6.依存体質
「俺の『自立してくれ』って願いはどこへ行ったんだよおおおっ!?」
翌朝。宿屋のベッドの上で、俺は天井を見上げながら激しい自己嫌悪に陥っていた。
あんなに「純愛派」を誇っていた俺が。病室でずっと清く正しく生きてきた俺が。
押し切られたとはいえ、出会ったばかりのマグダレナさんと……シてしまった。
「うふふ……ユウマ様、お目覚めですか……?♡」
隣で幸せそうに微笑むマグダレナさん。その肌は艶やかに輝き、かつての娼婦としての陰りは微塵もない。
「こんなに……こんなに気持ちよかったの、私、生まれて初めて……っ。レイモンドとのアレは、ただの作業だったのね……っ」
(※NTRガングロ男はセックスチート持ちである)
「うっ……心が痛い……」
(複雑だ……。めちゃくちゃ喜ばれてるのは男として光栄だけど、俺の求めていた『甘酸っぱい甘々の青春』とは何だったんだ……!?)
ちなみに、金蔓のマグダレナさんを失ったクズ男レイモンドは、全財産を失ったうえにギャンブルのツケが払えず、借金取りに連行されて借金奴隷になったらしい。
まさに自業自得、めでたしめでたし……なのか?
頭を抱えている俺の脳内に、あの間抜けなベロ出しパーの声が朗らかに響き渡った。
『ピコン♪ 【完全寝取り(肉体関係)】を達成したベー! NTR男レベルがアップしたベー!』
「はあああああ!?(絶望)」
俺は跳ね起きた。
「レベルアップとか要らん!! 達成してねえよ! 俺は救済したつもりだったんだよ!! 上がるな! 能力を強化するなぁぁぁっ!!」
『レベルアップ報酬その1:【NTRフェロモン体臭】のON/OFF切り替え機能が解放されたベー』
「っっしゃあああああああ!(歓喜)」
俺は思わず宿屋のベッドの上でガッツポーズを決めた。
「神機能かよベロ出しパー!! これで! これで一日3回風呂に入らなくても、あの激臭コロンを撒き散らさなくても、普通に街を歩けるじゃねえか!! ありがてえええええっ!!」
これでクリスの義姉さんや幼馴染ちゃん、ギルマスの後妻さんを無駄にバグらせずに済む! 普通の友達として接することができるんだ!
歓喜に打ち震える俺に、ベロ出しパーは追い打ちをかけるように次の報酬を告げた。
『レベルアップ報酬その2:【強力昏睡薬物(催眠毒)】の生成スキルが解放されたベー。これでパートナーを眠らせてのイタズラも思いのままだベー!』
「睡姦とかしないから!! 物騒な薬物作らせんじゃねえよ!!」
『オタッシャデー』
「待て! OFFにさせろ!その薬物生成機能!!」
脳内アナウンスが切れ、静寂が訪れる。
「はぁ……はぁ……」
疲れ果ててベッドに倒れ込む俺。
横ではマグダレナさんが「ユウマ様、朝のご飯買ってきましょうか? それとも……私を食べますか?♡」とキャッキャしている。
【NTRフェロモンのOFF機能】という最大の武器を手に入れたユウマ。
果たして彼は、レベルアップしていく悪魔の能力に抗いながら、今度こそ平和で健全なファンタジー青春ライフを手に入れることができるのか――!?
「はぁ……フェロモン体臭がOFFにできたのは超絶デカいけど、結局『視線魅了』はOFFにできねぇんだよなぁ……」
宿の鏡の前で、俺は溜め息をついた。
いくら匂いを消したところで、相手と目が合った瞬間に相手の脳内乙女フィルターが暴走するのは相変わらずだ。
そこで俺が導入したのが、**FFやDQの冒険者がつけていそうなごついメカニックゴーグル**だった。
「よし……これで目線は完全に遮断できる。ガングロと金髪メッシュはまあ『そういうファッションの奇抜な冒険者』で押し通せるはずだ!」
完璧な対策を施した俺だったが、心の中にはズシリと重い罪悪感が残っていた。
マグダレナさんとのあの夜。
確かに彼女は喜んでくれたし、クズ男から救い出すことはできた。けど……それって本当に彼女の意志だったのか? 俺の【NTR能力】という悪魔のチートで、彼女の感情を無理やり上書きして縛り付けただけじゃないのか?
