83.贈り物
「蟲毒壺」のスキルが急激に進化したアンジュやリーゼロッテが新しい知識を収集した効果もあるが、一番の原因は私にある、スマホやPCに感染するのウイルスを「蟲毒壺」が取り込んでしまったためだ
カミラ母さんを通して日本からドレスや民芸品のオーダーを受けて出荷しているの、その時に「蟲毒壺」のスキルの話が母さんに伝わり、注文を正確に伝える為とタブレット端末を用意してくていたのだが注文を入れたUSBにウイルスが入っていた
「事故なのよ、計画しての犯行では無いの」
などと供述しているが最初のUSBは事故かも知れないがその後は明らかに作為的な計画的犯行だ
一種類のウイルスの学習を確認した後にSSDを送ってきた、これは感染したのではなく何処からか手に入れた自分で使うためのウイルスの詰め合わせだ、タブレット端末を起動させていないにも関わらずSSDから直接ウイルスを読み込む「蟲毒壺」の能力には驚かされた、アンジュが協力してテストをしたのだろうアンジュからもウイルスの情報が送られてきた
証拠があるため、日本に出向き問い詰めたところ母さんがコネを活用して手に入れた物だと白状させたがこれが間違いだった、「蟲毒壺」は独力でネットに接続し集められるだけのウイルスを吸収した、このままではネットの中に自分の複製を産み出しかねないと慌てたが大丈夫だった
アンジュとリーゼロッテの暴走を止めた時に子供を造る能力を封印していなければ手遅れになるところだった、済んだ事は仕方ない「蟲毒壺」を使いウイルスに対するワクチン開発を始めた、能力の有る危険者を暇にすると碌なことにならない、せめて役に立つ仕事を与えてこき使おう
幸いな事に被害と言う被害は無かった「蟲毒壺」に対抗できるスキルを獲得していたお陰でもある「聖杯」と言うスキルだこれまでの奉仕活動で多くの病人や呪いにかかった人々を救って来た成果だろう、私とイライザに「聖杯」というスキルが発生したのだ運命だと喜び弥生さんに報告したところ
「香織が聖女イライザと思われて感謝の気持ちがイライザにも届いたからでしょうね、2人の関係を祝福して同時にスキルを授かった訳では無いでしょう」
と「サンタは居ないの、それはお父さんやお母さんよ」言うような夢を壊す現実を突きつけられた
「でも貴方の今までの行いが実ったのよ運命では無く貴女が勝ちとったスキルよ、誇るべき成果よ」
私が表情に出した不機嫌さに気付いたのかその後すぐにフォローの言葉がかけられた
「「蟲毒壺」のスキルも貴女がコカトリスとマンドレイクを食べ続けた成果よ素晴らしいじゃない」
あまり同列で語られたくは無いが確かにそうなのだ不思議な気分だ、証拠集めの時にアンジュから聞き出したゲオルグさんが言った言葉を思い出す
ダークエルフの魔王が暗黒神から「蟲毒壺」のスキルを賜った、私の魂にはその魔王の子孫であるカミラ様から引き継いだモノが存在していると、そしてそれに対抗できるスキルも獲得した、今後この世界で私は何を成すべきなのだろうか
アンジュの願いは分かっているがそのままの形で叶えてあげる事は出来ない、ゲオルグさんは私の息子のカムイに何かを期待している様だ、アンジュと違い心の奥底までは見えないがこの世界を手に入れて欲しいといったところだろう、だからといってそれを否定して私の理想をカムイに押し付ける気にはなれないし逆に世界をカムイに贈る様なことも出来ない、イライザやスーザンにもカムイに期待している事が有るだろう
ヒルダ姉さんは娘を産んでカムイと結ばれる事を希望しているらしい、ユリアさんから聞いた話なのでユリアさんの望みなのかヒルダ姉さんの望みなのかそれともドライアード達を通した世界樹の思惑なのか確かな事は今の段階ではまだ判らない
何より大事なのは本人の気持ちだろう、カムイの望みであれば世界を手に入れても良いし、早太郎の様に多くの相手を幸せに出来るのであればそれも好きにすればいいのだか誰かを悲しませるような事は止めて欲しいと思う、この思いすら私の理想だ一方的に押し付けるのは止めよう、立場上命すら狙われる恐れがある少なくとも成人するまでは親の責任を果たしたい
そんなことを考えている内に問題に気が付いた、このままでではカムイの周りに女の子しかいない事になるのではないだろうか?
流石に同性の友達が居ないのは問題だろう、とは言えカムイと遊んで大丈夫な男の子に心当たりなど無い、困ったイライザに相談すれば「香織が弟を産めば良いだろう」と言い出す未来しか見えない、そうだヒルダ姉さんに相談しよう何も男の子を産んでくれと頼むわけではなくまずは相談してみようと森に向かうと5歳位の男の子がいた魔力も高い様だ私の視線に気づいたのか声を掛けられた
「香織にこの姿を見られるのは恥ずかしいなヒルダよ、自分で自分を産んだのよこの身体の私はチヒロと呼んでほしい」
理解が追い付かない、言葉に詰まっているとユリアが慌ててやって来た
「カオリ様、いらっしゃるなら連絡を頂ければ準備してお迎えいたしましたのに」
何かを隠そうとしているのだろうか?いつもと違い余裕が無いように感じられた
「ユリア、ヒルダ姉さんが自分で自分を産んだと言っているけどユリアは知ってたの?」
何気なく聞いたのだが返事が変えてこない、何故か顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている
「香織、貴女に言わないといけないとは思ったんだけど言えていなくて、ユリアのお腹に私の子供がいるの」
二度目の理解が追い付かない事態だ、私だって色々おかしい事はしてきたけどどういう事だろうか?
「性転換して、その、愛しあった結果授かったってこと?「蟲毒壺」で創造した短剣を贈ってたからそれで?」
「違うの世界樹の力で大人になってこの身体で、その・・愛し合ったと言うか求められたから応じた言うか・・・」
ヒルダ姉さんも気まずそうにしている
「2人ともおめでとう、別に2人の親でもないんだし責めたりなんかしないわよ、知っていたらお祝いも用意できたのに、水臭いわよ」
「すいません聖女としてあるまじき事をしてしまいました」
ユリアが申し訳なさそうに謝って来た
「大丈夫よ、私は人として自然な行為の結果を覆すことは出来ないけど、カーリア様なら身体を最善な状態に整えることが出来るから必要なら神聖魔法にも支障はないわ、魔王軍との和平が続くので有ればその必要も無いでしょう」
「引き続き聖女として勤めを果していけるし、引退したいと言うならクロちゃん・・・クロエが居るから引き継ぎをして貰えば大丈夫よ、本神殿が苦情を言ってきても私押し通すから心配しないで良いわ」
「カオリ様有り難う御座います」
ユリアが嬉しそうにお礼をいった、その喜びの中に少し勝利を勝ち取った達成感が見える
「計算通りみたいね、事前に相談してくれたら、イライザの時みたいに処女受胎に出来たのに、寿退社が狙いだったの?」
「香織、ユリアに寿退社と言っても通じないわよ、祝福してくれて有り難うこの子が女な子ならカムイの相手としてどう?」
「男の子ならカムイに友達を探していたからどちらでも嬉しいわ、でも決めるのはカムイ本人よあなた達の子供の意志も尊重してあげて」
今後の楽しみが増えた、平和な世界を贈り物に出来たらどんなに素晴らしいだろうか




