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8.ルクレチア夫人

領主フシダランを失脚させるしかない…ここで鍵になるのがフシダラン子爵のブレインである正妻ルクレチア、フシダラン領は実質彼女が動かしているという。彼女に接近し、彼女の心を“堕とす”必要があった。

ユウマは覚悟を決めてマグダレナに告げる。

「すまない、マグダレナ……領主夫人と関係を持つかもしれない」

マグダレナはちょっと赤面しながらも、むしろそんな展開にドキドキしている様子だ。

「ふふっ……なんだか私、寝取られてるみたいでワクワクしちゃうかも」

「……それ、寝取られてるっていうか、完全に『夫の浮気(仕事)を応援する妻』の顔になってるぞ……お前、ダメ男好きというより、ある種の変態になってきてないか?」

俺の呆れ顔にも、マグダレナさんはどこ吹く風。むしろ瞳をキラキラと輝かせ、うっとりと頬を手で包み込んでいる。

「だってユウマ様、考えてもみてくださいな? あのプライドが高くて高潔と噂される子爵夫人・ルクレチア様が、ユウマ様のワイルドな魅力に抗えず、身も心もドロドロに狂わされてしまうなんて……想像しただけで、なんだか私まで子宮の奥が熱くなってきますわ……♡」

「想像で勝手に発情すんな!! あと語彙が完全にアダルティなんだよ!!」

俺は両手で顔を覆った。

ダメだ……。このお姉さん、俺の【NTRチート(夜)】で完全に性癖の扉が開いてやがる。

最初は「ダメンズ依存の被害者」だったはずなのに、今や「強靭なメンタルを持つ歪んだ愛の理解者(変態)」へと順調に進化を遂げていた。

「まあ、でも……」

マグダレナさんは急に真面目な顔になり、俺の腕を優しく包み込んだ。

「ユウマ様が『友人のため』に、苦渋の決断で戦おうとしているのは分かっていますわ。……浮気は嫉妬しますけれど、ルクレチア様を救い(堕とし)落としてフシダラン子爵を失脚させるためなら、私は喜んでユウマ様を送り出します。……その代わり、帰ってきたらたっぷり私を可愛がってくださいね?」

「マグダレナさん……」

病室で孤独だった俺に、こんな(変態だが)理解あるパートナーができるなんてな。

俺はゴーグルをくいっと直し、力強く頷いた。

「あぁ、約束する。必ずタツヤのセリーナさんを取り戻して、子爵の悪政も終わらせて見せる!」



【作戦会議:ターゲット・ルクレチア夫人】

外で待機していたタツヤ(大魔道・激やせ)を部屋に招き入れ、具体的なターゲット情報を確認する。

「……で、タツヤ。その正妻ルクレチア夫人について知ってることを教えてくれ」

タツヤは深く頷き、持参した手描き(うますぎるオタク画力)の肖像画をテーブルに広げた。

「ルクレチア夫人は、冷徹無比な政治手腕でフシダラン領の経済を実質一人で回している超優秀な女性でござる。容姿端麗、眉目秀麗、氷の美女と呼ばれ、フシダラン子爵の悪行も彼女の冷徹な計算の上で容認されている……と言われているでござるが」

「が?」

「噂では……あのバカ子爵は、ルクレチア夫人の実家(名門貴族)の権力と彼女の能力をカサに着て、裏で散々散財し、愛人を囲い、彼女を『ただの便利な道具』として冷遇しているらしいのでござる」

「なるほどな……」

俺の脳裏に、NTRものの黄金パターンが浮かび上がった。

冷酷クールに見えるが実は夫に放置されている妖艶な人妻】

【実質的な権力者だが心は孤独】

【そこに現れる、夫とは正反対の野生的なオラオラ男】

『ピコン♪ 極上の【仮面夫婦・放置人妻属性】を検知!【光のNTR男】特攻対象に指定されたベー! ルクレチア夫人への攻略難易度が【中】から【チョロイン】へ引き下げられたベー!』

「チョロインとか言うなベロ出しパー!!」

思わず叫んだ俺に、タツヤとマグダレナさんがポカンとする。

「ゴホン……とにかく! ルクレチア夫人の心を『堕とす』ことができれば、子爵の経済基盤も権力も一瞬で崩壊する。セリーナさんを人質に取られている状況も、彼女の権限で無力化できるはずだ」




屋敷に忍び込んだユウマとタツヤの前に現れたのは、薄いシルクのナイトガウンを纏った正妻ルクレチアだった。

「……まぁ、こんな夜更けに男二人?しかもその格好……泥棒さん?」

 色気と気品に満ちた微笑。だがその瞳は冷静で、状況を瞬時に把握しているようだった。

「違います。貴女を奪い、領主を──失脚させに来ました!」

「あら素敵。で、私は何をすればいいの?」

「ぜひ、我らに協力を──って、あっさり!? 速い!領主夫人、判断が光速!」

「退屈だったのよ。あの人、最近じゃ“寝取られプレイが本命”ですもの」

「え、えっ!?」

「『大魔導士の女を召し上げれば、報復NTRしてくると思ったんや〜♥』って……そんな理由でセリーナさんを奪うの、どうかと思うの」

「んなあああああっ!?!?!?」

子爵邸の豪華な廊下に、俺とタツヤのハモった悲鳴が虚しく響き渡った。

「寝取られプレイが本命……だと……!?」

俺は思わず耳を疑った。

FFやDQ風のゴツいメカニックゴーグルが、驚きのあまりズリ落ちかける。


「え、ちょっと待ってくださいルクレチア夫人!? あのフシダラン子爵、セリーナさんを奪ったのは権力誇示でも女色に狂ったからでもなく……自分からNTR被害に遭いに行くための呼び水(撒き餌)だったってことですか!?」

