93.戦利品
和平の継続が決まり降臨した後に帰還する使徒と共にヤヨイ様も現世から神域へと旅立っていった、会議の結果和平の状況も改善し余裕も生まれるだろう、ようやく安心してカインの産み直しができる、後継者としてヒルダがいれば最高だったが、思わぬ形で世界樹に奪われてしまった、関係は良好であるが面白く無い
そんな時にヒルダがダークエルフ森を訪れた、ダークエルフの身体を使っている様だが世界樹や共にいる聖女ユリアの影響だろうか髪色は銀髪のままだが少し肌の色が薄くなり暗黒神の影響も完全に消えていた
「カミラ様ご無沙汰しております、贈り物をしたくて参上いたしました」
ヒルダが言う少し他人行儀な挨拶だ
「手切れの挨拶じゃないでしょうね?もう私の後継者ではないのね?」
悲しみと嫌味が混じった言葉を返した
「そうなってしまうかもしれませんね、だから後継者を贈ろうと思いまして、そろそろカインを産み直すのでしょう?、私が父親になりましょう」
とんでもない事を言い出した、驚いたが悪い話ではない
「ヒルダいいえ千尋と呼ぶべきかしら、貴女との出会いを思い出すわ、あの時は碌に魔力も無い哀れな人形だったのに、そんな生意気な口をきく様になったのね」
「私を抱く資格が有るか見せてちょうだい、千尋が勝てば好きにしていいわ、でもね私が勝てばあなたは私の娘のヒルダに戻って頂戴」
「良いですよ、妙な形ですがリベンジマッチですね、カミラ様を私の物に出来るとは思いませんでした、楽しみです」
「世界樹の力を得てもう勝った気なのですね、本気で行きますよ、私の可愛いヒルダ」
逃がさない、一人でこの森に来たのが間違いだ、ヒルダは私の元に戻ってくる運命なのだ
「我がスキル『次元牢獄』よ咎人を牢に繋げ!咎人の名は「ヒルデガルト チヒロ シュヴァルツヴァルト」!」
私が名付けた娘の名前だ、真名も当然知っている勝利を確信してスキルを発動させた
ヒルダがアイテムボックスから短剣を取り出し接近する前にスキル発動のための詠唱が終わった、銃弾に麻痺毒でも仕込んで打てば良かったのだ、私の身体に大きな付ける傷を付けたくないのだろうか、勝利の喜びと共にその喜びも噛みしめようとした時に短剣の刃が私の喉の前に突きつけられ微かな傷をつけた、手足が痺れ魔力が上手く練り上げられない
「カミラ様、千秋様にも破られているでしょう、その場に私もいたのですよ対策をしない訳が無いでしょう」
ヒルダが私の身体を支えながら耳元でささやく、妖精の道が開かれていく中私は意識を失った、気が付いた時私は寝台に寝かせれており石づくりの天井が見える、そこにはいつも私が見ていたヒルダがいた
「ダークエルフの森で私に勝ったのは誰なの?」
偽物だったのだろうか?多少の違和感は有ったが魔力や話し方の癖はヒルダだった確信がもてないままヒルダに聞いた
「マチルダの身体を使って自分を産んだのよ、本当はもっと幼いし性別も違うけど薬で何とでもなるの、あえて世界樹の影響を反映した様に調整したのよ、カミラ」
「私の孫の姿を見せては貰えないのかしら、親不孝な娘だこと?」
「今からつくるのよ、カミラの手で抱いてあげて」
ヒルダがポーションを飲み身体が男に変わる
「ねえ、千尋生まれる子供の性別は選べるの?」
「可能よカミラ、安心してちゃんと男の子を産めるわよ」
「千尋、お願い女の子にして、優秀な娘が欲しいの名前も決めたわ「ヒルデガルト」よカインは夫と産み直すわ」
私の執着なのだろう、ヒルダを失いたくない
「私も名前を送るわ、カミラには教えない、成人したら私の娘に伝えるわ」
それが千尋の答えだった
強く賢い娘が産まれるだろう、いつまでも共に歩む運命と信じていたもう千尋は私のモノでは無いのだ、今から授かる娘も私を超える時が来るだろう、これが最初で最後のむつみになるのだろうかそんなのは嫌だ
「千尋、貴女を誰にも渡したくないの、せめて手足の麻痺を解除して頂戴、魔法やスキルに対しての妨害はそのままで良いから」
私の願いが聞き入れられ手足の痺れは消えた
女として千尋を縛り付けようと出来るだけの事をした、そして長くて短い夜は終わった、これは夫に対する浮気になるのだろうか、夫にもダークエルフの人口を増やすために他の女を抱かせている、それなのに罪悪感を抱いている自分に驚いた、千尋の背中に爪で付けた傷の様に千尋の心にも傷跡を残せたのだろうか?
