91.サウナ
今もアンジュの管理する森で暮らしている、カトレア様や弥生様に仕える事を選び新しい自分の居場所を見つけた者もいるが自分を含め10人が残っている、アンジュの力に可能性を感じこの森を自分の居場所と選択した者もいる
将来アンジュが力を付けていけば魔王に手が届くと思っている様だ、私の目から見ても力だけで見れば十分に可能性は有る、「蟲毒壺」のスキルも有る、スキル頼りでは無く自身の技術で毒を調合できるしダークエルフである我々にもその技術を伝授してくれる
数の少ない女の2人は熱心にアンジュの世話をするようになった、旅の中子供を産む事も出来ず男が多いため相手を見つけるのは簡単だがその余裕のためか未だに相手を決めないままアンジュを娘の様に可愛がっている、アンジュ自身もそれを認めて魔王への花の納品にも同行する様になった
ある日の納品から帰るなりアンジュが森の奥の迷宮に駆け込んでいった、同行した2人も何か落ち着かない、しばらくすると満足したようにアンジュが迷宮から森に戻って来た
「今日の食事は格別であった、聖水に漬け込まれたがそのおかげで今までに感じた事のない甘露な味であった、わらわの「蟲毒壺」に聖水がわらわに対する毒として記録も出来た、余分な弱い毒素が浄化されたおかげであろう、より濃縮された状態で毒を蓄積できそうだ、新たな発見じゃ」
いつもの舌足らずな言葉はなく一人称も「あたち」から「わらわ」に代わっていた
「アンジュ様、ご機嫌ですな、魔王城で何か在りましたかな?」
儂もいつもの「アンジュや」では無く「アンジュ様」と様付けで問いかけた
「そうなのじゃ、ゲオルグ師、わらわの独断専行を香織様に咎められ、聖水を入れた花瓶に漬け込ま
・・・れたでち」
最後に言葉の変化に気付いて語尾だけいつもの口調に戻して答えた
「師匠、今の事は忘れるでち、いいでち?」
「儂も年をとって物忘れがひどくなっておりましての、今日何か変な事でもありましたかの?」
儂も合わせて好々爺の様な口調で返した
「アデルおねえちゃん、クレールおねえちゃんも、なにも見てないし、なにも聞いていないでち、いいでちね」
いつもそばで仕えている2人にも圧をかけた、いつもより魔力が高い、それでは逆効果だろう
「アンジュ様、先程のままで宜しいのでは?魔王城を出た時にはお姿もダークエルフで10歳程度の姿をされておりました、ゆくゆくはアンジュ様が魔王になられるべきです」
アデルが皆が思っていても、今まで誰も直接言った言葉が無い事を言ってしまった
「いいでちか、魔王になるのはカオリママなのでち、私はしてんのうとちてお仕えすのでち、もういちどいうでち、なにも見てないし、なにも聞いていないでち、あたちの身体もこのままだったでち」
ため息が出そうになるのを我慢しながら聞いていた
勇者カオリが魔王になるための欲が野心が足りないと残念がるアンジュも魔王になるために必要な物が足りない、それでも今回の聖水とその後の食事で本人がいった様に毒素が濃縮されているのだろう頭に咲く花の色も深くなりわずかに黒く変化している深紅の花が漆黒に変化した時にはどの様な変化が訪れるだろうか?カオリ様のご子息の成長も楽しみだがアンジュの成長にも期待が膨らむ
迷宮に戻って来たアンジュ様が食事をされている、いつもと違いバジリスクを生き埋めにしての食事だ、普段はカオリ様の農場で育った豚を生き埋めにしているのだが魔王城で何かあったのだろうか?いつもの食後の日光浴は無く夜に満月の月光を浴びておられた月光浴とでもいえば良いだろうか
その日弥生様からアンジュ様にいつもと違う事があれば報告する様に指示が届いている、私達弥生様の弟子の血で育ったアルラウネが集まり今後の方針を決めるために会議をおこなった、クロエ様の血を頂いた私が会議の議長を務める、その会議の結果正直に変化を弥生様に報告する事に決まった
ルイーズとオスカー姉弟の血で育った2人がアンジュ様に現状を報告してはどうかと主張する、血を提供た2人が弥生様に絶対の忠誠を捧げる様に、アンジュ様に忠誠を誓っている、確かに弥生様からこの事を秘密にするようには指示されていない
だが、常識的に考えれば我々に対する弥生様の指示はアンジュ様の行動を見張り、ありのままを報告する事を望まれておられる、アンジュ様が自身を監視されていると知ってしまえば行動が変わるだろう、しっかり議論を重ね意思統一が必要だ
アンジュ様が月光浴をしている間にじっくり話し合いアンジュ様には知らせる事無くありのままを報告する事で我々の意見が一致した、アンジュ様の使役する蟻が会議の内容を聞いている事に気付かないままに
その後はアンジュ様の行動に異常は見受けられなかった、変化と言えば食事の前に花瓶に聖水を満たし行水をされる
「あっ、あっ、きくでち、聖水が余分なものを排出してくれるのが感じれられるでち」
と愉悦を漏らしながら10分花瓶に浸かっては土に潜って食事をしながら「ととのうでち」と気持ちよさそうにしてまた花瓶につかる、10分毎の聖水浴と食事を三回繰り返して食事が終わり日光浴をする様に変わった
一応弥生様に報告した「まるでサウナねw」と感想を聞いたがそれ以上の指示は無く弥生様は使徒として現世から旅だって行かれた




