゲット15個入り食おうぜ!」と約束した三人組のもう一人――黒野カイト!
「そうでござる! カイト氏でござる! あやつ、【ビーストテイマー能力】を手に入れて異世界転移していたのでござるが……今、とんでもない事態に巻き込まれているでござる!」
タツヤがもたらした情報は、極めて深刻(かつデジャブ感満載)なものだった。
わがフシダラン領(通称:NTR領)は、サロン発足による奇跡の結束と経済効果で、今や近隣領からも注目される爆発的発展を遂げていた。
だが、それを面白く思わない奴がいた。
お隣の「アクラッツ領」の領主・アクラッツ子爵である。
「アクラッツのやつ、我が領の躍進を嫉妬し、カイト氏の恋人である可愛らしい魔獣使いの少女を人質に取ったのでござる!」
「また人質かよ!! この世界の悪徳領主は人質を取らないと死ぬ病気にでもかかってんのか!?」
ユウマは思わずテーブルを叩いた。
「で、人質を取られたカイトは……」
「うむ……アクラッツ子爵の脅迫により、手塩にかけて育てた『モンスター軍団』を率いて、このフシダラン領を壊滅させるべく進軍中でござる……!」
「カイトぉぉぉぉぉっ!!」
かつての友が、悪党の手先として自分たちの街を襲いに来る。
まさに王道ファンタジーの熱い(そして悲しい)展開だ。
「よし……! カイトを正気に戻し、人質を救い出す! 今度こそ、俺たちの手でカイトを救うぞタツヤ!」
「応でござる!!」
(※なお、今回もカイトの恋人がユウマのガングロフェロモンに落ちるリスクがあるが、ユウマは全力で逃げ切るつもりである)
「な、なんだあの禍々しいオーラはァァァァッ!?」
フシダラン領(通称:NTR領)の平原。
狂乱の目をした巨大なフェンリル、空を覆い尽くすワイバーン、巨躯を誇るベヒーモス……。
カイトが涙を流しながら率いてきた、異形にして最強の「獣系モンスター軍団」が地響きを立てて迫り来る!
「NTR領の皆……すまない……! 僕は恋人を救うためなら、悪魔にだって身を売る……っ! 頼むから死んでくれえええっ!!」
悲痛な叫びを上げるカイト。
だが、ゴーグルを外した俺――光のNTR男・ユウマは、平原の真ん中で静かに仁王立ちしていた。
喉元のボタンを弾き飛ばし、小麦色の胸板を全開にする。首のシルバーチェーンがジャラジャラと甲高い音を立てた。
「カイト……お前のその悲しみ、俺が止めてやるよ。能力全開放だァァァッ!!」
『ピコン♪ パッシブスキル【ガングロヤンキーの威圧】最大展開!【オス(テイマー)を気弱と誤認識】し、配下の女性全般にNTR補正を強制適用するベー!』
ドォォォォォン!!!
俺の小麦色の肌から、世界を灼き尽くすような「圧倒的・他人の配下を奪い去る男のフェロモン」が爆発的に噴き出した!
その瞬間――奇跡(大惨事)が起きた。
『クゥ〜ン……♡』
『ギャウ~ン……♥』
「……え?」
カイトが目を見開く。
最前線を突き進んでいた巨獣メスフェンリルが、突如として俺の前でゴロンと仰向けになり、腹を見せて尻尾をぶんぶんと振り始めたのだ!
上空を旋回していたメスワイバーンたちは、頬を染めて(※ウロコが赤くなり)、うっとりとした瞳でユウマの周りをハートマークを描きながら旋回し始める。
「な、なんで!? 僕の【ビーストテイマー】の支配魔法が……一瞬ではじき飛ばされた!?」
『ピコン♪ 【メスフェンリル(夫あり)】および【メスワイバーン(つがいあり)】の完全NTRを達成したベー!』
「(注:魔物娘ではなく、ガチの怪物です)」
「うわあああ待て待て待て! 擦り寄ってくるなフェンリル! モフモフだけどデカい! 重い! 涎がすごい!!おい!おまえら!未だ正気の(?)モンスター達を押さえろ!!道を作れ!」
メス魔物たちが「気弱なテイマーより、ワイルドでガングロなこの男の方がカッコいい……♡」と一斉に寝返り、正気のオスモンスターを攻撃し始めたのだ。番だったオスモンスターは脳破壊状態に陥り呆然としているところを噛み付かれ押し倒されて制圧されていく
カイトが「そんな……僕のモンスターたちが……っ!」と狼狽える。
ユウマはその隙を突きメスモンスター達が開いた血路(血涙の路)を走り抜ける!
「隙ありぃぃぃぃぃっ!!」
レベルアップ報酬で解放されていた【強力昏睡薬物】の瓶を取り出し、全速力でカイトに肉薄!
「カイト! 悪く思うなよ! 『サーッ(迫真)』!!」
「ぶふぇっ!?」
迫真の(?)顔芸とともに、カイトの口の中に直接睡眠薬をぶち込んだ!!
