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1.貰ったチートは『NTRガングロ男能力』

~~昨今のNTRものの氾濫には目を覆うものがありますね(苦手ジャンルなので)あと、「アダルト系のNTRものってやたらガングロヤンキーが出てくるよなあ。」と、思い、「種付けおじさんの派生バージョン」ってことで、こんな話を考えてみました。~~

「……風、気持ちいいな」

午後四時、春の風が病院の屋上を吹き抜ける。

白い制服の少年――ユウマは車椅子に座りながら、そっと目を閉じていた。

入院生活は、気づけば十数年。小学校にも中学校にもまともに通えず、友達と呼べる人間もいなかった。

起きて、寝て、また薬を飲んで……。

それが俺の、全てだった。

けれど、奇跡は確かにあった。

「君の病状、寛解してる。退院して、外に出ていいんだよ」

医者がそう告げた日のことは、夢のように覚えている。

ずっと歩きたかった道を、自分の足で歩ける。

制服だって着られる。

コンビニに行ける。スマホを持てる。友達を作れる――

定時制高校に入学、タツヤにカイトという友達もできた。

……いよいよ、俺の「人生」が始まる。

そう思っていた。

「ユウマくん? ……ちょっと、こっち来てくれる?」

廊下で声をかけてきたのは、どこか影のある美人教師。

黒髪ロング、色白で目が大きく、まるでアニメキャラのような顔立ちだ。

入学式も過ぎたというのに場違いなほど艶めかしい和装をしていた。

戸惑いながらも、ついていくユウマ。

職員室かと思った先にあったのは――

「……どこだよ、ここ……っ?」

目の前に広がっていたのは、真っ白な空間だった。

そして目の前にいたのは異様な存在だった。

形はぱっと開いた手の平そのもの。手の平の上の方に付いた二つの目は見るからにバカそうな目つき。手の平の下の方にわ大きな口がありそこからは赤い舌がベロリと出ていた。

「ミーは“ワールドデベロッパー”だべー」

「“デベロッパー”ってベロ出したパーのことじゃねえよ!」

「キミはこれから異世界転移してもらうベー。能力付与はランダムで、ん~~~~“NTRガングロ男能力”だべー」

それではオタッシャデー」

「オタッシャデー」という間の抜けた声とともに、足元の白い床が底抜けした。


「うわああああああああっ!?」


浮遊感。いや、落下感だ。

眩い光が視界を埋め尽くし、風を切る音が耳を裂く。

そして――ドシャッ!!

「ぶべっ!?」

顔面から地面に激突した。

痛たた……と顔を上げると、鼻孔をくすぐったのは土と草の匂い。

病院の消毒液の匂いでも、東京の排気ガスの匂いでもない。

見上げれば、見たこともない二つの月が浮かぶ紫色の夜空。

「ほんとに……異世界かよ……」

俺は生唾を飲み込んだ。

十数年の闘病生活を経て、ようやく手に入れた普通の高校生活。タツヤとカイトと放課後にマックに行く約束すらしていたのに、なんで俺がこんな目に。

しかも――『NTR男能力』だと?

冗談じゃない。俺は病室で読んだ漫画でも、寝取り系なんて腹が裏返るほど嫌いだったんだ。

胸を張って言える。俺は純愛派だ!甘酸っぱい青春がしたいんだよ!

「とにかく、自分の姿を確認しないと……」

近くにあった小川へ駆け寄り、水面を覗き込む。

「……え?」

そこに映っていたのは、黒髪で少し痩せ型の、いつもの自分……ではなかった。

水面に映る俺の髪は、なぜか根元を残して眩しいメッシュ金髪に染まっている。

服装は上半身裸で、肌はまるでグアムの日差しに一週間晒されたかのような見事な小麦色ガングロ

体は不自然なまでに筋肉質なのに妙に体毛が薄くツルツル。

首元にはゴツいシルバーチェーンが巻きつき、腕にはトライバルタトゥー。

「な……なんじゃこの姿はぁぁぁぁぁっ!?」

絶叫した瞬間、頭の中に機械的なアナウンス(あのベロ出しパーの声)が直接響いた。

『能力発動:パッシブスキル【NTRガングロ男能力】が有効化されたベー。相手の男が気弱であればあるほど、そのパートナーからの好感度上昇補正が跳ね上がるベー』

「いらん!その補正まったく要らん!!」

『さらにアクティブスキル【チョロすぎ草】、【俺の女になれよ】、【淫乱ギャル(B I M B O)化】が使用可能だべー。オタッシャデー』

「物騒なスキル名を揃えてんじゃねえよ!誰が使うかそんなもん!」


頭を抱えて川べりで悶絶していると、草むらの奥からガサガサと音が聞こえた。

「頼む……誰か助けてくれ……!」

「嫌……来ないで!ルーカス様を傷つけないで!」

(え……悲鳴!?)

