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87.卯月

働いたら負け

弥生様から教えて頂いた、いや違う私に錬金術を指導していた時に吐き捨てたられた言葉だ


「働いたら負けとか思っているんでしょうね!」

私がゴーレム以外の魔法を熱心に学習せず、自分の手で仕事をしないために言われた


今では私の座右の銘となっている「怠惰」と言うスキルは部下や私の好意を持つものそして周囲にいる者を私のために献身的に働かせることが出来る、そしてその内洗脳して私に依存する様になるのだ、そんな私の手足にはバフが掛る、ただその反動なのだろう私の好きでは無い行為にはとんでもないデバフが掛るのだ


そう、まさしく「働いたら負け」なのだ、その点ゴーレムは素晴らしい私の求めた機能を持ち余計な事はしない、アンジュみたいに支配から逃れ独立することも無い、私の好きな技術であり好きな魔法だ、私の苦手な事はそれを得意とするものがやれば良いのだ、適材適所と言うやつだ分業制が生産性を向上するのだ、私は自分の好きな事だけをして生きていくのだ


そんな私の生活に大きな変化がやってくる、私の師であり血を与えてくれた弥生様が使徒となり現世を離れる、それからは従魔契約でバフをかけてくれている香織様が主人となる今まではただ恩恵を与えてくれるアイテムでしかなかった、弥生様は私の特性を理解してくれて良好な関係を維持できたのだが、嫌な予感がする


アンジュに血を授けた勇者だ一度だけ従魔契約を結ぶときに出会ったきりだが、真面目で努力を努力と思いもしないで当たり前だと思っているのだ、正直相性は最悪だ自分の出来る事は他人も出来ると思っている危険人物だ、パワハラ上司・モラハラ上司など私には必要ない何とかしなければいけない


有り難い事に弥生様が部下となるアルラウネ達を用意してくれた彼女達は優秀だアンジュが育てたからだろう私のスキルに一定の免疫は持っているが元々真面目で自主的に働いてくれる、「勤勉」という忌々しいスキルも私の役に立つことが有るのだと驚かされた


そう言えば香織様にもう一度対面している事を思い出した、部下を育てた肥料達を可愛がってやった時に立ち会っていた筈だその時に与えた印象を有効利用しよう、普段の寝心地の良いクレイゴーレムの植木鉢から弥生様に近い姿のミスリルゴーレムに乗り換えて挨拶に行こう、私の自慢のゴーレムで人間と区別がつかない出来上がりだ


気が向かないがこちらから出向いて行く事に意味がある、部下に体育会系の好きそうな手土産を準備させ最適な挨拶を調べさせゴーレムの中にカンペを仕込んだ、迷宮で集めた蜂蜜と同じく迷宮で収穫したレモンを部下が用意してくれた一部はスライスして蜂蜜に付け込んでくれている


「香織様お疲れ様でした、貴女の忠実な従魔卯月が挨拶致します、弥生様が使徒として現世を離れた後は香織様からご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」

丁度会議が終了して「反省会」が終わったタイミングだった、会議のためだろう普段は覗き放題なのだが情報が把握出来ていないのが不安だったが挨拶はともかく手土産が喜ばれた


「弥生様から話は聞いているわ、貴女個人では無くチーム全体で評価する様にと、貴女個人だけをみるとアレルギーを起こしかねないと言われていたけど心配なさそうね、迷宮の管理をお願いね」

流石弥生様、私の性質を良く解かってくれている


香織様とアンジュとの関係も考慮するとラインを越えなければ自由にして大丈夫の様だ、部下たちが上手くやってくれるだろう一安心だ、ゴーレムの技術も弥生様から免許皆伝と言われたしばらく何もしなくても大丈夫だろう、引き続き引きこもり生活を満喫できる





カーリア様とセーラ様から散々絞られようやく解放された、まるで取調室を出た様な疲労と開放感を感じていると卯月が待っていた、誰かに教えられた挨拶を棒読みした後土産を渡された蜂蜜レモンだ疲れた体と心が求めていた物がそこにあった、しかし神殿でイザベル達を手玉に取り弥生さん本人かと思う煽り文句と比べると今の挨拶の落差が酷い、全く心が籠っていない土産の扱いも雑だった


部下が用意した物だと推測できるが弥生さんから事前に話は聞いていた、「やる気が無い事にはデバフがかかる」と、八つ当たりをして真実を暴いたところで何も良いことは無い「怠惰」という虫唾の走るスキルの保有者だが言われた通りチーム全体で評価しよう、彼女は褒めて伸ばした方が良いだろう


後で知る事になるが私が伸ばしたのは彼女のニート生活だった、「怠惰」のスキルを最大限に活用する最適解なのだが頭で理解は出来ても心で納得出来ない事がある、「アレルギー」と言われた意味が解かった「花粉症」の様に私に効いてくる


最適な解決法は近づかない事だ、確かにチームとして評価するなら優秀なのだ、卯月にとってもそれが一番なのだろう、存在を忘れる訳にはいかないが自由にさせてやろう、卯月の部下は優秀で彼女たちの仕事は最適化されるのだケチを付けるところは無いと自分を騙した





「姉貴、弥生様が使徒になられてからこの神殿が上手く回っていくのか心配だったが卯月様も優秀だな」

愚弟が甘い事を言っている


確かに彼女の部下やゴーレムは優秀だけど彼女は迷宮に引きこもったまま姿を見せない、私達を子ども扱いしたゴーレムの性能や操作技術を疑う訳では無いけれど性格が終わっている


「オスカー、貴方の目は節穴ですか?いつも表で活動しているのはゴーレムよ、頭に芥子の花が無いでしょ、弥生様が聞いたらなんて言われるか分からないわよ」

弥生様はまだ引き継ぎのために本神殿など「法王国」各地をまわっておられる、卯月様の本性は弥生様が使徒に昇られてからでなければ評価が固まらないだろう


「俺だって気付いているさ、姉貴は弥生様の前で恥をかかされて、評価が厳しいだけだろ、弥生様とは違うんだ、今の俺の評価も最終的な評価じゃない、弥生様に対してと同じように間違いがあれば正すのが俺たちの使命だ、忘れちゃいないさ」

弥生様も私達を導き活躍の場を提供して下さったが本人も陣頭に立たれていた、そのこともあり私が弥生様を評価するあまり卯月様の評価が低いのかも知れない


弟の言う様に弥生様に対してそうであったようにこれからは卯月様が正しい道を歩むように導いていこう、弥生様にその必要は無かったが卯月様が間違うような事があれば正すのが私達姉弟の使命だ


「姉貴は弥生様を全肯定してただろ、姉貴の言う様に今度は俺が卯月様に甘いのかも知れない、厳しく見てやってくれ」

こう言われて初めて気が付いた、私は弟に心配されていたのだと、大抵の人間がそうだが姉弟揃って自己評価が甘い様だ気を引き締めなくてはいけない

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