「ぐはっ……な、なんだこの薬……猛烈な眠気が…………(パタリ)」
カイトはそのままガクッと意識を失い、静かに倒れ込んだ。無力化成功!!
「ふぅ……間一髪だったな」
俺は汗を拭い、ぐっすり眠るカイトを背負い直した。
「よしタツヤ! カイトの身柄は確保した! あとはアクラッツ領に乗り込んで、人質になっているカイトの恋人を救い出すだけだ!」
「応でござる!……って、ユウマ氏。ところでその……」
タツヤが引きつった顔で、俺の背後を指さす。
そこには――
完全に俺に懐いてしまい、ゴロゴロと喉を鳴らす巨大メスフェンリル、俺の肩に首を擦り付けてくるメスワイバーン、そしてうっとりした目で俺を囲む数十頭のメス魔物軍団の姿があった。
「……これ、どうするので?」
「俺が聞きたいよおおおおおおっ!!」
『ピコン♪ 【魔獣軍団の寝取り】を完了。ユウマは【魔王(メス魔物限定)】の称号を得たベー!』
「要らん称号を与えるなぁぁぁぁっ!!」
こうして、モンスター軍団を「物理的ではなくNTRで」壊滅させたユウマたちは、数十頭のメス魔物(※全員ユウマにメロメロ)を引き連れて、いざ悪徳ドS領主アクラッツ子爵の待つ館へと進軍を開始するのであった!
「ちょっ……! ワイバーン、羽を擦り寄せるな! 重い! フェンリル、服を舐めるな! 涎でビショビショになる!!」
巨大な女子魔物たち(※ガチの怪物)に全身スリスリ&もふもふされ、押し潰されかけているユウマ。
その光景を完全にスルーしながら、フシダラン領正妻・ルクレチア夫人は優雅に地図をテーブルに広げ、作戦立案を始めていた。
「――さて、ユウマさん。アクラッツ城の内部構造はすでに把握しているわ。問題は、人質であるカイトさんの恋人……『リリアさん』が捕らわれている地下最深部への潜入方法ね」
「……ふむ、アイデアはあるのか、ルクレチアさん?」
ルクレチア夫人は不敵に微笑み、指を一本立てた。
「ええ。正面突破は危険よ。そこで……城内で働いている『人妻メイド』、あるいは警備を担当している『人妻騎士』を貴方のその【NTRフェロモン】で魅了(堕と)し、協力者としてリリアさんの所まで案内させる……というのはどうかしら?」
「アイデアが鬼悪魔すぎるだろ!!」
俺はフェンリルのモフモフな毛並みから顔を弾けさせ、思わず叫んだ。
「ちょっと待てルクレチアさん! その作戦、成功率は高いかもしれないけど……その魅了した相手のアフターケアはどうすんだよ!?」
「アフターケア?」
ルクレチア夫人は不思議そうに首をかしげる。
「俺に『ワイルドなガングロ男性……♡』って落ちた人妻メイドさんや人妻騎士さんは、俺が救出作戦を終えて去った後、どんな顔して元の夫や仕事に戻ればいいんだよ! 旦那さんの顔を見るたびに『あのガングロの人の方が……』って罪悪感と情熱で頭がおかしくなっちゃうだろ!! 家庭崩壊だよ!!」
「まあ……相変わらずどこまでも誠実な『光のNTR男』様ね」
ルクレチア夫人は、むしろその反応を面白がるようにうっとりと目を細めた。
「大丈夫よ。その後のフォローなら、我がフシダラン領(通称NTR領)の《秘密のサロン》に招待して差し上げれば解決だわ。旦那様ごとサロンに巻き込んで、円満な家庭(※ただしNTRサークル加入)にして差し上げますから」
「全然解決してねぇぇぇぇぇぇっ!! むしろ感染拡大だろそれ!!」
隣でぐっすり眠っていたカイト(※睡眠薬「サーッ(迫真)」が効きすぎている)が、「う~ん……NTR…脳破壊……」と寝返りを打つ。
「カイト! お前も早く起きろ!! お前の恋人を救うために、俺が人妻騎士の家庭を壊すかどうかの瀬戸際なんだぞ!!」
「ユウマ氏……!」
大魔道士タツヤ(熟女派)が、涙目で拳を握りしめた。
「拙者、思うのでござる! 人妻騎士殿の『夫への忠誠と、ユウマ氏への抗えぬ欲望との間で葛藤する表情』……これぞNTRの醍醐味! 熟女愛好家として、ルクレチア夫人の作戦に一票投じざるを得んでござる!」
「お前は黙ってろ熟女オタクぅぅぅぅっ!!」
『ピコン♪ 【人妻騎士(夫は真面目な隊長)】および【人妻メイド(夫は執事)】のターゲット補正が有効化されたベー! 潜入準備はバッチリだベー!』
「自動でロックオンすんなベロ出しパー!!」
メスワイバーンに甘噛みされ、メスフェンリルに押し潰されながら、ユウマはアクラッツ城の前にて「誰の家庭も壊さずに潜入する方法」を必死に模索するのであった――!




