86.幻の恋
神殿の一室でセーラ様とカーリア様に前で正座で床に座らされている
「カオリ様、何故このような危険な魔道具をイザベル達3人に与えたのですか?」
「カーリア様、お言葉を返すようですが決して危険な物でではありません、対吸血鬼用の物です確かに「蟲毒壺」のスキルで作成した魔道具ですが人間に対して危害を与えるものではありません」
「カオリ様、私が問題視しているのは使用者に対する影響です、イザベルがカトレアに好意を持ってしまったのは貴女の与えた魔道具の影響です」
どういう事だろう理屈が分からないクロエから吸血鬼などに対して戦闘意欲が過剰に刺激されるとは聞いていたがクロエは完全に魔道具をコントロールしていたイザベルに与えた魔道具も形状はフレイルだが付与した能力に差はほとんどない筈だ
「まさか、解かっていないのですか?」
私の顔に出ていたのだろう、セーラ様からも問い詰められた
「吸血鬼に対する効果の副作用で戦意を少し刺激しますが問題ない程度の物でした、先に与えたクロエは問題なく使いこなしていました」
カリーア様とセーラ様の顔色が変わりカーリア様が部屋を出ていかれたしばらくして錫杖を手にしたクロエを連れて戻ってこられた
「驚きました、カオリ様の言う通りクロエはこの魔道具を使いこなしていますね、ですがこれはクロエだから出来た事です、この魔道具は普通の人間に使いこなすことの出来ない危険な代物です、ミネアを呪った短剣を覚えていますか?極端な事を言えばあれと同じです」
「ほかに魔道具を渡したことは有りますか?今すぐ回収しなければいけません」
そんなに危険だろうか?人を切りたくなる妖刀ではあるまいし
「ヒルダ姉さんに短剣を贈りましたこれと同じ能力です」
アイテムボックスから短剣を出し床に置いた
「ほかにも有るのでしたら全て出してください、確認します」
カツアゲにあって「おい!跳んで見ろ!」と言うやつじゃないか勘弁して欲しい
「もういいわ、片付けてちょうだい」
短剣を続けて5本並べ、ゴーレム対策のメイスを5本並べた時に呆れた声でカーリア様が仰った、まだドラゴンスレイヤーもあるが黙っておこう
「今のその魔道具の所有者は貴女ですよね、アイテムボックスの中ならともかく10本も並べてどうして正気が保てるのですか?」
意味が分からない、また顔にも出ていたのだろう私の顔を見てセーラ様が唖然とされている
「貴女の力は十分に分かりました、イザベルに与えた魔道具の危険性に気が付け無い訳です、今後魔道具を誰にも贈らないで頂けるのであればもう何も言いません」
カーリア様から諦めた様な声で告げられた、もう魔道具を贈らないと約束しクロエの錫杖を含めて4つの魔道具が返され私は解放される事になった
「クロちゃん、神器に作り直して返すから少し待って」
「聖杯」のスキルで錫杖を作り直して渡そうとするとカーリア様に取り上げられた
「どうしてこんな事が可能なのですか?信じられません今のは何のスキルですか?」
カーリア様が聞いてきた、また怒られるのだろうか
「「聖杯」と言うスキルですこの神殿で癒しの奉仕を続けていたら獲得しました」
覚悟して正直に話した
「この神殿で癒しを施していたのはイライザ様ではなかったのですか?」
セーラ様が質問された
「神殿で癒しを奉仕をされていたのはカオリ様でした、癒しを求めて神殿に訪れた人々は本神殿で称えられたイライザ様の奇跡を耳にしていたためカオリ様をイライザ様と信じて感謝して日々の生活に戻られました、そのあと更に多くの者達に名声が拡がったのでしょう」
クロちゃんが説明をしてくれた
「成程、感謝や敬意と願いが集まり「聖杯」のスキルとなったのでしょうね病が蔓延する事で強化される「蟲毒壺」に対抗できるスキルと言えるでしょうね」
セーラ様から感想が語られ、感嘆と諦観の混じったため息が漏れた、イライザと共にそのスキルを獲得した喜びを思い出す
「カオリ様、何を喜んでいるのですか?この件を赦した訳ではないですからね」