朝になり私の森まで送られた、千尋が帰るまで背中の傷は癒されずそのままだった、それでもこの後癒されて消えてしまうと思うと悲しい、私の心に残った傷や渇きは癒されるのだろうか?
この後身体を清めた後に久々に夫を獣の様に犯した今度はヒルダとカインは双子として産まれてくるだろう、後継者として相応しいのはどちらだろうか?
何か嫌な予感がする、女の勘だ、千尋様に何か良くない事でもと心配したが異常は無い、ヤヨイ様が使徒に昇られるのに伴いクロエに聖女の役目を正式に引き継いだ、私は司祭として「法王国」に籍を残したまま千尋様に仕える事が認められた
ヤヨイ様とカオリ様のおかげだがこれを良く思わない者が居るのかも知れない気を付けよう、アンジュが鍛えたアルラウネがこの森に移籍して活躍してくれている、カオリ様の血のお陰で真面目で明るい性格だが身に付けている能力が恐ろしい
私の血で育てたらどの様なアルラウネが産まれるのだろうか?千尋様の血と混ぜても良いだろう産まれてくる私達の娘に仕えてくれるだろう
自分の行いに罪悪感を感じながら未練を立ち切るためにカミラ様を抱いた、ドライアード達はこの事を知っているがユリアを抱いた時にこの事を認めさせユリアを含め誰にも秘密を明かさないと誓わせている、ユリアがこの事を知れば悲しませる事になるだろう
私のエゴで保身のための嘘だ、裏切りに他ならない、それでもカミラ様をこのまま捨てる事は出来なかった、もっと重要な局面でどちらかを選ぶ決断を迫られたら、取り返しのつかない間違いを起こしかねない最小限の傷で済ませたい、これは言い訳だもっといい方法が有ったのかもしれない
平行思考を切り離し其々の道を歩むことも出来たがドライアード達を説得するための取引のカードとして選択肢から外した、他に良い方法は思いつかなかった、ユリアを傷つける事になるが正直に話すのであれば早い方がいいこの秘密は致命的な弱点となり得る
悩んだ末にユリアに全てを話して謝罪した、ユリアは1人の女性として泣いて怒り、母親としてお腹にいる子供のために心を落ち着かせ、最後に聖女として私の罪を赦してくれた
「私も自分を殺したヒルダ様とカミラ様から千尋様を奪ったのです、これは私の戦果であると共に私の罪です、正直に話してくれてありがとう、カミラ様を抱く前に相談されたら私はどうして良いか分からなかったでしょう」
私の罪を赦した後にユリアからの懺悔を聞いた、話してよかった私もユリアの罪を赦した、こうして私はヒルダの名を捨てた、ダークエルフの身体は私の切り札だ使う機会は来ない方が良いが常に磨いておこう
「ヒルダ様の身体もこれからは私だけのモノです、今度は私が男役ですからね」
この後、娘を産んだユリアから怖ろしい宣告を受けた、私に拒否する権利は無かった、捨てたはずのヒルダの名と切り札の身体はユリアの戦利品になってしまった