「俺と一緒にいたら、彼女は一生俺の能力の奴隷だ……。自立して、自分の人生を歩んでほしい」
俺は眠るマグダレナさんの枕元に、十分な生活費と手紙を残し、静かに宿屋を抜け出した。
それが、純愛派として俺が通すべき「筋」だと思ったからだ。
**――それから一か月後。**
ゴーグル装備のおかげで無事にF級冒険者としてコツコツ薬草採取などをこなし、街の生活にも慣れてきた頃。
ギルドで久々にルーカスとエルに出会った。
「あ、ユウマ。久し振り!ユウマ、マグダレナさんのことなんだけど……」
ルーカスがどこか気まずそうに、物憂げな表情浮かべながら切り出した。
「え? あぁ……マグダレナさんか。元気に暮らしてるか? 俺が置いていったお金で、なんとか自立して自分の店でも持ててると良いんだけど……」
俺がちょっと誇らしげに語ると、クリスは思いっきり引きつった顔で言った。
「いや……**また別のダメ男(売れないシンガーソングライター)を見つけて、娼婦に戻って全収入貢いでるぞ**」
「………………はあああっ!?????」
ギルド中に俺の絶叫が響き渡った。
「なんでだよ!!? お金置いてきただろ!? 依存先のクズ男から救い出しただろ!?」
隣でジュースを飲んでいたエルくんが、呆れたように肩をすくめる。
「言ったじゃん、彼女は『筋金入りのダメンズ好き体質』だって。ユウマが去ったあと、寂しさに耐えかねて、速攻で次の売れないシンガーソングライター(音痴吟遊詩人)みたいなゴミ男に引っかかったんだよ」
「売れないシンガーソングライターァァァっ!?」
俺は頭を抱えてテーブルに突伏した。
嘘だろ……。能力で縛る罪悪感から離れたのに、離れたら離れたで即座に次のクズの金皿になってるなんて!! あの人の「ダメンズ磁石」ぶり、呪いよりタチが悪いだろ!!
「もう嫌だ……あの人は俺が隣にいて、俺が能力(と夜のチート)で上書きし続けてあげないと、クズ男に人生絞り取られて早々に野垂れ死ぬ運命なんだ……!!」
俺はゴーグルをズリ上げ、深く深呼吸をした。
罪悪感とか言ってる場合じゃない。これはもう「介護」だ。性癖のバグったお姉さんを一生世間のクズから守るための、人道支援なんだ!!
さらに数日後。
俺は速攻でその「自称シンガーソングライターのクズ」を再NTR(物理的パンチ+オラオラオーラ)で撃退し、マグダレナさんを無事に回収した。
「ユウマ様ぁぁぁ! やっぱり私にはあなたじゃなきゃダメなんですぅぅぅ!」 泣きついて胸に飛び込んでくるマグダレナさん。
「……ハァ。分かったよ、分かったから。もう二度と俺の側を離れるな。一緒に暮らすぞ」
「はいっ……!♡」
こうして、俺はマグダレナさんと街の小さなお部屋で同居生活を始めることになった。
……まあ、朝起きれば「ユウマ様ぁ♡」と甘い匂いに包まれ、夜になればNTR男セックスチートでバチバチに愛し合う、傍から見れば羨ましすぎる新婚生活のような毎日だ。
「(まあ……悪くないか。俺も寂しかったしな……)」
ゴーグルを外し、マグダレナさんの手料理を食べながら、俺はフッと笑った。
「でね、ユウマ様! 今日の夜なんですけど、近所の奥様方に誘われて『人妻サークル』の集まりがあるんです! ユウマ様も一緒に行きませんか?」
「ぶっっっっ!?」
俺は味噌汁(異世界風)を豪快に吹き出した。
「な、なんて?? 人妻サークル……!?」
『ピコン♪ 【人妻の大群】という極上のNTR環境を検知したベー! 【視線魅了】の範囲拡大パッシブが発動準備中だベー!』
「発動すんなベロ出しパー!! 行かない! 絶対に行かないからなマグダレナさん!!」
ゴーグルをバッと装着し、絶叫するユウマ。 「光のNTR男」の平和で騒がしい異世界同居ライフは、まだまだ始まったばかりであった――。