俺は反射的に走り出していた。病弱だった頃には考えられない脚力で、草むらをかき分ける。

開けた広場に出ると、そこには異世界お約束の光景があった。

ボロボロの鎧を着た、いかにも「気弱そうだが心優しそうな前髪長めの少年剣士」。

そして彼を庇うように立つ、清楚で可憐な僧侶風の美少女。

二人を囲んでいるのは、棍棒や石斧を持った三匹のゴブリンだ。

ルーカスと呼ばれた少年は、震える手で剣を構えている。

「僕が……僕が君を守るから!」

「ルーカス……!」

(うわあ、めちゃ腰引けて膝とかガクガクしてるし……!あからさまに『守りきれずに絶望するタイプの主人公』だこれ!)

ゴブリンの手が美少女へ伸びようとしたその時、俺の体が勝手に動いた。

「おい、そこまでだチビども!」

叫びながら飛び出す俺。

しかし、俺の手には剣も魔法の杖もない。丸腰だ。

どうする!?どうやって戦う!?

『戦闘状態を検知。【DQN男の威圧】を自動放出するベー』

「え」

俺が前の出た瞬間、ドォン!と重圧なオーラが周囲に吹き荒れた。

首のシルバーアクセサリーがジャラリと音を立て、俺の口が勝手に歪んで凶悪なスマイルを作る。

「おいおい、俺の目の前でシケた真似してんじゃねえよ、ザコ共がぁ……?」

(ちょっと待って!?俺の口!?俺こんなオラオラした喋り方しない!!)

ゴブリンたちがピクッと動きを止めた。

俺から溢れ出る「喧嘩自慢なDQN男のオーラ」に、ゴブリンは本能的な恐怖を感じたらしい。

「ギ、ギィッ……!?」

ゴブリンたちは武器を放り投げ、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。


「た、助かった……?」

少年剣士・ルーカスがへたり込む。

俺は安堵の息をつき、金髪を掻き揚げながら(勝手に手が動いた)、彼に手を差し伸べた。

「怪我はねえか、ボウズ。無茶しやがって……って、あ、ごめん、大丈夫かい?」

「あ、ありがとうございます……!すごいです、気合だけであのゴブリンを追い払うなんて……!」

ルーカスは目を輝かせて俺の手を握った。よし、男同士の友情成立だ!

これでいい。俺は誰も寝取らない。困っている奴を助けるヒーローになるんだ!

「あの……」

透き通るような声に振り返ると、僧侶風の美少女が頬を赤らめてこちらを見つめていた。

彼女は震える手で自分の胸元をギュッと握りしめ、潤んだ瞳で俺(の開いた胸元と小麦色の肌)をじっと見つめている。

「凄まじいお強さ……それに、なんて雄々しいお方……。ルーカスのような頼りない男とはまるで違う……胸が、ドキドキして……っ」

「……はい?」

『ピコン♪【NTRガングロ男】効果発動。僧侶・エリアーヌの感情が【畏怖】から【魅了】に上書きされました。NTRルート解放まであと80%だベー』

「待て待て待て!!ちょっと待ちなさい僧侶さん!?」

俺は全力で後ずさりした。

「違う!違うんだ!ルーカス君は君を守ろうと必死だったんだよ!?恐怖に震えながらも剣を構えた彼の勇気を見てあげて!?俺はただ横からおいしいところを拐っていった嫌な奴だから!マジで!」

「ふふ……謙虚なお方。私……強い男性に守って貰ったの、初めてです……」

「話を聞けぇぇぇぇぇっ!!」

ルーカスを見ると、彼は彼で「やっぱり僕じゃダメなんだ……あんな格好いい男の人には勝てないよ……」と隅っこで失意体前屈(orzポーズ)で絶望し始めている。


ダメだ。この世界、俺の意図とは裏腹に全員がNTRの文脈に沿って動こうとしてやがる!

「俺は……俺は絶対、誰も寝取りたくないんだぁーーーーッ!!」

異世界の夜空に向かって、ガングロ金髪メッシュの俺の悲痛な叫びが虚しく響き渡ったのだった。


明日から朝1回の更新します

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