85.和平の証
今から魔王軍と「法王国」との和平の継続か否かの交渉が始まる、私が魔王軍側の代表として出席する,
魔王カトレアとしての最初の公式な仕事だダリアとカミラを伴って弥生様の迷宮に向かう、今は神殿としての体裁を整え両勢力の境界として機能している
「法王国」側の代表は本神殿で副司祭使徒を務めるセーラ殿、使徒チアキが魔王討伐を果した時の聖女tだという、使徒カーリアも降臨して出席している、調停役の様な立場であるが弥生様と香織様も出席する、これに「魔魔導国」の代表として美咲殿とハイエルフを代表してセシル殿、この2人は魔王軍と「法王国」との和平に便乗する様な形で参加のするため基本的には立ち会うだけで会議に積極的に参加しないだろう
「初めましてで良いでしょうか、魔王カトレアと申します、現状のまま和平を継続する事にしたいと思います、この場にはおられない者で遺恨がある者もおられるでしょう、個人的な復讐心で自分だけでは無く多くの者の命を散らす事の無い様に会議はここで終了としてはいかがですか?」
誰かの命令か本人の独断かは分からないが以前魔王城に遊びに来たネズミが三匹隠れている様だ、アストリッドさんを消滅寸前にした魔道具と同じ様な物を準備しているのが使い魔の目から確認出来た
「あなた方の挨拶の手間も省きましょう使徒カーリア様とは私がアシュノット様、エルダーリッチの弟子だった時から縁があります、貴女の承認さえ頂ければ私たちは引き揚げましょう」
暴走しても弥生様と香織様が止めるだろうが、面倒な事になるこちらに有利な「法王国」の不手際として交渉のカードになるが、現状の和平より有利な条件を得た所で現実的に活用できるかは別の話しだ、そこには実力が伴わなければ意味が無い、戦力としては魔王軍側が劣っている
「お待ちいただけますか、カトレア様、「法王国」の代表のセーラと申します、まずこちらの審問官の無礼をお詫びします、無事に返して頂いた上に、素敵な親書まで送って頂きましたお礼をしたいのですが」
面倒な言い回しだ、余興であの3人と遊んでやってくれとでも言いかねない先手を打とう
「それには及びません、和平継続のために戦力の削減をしましょう、勇者カオリ様は吸血鬼化を解呪して人間に戻すことが出来るとか、私の眷属の食事のマナーが至らずご迷惑をお掛けしたそうですね、私を人間に戻して頂きましょう再び始祖となる事は可能ですが和平が継続している限り人間の身体でいましょう」
今の私にとって真祖となる利点は永遠の命だけだ、これ以上眷属を増やす気もない、弥生様により魔王の力を得た今少しくらい魔力が下がったとしても影響は少ない
致命的な弱点を消すことも出来る相手には分からないだろうが、メリットの方が多いとさえいえる、事前に人間で会議に出る事も考えたが偽物と思われる恐れがあったため見送っていた
「こちらの勇者を信じるのですか?神聖魔法で貴方を消滅させるかも知れませんよ」
良い流れだ、こちらの和平に対する誠意を見せる事も出来そうだ
「私が信じるのは自分の判断です、勇者カオリ殿の事はヒルダ殿からも聞いておりますした、彼女がこの場に出れていればこの様な余計な火種を抱える事の無かったでしょう残念でなりません」
ヒルダに手を出したのは「法王国」では無いが聖女相手なら揺さぶりとなるだろう
「そうであれば「法王国」の代表として和平の継続を認めましょう、カオリ様の力をこの目で見れる事も私にとっても眼福です、真祖の吸血鬼を救済する事は討伐する以上の奇跡でしょう」
実質的な勝利に一歩近づいた
「カトレア様、私が貴女の穢れを祓い救済しましょう」
