92.アルラウネ
アンジュ様の朝は早い、そもそもいつ寝ているのだろうか、我々アルラウネは植物のモンスターに分類される、妖精種のため睡眠は必須ではない、活動している部分と休息している部分を使い分ければ朝昼なく活動を継続出来る様に進化する、ただし人間などの血で育つために血を与えた者の特性を受け継いでいる、そのため睡眠をとる者も多い
私もそうだ迷宮内は外と同じ様に朝と昼が変化していく夜間に花を咲かせる植物も存在するがアルラウネは一部の例外を除いて基本的に光の下で活動する、あまり直射日光を好まない株や木漏れ日が好きな株など個人差はあるが夜は活動しない者が多い
そんな中でもアンジュ様は常に活動されている、私達に日々達成すべき作業を掲示して目標を与える、それぞれが自分の能力を発揮すれば各自が休息を適切に取った上で8時間以内に作業が終了する内容だ、みんなの進捗を把握してフォローして下さる
怒られる事も少ないがミスや異常を隠そうとすると酷い目にあう、最近は罰として花瓶に刺激物を溶かした液体に満たして漬けられることになる、その刺激で頭が冴え疲労が回復するのだが味が良くないため自分からそれを望むものはいない
アンジュ様は独断専行を責められカオリ様に聖水に漬け込まれたらしい、アンジュ様に仕えるダークエルフから聞いた、今では気合を入れる為と余分な毒を抜くために食前に自分で聖水に使っては土に潜る事を繰り返している「ととのう」らしい
休憩のため皆が好む養分を溶かした花瓶や壺が用意された、こちらは皆に好評だ、土で汚れるのを嫌い自分用の花瓶を用意するものも出てきた溶かす養分にも凝っている様だ、私は自分の潜る土に工夫をしている花瓶では安心して眠れない一晩かけてじっくり食事を楽しみたい
「アンジュ様、様最近御髪の花の色が濃くなって艶が良くなっていますね?」
「そうでち、聖水を入れた花瓶とと毒素を補充した土の中を交互に味わうと気持ちも毒素も引き締まって最高でち」
私が花の色艶を褒めると、嬉しそうに返事が返ってきた
弥生様が現世に残っていれば報告案件だが今はその義務はない、カオリ様に報告するべきだろうか、密告したことがアンジュ様にバレるとヒルダ様の森に飛ばされることになる向こうの環境はどうなのだろうか?卯月様の所よりは良いだろうが環境の変化が悪影響を起こし花の発色が悪くなるかもかもしれない
アンジュ様の発案で一月毎に半数ずつ勤務地が入れ替えになる「参勤交代」と言うらしい「怠惰」の悪影響を防ぐためだと言う、株によって相性が有るのだろうあっちの方が楽で楽しいと言うものもいるが私にはあっちの水は合わない
卯月様の朝は遅い、そもそもいつ起きているか分からない、迷宮内の花畑を定期的に植木鉢が移動して養分の多い場所に移動するその植木鉢は粘土製のゴーレムだ、特に何か判断を仰ぐこと必要は無いし、そもそも具体的な指示を出す事もまれだ
私達アンジュ様に鍛えられたアルラウネ以外は楽しそうに黙々と的確に仕事をこなしているが時々動かなくなる、するとゴーレムが回収して休息用の繭に入れられて3時間ほどした後に元気になって仕事に復帰するのだ、ああはなりたくないゴーレムで大抵の仕事を出来るのだがそれでは不測の事態に対応できない
非常時の対応が出来るように私たちが様々な提案を行い改善していく、人員の補充は無意味だ生きているゾンビを増やすだけだゴーレムと対して変わりはないその内、私達に任せると言ったきり完全に何の指示も出さなくなった、そこでまず手を付けたのは生きたゾンビの社会復帰だ
シフトを組み定期的に休息を取らせる、次第に自我を取り戻していき仕事の効率も以前と変わらないレベルを維持している、たまに休息から抜け出して仕事をしようとする、末期状態の病気だ、治療しなければいけない、休息用の繭は卯月様の魔力を大量に消費し洗脳が深くなっていく、何より魔力が消費されたために迷宮の拡張やメンテナンス・ゴーレムの創造に遅延が発生してしまう
私達の仕事は迷宮内の業務管理に変わっていった、卯月様という原子炉を管理して最適なエネルギー効率を維持していく、放射能漏れ等絶対に許されないのだ、洗脳の被害者を増やす訳にはいかない、この世界がディストピアになってしまう、我々組合が安全安心な労働環境を守り労働に見合った賃金を分配する、卯月様は金銭的な欲が無いため収入の多くを賃金に充てられるのだ
卯月様の魔力を魔石に充填して出荷し、魔力の空になった魔石を回収して再利用する、日常生活を助ける魔道具は少しづつ流通している「魔導国」のキュヒラー家が製造しているのだ、本人の魔力の少ない金持ち達が我々の魔石を購入してくれる、魔法使いを召し抱えて魔力の補充をさせるよりは安上がりなのだ
卯月様が魔道具に興味を持たれて分解して解析したあと我々組合員が規格を統一したバッテリーとなる魔石を作り上げた、卯月様はお湯を沸かす魔道具を魔改造して水蒸気爆発を利用した爆弾を作成したりして遊んでいる、私達が卯月様の起きている姿を見る稀な機会だ
この費用が卯月様への報酬だ少なくは無いが現時点では気にする様な浪費では無い、ただしこの先増加していくと予想される、この出費を投資として回収出来ないだろうか?
卯月様が迷宮に専用の実験場を用意してゴーレムを使って魔改造を繰り返す様になった、新製品が出る度に危険な玩具が誕生するの、もう少し有用な魔道具を発明しては貰えないだろうか、いや違うそれを有用な物に落とし込むのが私達の仕事だ卯月様への報酬は研究開発費と考えれば良いだろう