「ええ、そうよ」

ルクレチア夫人は薄いシルクのナイトガウンの裾を優雅に揺らしながら、ため息を一つ吐いた。

ワイングラスを傾けるその姿はまさに『氷の美女』だが、喋っている内容が狂いすぎている。

「あの人、最近は普通のプレイじゃ満足できなくなったらしくてね。『大魔導士の幼馴染という特大のNTR属性を持つ女を奪えば、絶対に絶望した大魔導士が、俺の妻(=私)を寝取り返しに来るはずや~ その屈辱を想像するだけでたまらんわ~!』って……毎晩ベッドで悶々としていたわ。本当に気味が悪いったらありゃしない」

「なんだその拗らせまくった超変態貴族はぁぁぁぁぁっ!!??」

タツヤが頭を抱えてのたうち回る。


「拙者!! 拙者はただセリーナたんと純愛がしたかっただけでござるよ!? なんで拙者の幼馴染が、そのオッサンの『変態NTRプレイのダシ』に使われなきゃならんのでござるかぁぁぁ!!」

「落ち着けタツヤ! 落ち着け!!その、大魔法ぶっ放す前兆のオーラを引っ込めろ!!」

俺はパニックになるタツヤを必死で抑えつけながら、冷や汗をダラダラと流した。

(待て待て待て! 思考を整理しろユウマ!!)

俺の能力は【NTR男能力】だ。

「男から女を奪い取る」ことで真価を発揮する能力だ。

だが……相手のフシダラン子爵は、「自分の女が寝取られることを狂喜乱舞して待ち望んでいる変態」なのだ。

そんな奴に対して、俺が今まで通り「オラオラ~! お前の女は今日から俺の女だぁ~!」ってやってごらんなさいよ。

「うおおおっ! 待ってたぞガングロヤンキー! さあ俺の妻を奪って俺を絶望させてくれぇぇぇ!!(歓喜)」

ってなるに決まってるだろ!!

「逆効果じゃねえか!! 俺のNTR能力が、相手の性癖のストライクゾーンに直撃しちまう!!」

『ピコン♪ 【超高度なNTR需要】を検知!【光のNTR男】対【ガチMなNTR願望貴族】の究極の矛盾(矛盾プレイ)が発生したベー!』

「発生させんなベロ出しパー!! 誰も得しない地獄の空間ができるだろ!!」

俺が一人で頭を抱えて悶絶していると、ルクレチア夫人はくすっと妖艶に微笑み、すっと俺に近づいてきた。

彼女の指先が、俺の開いた胸元(小麦色)とシルバーチェーンにそっと触れる。

「……でも、いいわね。貴方みたいな野性味あふれる男の人。あの人の変態プレイの相手をさせられるのは真っ平御免だったけれど……貴方になら、本当に私を『寝取られて』あげてもいいかしら?」

「ひっ……!?」

ルクレチア夫人の瞳に、危険な情熱の炎が宿る。

「あのバカ夫を完璧に失脚させて、私を本当の意味でこの退屈な屋敷から連れ去ってくれるなら……私、貴方の所有物になってあげても構わなくてよ? ガングロの泥棒さん……♡」

『ピコン♪ ルクレチア夫人の【NTR落ち】フラグが完全成立! NTR男レベルの上昇準備が完了したベー!』

「待って夫人! 光速で寝取られに同意しないで!!」

俺は間一髪で後ずさりした。

「違う! 俺の目的は、変態子爵の欲望を満たすことじゃない! フシダラン子爵を『正当な社会的死』に追い込み、セリーナさんをタツヤのもとに無傷で奪還することだ!!」

「まあ、真面目なのね。……でも、だったら尚更簡単よ」

ルクレチア夫人は指をパチンと鳴らした。

「あの人の部屋の金庫に、裏金と不正取引の決定的な証拠(帳簿)が入っているわ。それを引き出してギルドと監察官に突きつければ、あの方の貴族位は剥奪、即座に奴隷鉱山行きよ。セリーナさんの身柄も解放されるわ」

「な、なんだって……!?」

「案内してあげる。……ただし」

ルクレチア夫人は俺の首のチェーンをグイッと引っ張り、耳元で甘い吐息を吹きかけた。

「事件が解決したら、私をたっぷりと『慰めて』いただくけれど……良いかしら?」

「(ひえぇぇぇぇぇ……っ! この人、子爵とは別の意味で肉食系だぁぁぁっ!!)」

「ユウマ氏……!」

タツヤが涙目で俺の手を握りしめる。

「頼む……! 拙者のセリーナたんのために、その……ルクレチア夫人の毒牙(?)にかかってくれでござる……っ!」

「お前なぁぁぁっ!! 友達を生贄に捧げるみたいな言い方すんじゃねえよ!!」

変態子爵の歪んだNTR欲望、肉食系夫人の本気のNTR狙い、そして親友の純愛(熟女派)奪還。

ぐっちゃぐちゃに絡まり合った思惑の中、ゴーグルをかけた「光のNTR男」ユウマは、冷や汗を流しながら進退窮まるのだった。


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