周囲からの見え方も意識しているのだろう、台詞に少し演出を感じる、私もそれに合わせて香織様の前に跪いた、そのままフェニックスが召喚され次いで神聖魔法が発動する本来混じり合う事の無い精霊と神の力が香織様のスキルで調和しいていく
「偉大な女神の慈悲をもって咎人の罪を許られることを乞い願う、自然の摂理から逸脱した者を再び正しい時の流れに還す力を授けたまえ」
歌う様に詠唱が神殿響いた
私の心臓が動き出し体温が戻る、身体も魔法で若さを無理矢理保っていた状態よりも若返っているだろう体が軽い魔力の循環もスムーズだ
「感謝致します、聖女カオリ様、このままの身体で過ごせるよう努めていきます」
跪いたまま感謝を表すと共に今後も和平を継続する意思を示す
「申し訳ありませんがカオリ様の癒したこの身体を傷つけることをお許しください」
ダリアがナイフで私の背中の皮を剥ぎ取った「法王国」のネズミも声を上げずに耐えたと聞いている魔王にそれが出来なければ面目が立たない、表情を変えずにダリアから剥ぎ取った皮を受け取り魔法で羊皮紙の様に加工してテーブルにひろげる
「和平の継続を誓う文書を書き上げ調印しましょう」
自らの皮に血で条文を書き上げ魔王カトレアと署名してセーラ殿に差し出す
文面を確認して紙に同じ内容の条文を書き上げセーラ殿とカーリア様が署名した私に差し出された、双方が文面を確認してお互い署名をして和平の継続が正式に発効した
「セーラ様おねがいが有ります」
イザベルと言ったか魔王城に忍び込んだネズミの内の一匹が会議の行われていた広間に入って来た
「イザベル、申し訳ないのですが貴女の出番は無くなりました下がっていなさい」
「セーラ様違うのです、カトレア様、貴女の傷を私に癒させてください、どうか許可して頂けないでしょうか」
セーラ殿が戸惑っている
「それではお願いしましょう、前に出会った時より腕を上げているようですね、慈愛の心や癒しの腕前は落ちていないでしょうね?」
挑発ともとれる言葉だが、嬉しそうに私に近付き傷を癒した、傷1つ残っては居なかつた、姑が息子の嫁の掃除の出来を確認する様にダリアが確かめたのだから間違いないだろう
「カトレア様、貴女が隠れてまた真祖にならない様に見張らせて下さい、その時は香織様から頂いた魔道具の出番です、貴女が人間でいる限り人質として扱ってくれて構いません」
どういう心境の変化だろうか私を尊敬の目で見ている様だ
「イザベル正気か?」
一緒に魔王城に忍び込んだ残り二匹のネズミも広間に入って来て叫ぶ、こいつらの行動の方が理解出来る、私も彼女が正気なのか判らない
「あなた達、下がりなさいどうしてイザベルの気持ちが判らないのですか?ガンダルフ殿の元で心を鍛え直してもらいなさい」
「カトレア様、イザベルの事を宜しくお願い致します、神官の修行で身の回りの世話も出来る様に鍛えられています」
聖女にとっては理解できる行動なのだろうか?断ると話がこじれそうだ
「解かりました、大切にお預かりします、気に入ったら眷属にするためにまた私が真祖になるかもしれませんよ」
ネズミを控えさせていたのだ、嫌味の一つでも返しておこう
「私が欲しくて「法王国」と戦って下さるのですか?そうであれば光栄ですが私はカトレア様が魔王を捨てて私を選ぶ様にお仕えして見せましょう」
言葉を間違ったのだろうかイザベルが反応した、セーラ殿も困惑されている
「性転換のポーションを準備しておきます必要になったら何時でも言って下さい」
香織様が声を掛けてきた
その言葉が私に頭痛を起こさせた、セーラ殿の顔色も良くない、イザベル嬢の目に変な光が見える、弥生様が楽しそうに微笑んでいた
「カトレア様と私の子供・・・」
イザベルが私にだけ聞こえる小さい声で怖い事をつぶやいている、命を狙われるのとどちらが恐ろしいのだろか?




