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2.能力(との)バトル

「あ、危なかった……マジで魂の危機(罪悪感的な意味で)を感じた……」

エリアーヌさんの「ルーカス様より、あなたの方が……」という熱視線から必死に逃げ出した俺は、ほうほうの体で街の冒険者ギルドへと駆け込んでいた。

とにかく、この世界で生きていくには金が必要だ。

まずはファンタジーの定番「冒険者ギルド」で登録して、薬草採取か何かからコツコツ始めることにしよう。

「さて、受付は……」

ギルドのドアを潜ると、周囲の冒険者たちが一斉にこちらを振り返った。

「なんだアイツ……? 金髪メッシュに小麦肌、胸元はだけさせて……」

「結構出来上がった体してやがるな……!」

(違うんだよ! これは強制装着されたパッシブスキルのせいなんだよ!)


居心地の悪さに縮こまっていると、不意に爽やかな声が響いた。

「君、冒険者登録は初めてかい? よかったら僕が案内しようか!」

振り返ると、そこには眩しいほどの笑顔を浮かべた金髪の美少年が立っていた。

白い軽装鎧装備に、腰には立派な細身の剣。育ちの良さが滲み出るような、まさに「正統派の主人公」といった佇まいだ。

「僕の名前はクリス。君は?」

「ユ、ユウマです……! 助かります、右も左もわからなくて……」

クリスは本当に親切な奴だった。

「登録料は後払いで大丈夫だよ」とか「最初は西の森の薬草採取依頼がおすすめだよ」とか、何も知らない俺に一つひとつ丁寧にアドバイスをくれる。

(よかった……! 荒くれ物ぞろいの冒険者にもまともでいい奴がいたんだ……!)

十数年の闘病生活で友情に飢えていた俺の心に、クリスの優しさが染み渡る。

俺たちはすぐに意気投合し、ギルドの案内カウンターで楽しく話し込んだ。


「へえ、ユウマは遠くの東の国から来たんだ。じゃあ、街の地理も案内してあげるよ!」

「本当か!? ありがとうクリス! お礼に今度マッ……じゃなくて、美味しい飯でも奢るよ!」

まさに青春。俺がずっと夢見ていた「友達との何気ない会話」がここにある!

そう思った、次の瞬間だった。

「――クリス? そこで何をしているの?」

凛とした鈴の音のような声が響いた

「あ、義姉さん! それにリア! こっちは新しく登録しに来たユウマくんだよ。すごく気さくで――」

クリスの後ろから歩み出てきたのは、二人の少女だった。

一人は、クリスと同じ金髪で軽装鎧姿の麗しい少女。クリスの義理の姉で、才気溢れる剣士だという。

もう一人は、小柄で可愛い幼馴染の魔導士少女。クリスの隣が定位置といった様子で、腕にそっと寄り添っている。紹介されたユウマが挨拶しようとした、その時。


『ピコン♪ パッシブスキル【NTRガングロ男能力】が周囲の【リア充空間】を検知。自動魅了開始するベー』

(やめろ!! 余計なことをするな!!)

ジャラ……ッと首のシルバーチェーンが鳴り、俺の小麦色の肌から悪魔的な「男の色気(ヤンキー風味)」が溢れ出す。

頼むから発動しないでくれと願う俺の意思とは裏腹に、能力は無情にも二人を捉えた。

「っ……!?」

クリスの義姉と幼馴染のリアちゃんの顔色が、一瞬で変わった。

義姉は、手に持っていた魔導書を落としそうになりながら、真っ赤になった顔で俺の胸元をじっと見つめている。

「な、なに……あの男性は……? クリスのような青臭い男の子とは違う……本物の『男』の匂いがする……っ」

幼馴染のリアちゃんに至っては、ぎゅっと抱きしめていたクリスの腕をポイッと放し、うっとりとした潤んだ瞳で俺を見上げていた。

「どうしたのかしら…、私……なんだか胸の奥が熱くなって……あのガングロの人から目が離せないの……」

『ピコン♪ 【義姉属性】および【幼馴染属性】のダブルNTRフラグを検出。好感度補正+150%だベー』

「義姉さん? リア? どうしたの二人とも……?」

状況が呑み込めず、首をかしげる無垢なイケメン・クリス。

(あ、アカン!!!!)

このままここにいたら、親切にしてくれたクリスの人生が俺の存在のせいで崩壊する!!

義姉も幼馴染も、完全に「寝取られモード」の目になっている!!

「う、うわああああああああっ!!」

「えっ!? ユウマく……」

「ごめんクリス!! 用事を思い出した!! アディオス!!」


俺はクリスの言葉を遮り、ギルドのドアを叩き破らんばかりの勢いで外へ飛び出した。

「待って、素敵なお方……っ!」

「行かないで……今、自己紹介を……!」

後ろから追いかけてくる義姉と幼馴染の悲痛な叫び声が聞こえたが、俺は振り返らず、ガングロの足をフル回転させて街の路地裏へと疾走した。

「ハァ……ハァ……っ! なんだよこの世界!!」

路地裏の壁に背中を預け、俺は天を仰いだ。

「親切なイケメンの幼馴染と義姉まで寝取ろうとしてくるのかよ!! 俺はただ! 普通に! 友達と冒険者として汗を流したいだけなんだよ!!」

ガングロ金髪メッシュの胸元から覗く自分の素肌を見つめながら、ユウマは深い絶望とともに誓うのだった。

「絶対に……絶対に誰も寝取らない……! たとえ世界中の恋人持ちヒロインが俺に落ちようとも(?)俺は全力で逃げ切ってみせる……っ!!」


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