この後も2人からの説教が続き「蟲毒壺」を使って魔王がどの様な被害をもたらしたのか、いかに危険なスキルなのかと長時間にわたり説明された
カオリ様から贈られたフレイルをセーラ様に取り上げれた後カトレア様への異常な執着が消えていた、残っていたのは純粋な敬意だった
ヤヨイ様から手出しを禁じられた私たちは復讐の機会を与えて貰いたいと今回の会議の「法王国」代表であるセーラ様に泣きついた
「会議の中で魔王カトレアとの一対一の戦いの場を勝ち取ってあげましょう、相手は貴女達を侮ってくれるかも知れません上手くいけば3対1の戦いも可能でしょう」
確約は出来ないと言われたが、交渉の中でその機会を勝ち取るために努力すると仰ってくださった
別の部屋に3人で待機していた、会議の声が伝わってくる、魔法的な物では無く音の反響を利用して広間の音が聞こえる非常時のために護衛が待機する部屋だ
カトレアの真祖であることを捨てると言うセリフが聞こえた、次いでカオリ様の詠唱が響く、音声しか分からない広間の様子を自分の目で見たいと言う誘惑に耐えられなくなり部屋を出てしまった、目の前で奇跡の光景を見届けた
フレイルからの吸血鬼に対する衝動に近い殺意が行き場を失い私の感情をグチャグチャに揺さぶった、美しいとすら思ったカトレア様の背中の皮が剥ぎ取られ和平を継続を誓う文書に変わっていった、自分の背中に彫り込まれた刺青をイライザ様が剥ぎ取り、カオリ様に癒された記憶が蘇る
その記憶が私に与えたのは恨みではなった、フレイルの影響もあったのだろうがカトレア様の皮が私への恋文の様に感じられた、事実私に行った行為に対する禊でもあったのだろう、お互いがサインを終え和平の継続が成立するまで背中の傷はそのままに会議は続いていた
「セーラ様お願いが有ります」
私は広間に飛び込んでいた
「イザベル、申し訳ないのですが貴女の出番は無くなりました下がっていなさい」
カトレア様と戦いたいと懇願する思われたのだろうセーラ様が私を制止した
「セーラ様違うのです、カトレア様、貴女の傷を私に癒させてください、どうか許可して頂けないでしょうか」
私がカトレア様の傷を癒してこそ和平は続いていくだろうそう考えた、カトレア様もそれを受け入れて下さった
フレイルによって私の増幅されていた恨みが思慕に変化していた、その増幅されていた部分が無くなり今は敬意だけが残っている
「今でも魔王カトレアの元に行きたいですと言うのですか?」
セーラ様から問われた
「和平の行く末を確かめなければいけません、私の心の行く末もです」
私の返事を受け、取り上げられていたフレイルの代わりに対吸血鬼の能力と守護の力が付与された指輪を頂いたこれは魔道具ではなく神器だった、魔王城に向かう前に同じデザインの守護の能力を付与した指輪をカオリ様から頂いたカトレア様に渡すように言われた
フレデリックとポールはまだ魔王カトレアを恨んでいる、私の行動がそれを深める結果になってしまったかも知れない2人からの私への好意は感じていたお互いを牽制しあって言葉にすることは無かったが私の自惚れから来る勘違いでは無いだろう
カオリ様は自身とイライザ様の関係やカーリア様とヤヨイ様の関係に重ねているのだろうが私の思いは純粋な敬意だ、誤解を生むような言動を会議の場で見せたのだから仕方ないが、無理を言ってカトレア様用の指輪を聖印に作り直して頂いた
カトレア様の元に行くと決断した後にヤヨイ様からカトレア様との関係を教えて頂いた彼女はカーリア様と共にエルダーリッチを救済した時に力を貸してくれたエルダーリッチの弟子だと言うことだった
カトレア様の師匠でもあるヤヨイ様が使徒に昇られる、いずれは女神様の力を受け継がれるかも知れない事をカーリア様から教えて頂いた、カトレア様は魔物達にも女神様の教えを伝える伝道者となるだろう、神殿が認める事は無いだろうが私がなれなかった聖女へと私が導こう、もう二度と彼女を吸血鬼になどしない




