81.死に場所
何とか交渉が成立し新たな森に居場所を確保できた、幼い植物の妖精に見えたがなかなかに油断できない本当は何年生きているのだろうか?
今代の勇者にアンジュと名付けされ従魔契約で仕えていながら、魔王カトレアやダークエルフの現族長カミラにもコネがある、何より勇者から「蟲毒壺」スキルを授けられているどうやらその勇者が「蟲毒壺」のスキルを発現させ子供のスキルを与えた様だ
かつて魔王に上り詰めたダークエルフの族長が「蟲毒壺」のスキルを暗黒神から授かり私は直接では無いが孫のスキルとしての「蟲毒壺」を授かり魔王に仕えた、もうそのスキルは魔王の死と共に消えてしまったがスキルで使った毒や病の知識は私の中に残っている
幼いと侮っていた相手だがスキルを授けて貰えないかと頼んだ
「無理なのでち、同士と共に勝手に孫スキルを増やして香織様に禁止されたでち、スキルに制限までされてしまっいるでち、もっと孫を増やしてひ孫も作ろうと思っていたのに残念でち」
と悔しそうにしていた
勇者もこのスキルの危険性に気が付いているが孫のスキルを授けられる所までスキルを成長させている、私の「蟲毒壺」も孫の代のスキルだったがひ孫までは作れなかったと言うのに、勇者の持つスキルは私が仕えた魔王を越えているというのか
それでも出来ることは残っている、私の知識をアンジュに伝えれば「蟲毒壺」は更に成長するだろう、私の持つ知識の多くが既に蓄えられていたがそれでも幾つかの新しい知識を捧げることが出来た
「アンジュ!今度はどんな悪さを企んでいるのかしら?今までと系統の違う毒物が追加されてるみたいね」
勇者が契約しているアンジュの元に転移してきたようだ、スキルの効果か魔法なのか判断か付かないが少なくとも黒狼の元に転移できるダークエルフを私は知らない、それでも魔法で転移した時の魔力の反応は感じられなかった、ビーストテイマーのスキルを極めた先に可能な技だろうか?別の転移可能なスキルを保有しているのだろうか?
「はわわ、カオリママ、そんな計画は存在しないでち、弥生様から新しいお家を頂いて、放浪していたダークエルフを保護したお礼にいろいろ教えてくれると言うから無下にする事は出来なかっただけでち」
急に現れ詰問されたため慌てているのだろう、聞かれてもいない「計画」と答えている問い詰められると事が露見しそうだ
「勇者カオリ殿とお見受けします、私はゲオルグ、ダークエルフを束ねて旅をしておりましたこの森にお世話になっておりましてアンジュお嬢ちゃんには感謝しておるのです」
儂から感謝を伝えて興味を引くことにした
「そうでしたか、アンジュ、カミラ様に連絡しておくから落ち着かれたら案内してあげて」
「申し訳ありません、事情が有りましてカミラ嬢と袂を分かったままになっております、今更帰る訳にはいかないのです」
上手く興味をこちらに誘導出来た様だ
「他にこの森にいるダークエルフ達を率いてカミラ様の森を出たということでしょうか?主戦派を庇って内部抗争を防ぐために主戦派の旗頭になりその年で長旅を続けていたと言う所ですね?彼らの死に場所は見つかりましたか?」
思った以上に鋭い、見た目は成人したばかりの小娘だが女神が導いただけはある、アンジュが魔王になって貰いたいのも分かる
「残念ながら、まだ見つけておりません出来る事なら私の死に場所を「蟲毒壺」のスキルを発現させた貴女が次期魔王となられた魔王カオリ様の配下としての戦場にしたいところですが、貴女の意志はスキルに流されるような事は無いようです」
望めばこの世界の支配者になれるだろうがその意志は無い様に見えた
「そうですか、私はその死に場所を自体を無くす事を勇者としての役目と考えています、貴方に敬意は感じますが私が提供できるのは生きる場所だけです今までとは別の道も考えてみて下さまいせんか」
彼女からの返事もそれを表している、成程アンジュが足りないと言う訳だ、もう少し欲や野望が有れば彼女にこそ別の道が開けただろう
「あなた達の魔力は覚えました、今後私や私の大切な者に危害が及べばどんな姿をしていようが貴方達が第一容疑者です、無駄死にはしたくないでしょう?弥生様なら戦う場所を与えて下さるでしょう話は通しておきます」
やろうと考えていた事も推測され釘も刺されてしまったか
確かに無駄死にとなるだろう、魔王になる性格ならこの時点で儂らの命は無いか、呪縛でもして手駒にするだろう、そして手駒にされたいという思いもある事に気が付いた
「アンジュや大人しくするしか無い様じゃ、血の気の多いやつらを弥生様に引き合わせてやってくれんか?」
方向転換するしか無い様だ、儂はともかく他の者達にはまだ十分時間がある
「期待外れでち、もっと熱いままだと思っていたでち、でも師匠には敬意を払うでち、この森で猫でも抱いて日向ぼっこしていればいいでち」
アンジュはまだ諦めて無い様だ、私に嫌味を言いながらも悪意は感じない、心の中では自分はまだ若いと思っていたのだがこの言われ様だ
気に入らないが師匠と言ってくれた分の義理は果たそう、カオリ殿は無理でも彼女の息子は判らない、魔王では無いだろうがこの世界の頂点を目指すのであれば力を貸そう、新しい弟子にも出番が有るだろう
魔王に覚醒する切っ掛けとして殺す計画を立案しようとしていたターゲットが次に盛り立て仕える事になるかも知れない主の候補に変わった
血の気の多い若者だった自分を思い出しながらそんな血の気の多い若者を率いて旅をした、そんな老いぼれに新しい目標が出来た、かつて野望を共にした魔王は道半ばに勇者に討たれた、今度はどんな結末を迎える事になるのだろうか
今度は死に損ねる様な真似は御免だ、ようやく見つけた死に場所だ猫を抱いて寿命を全うする様な綺麗な生き方はしてこなかった、汚く生き続けてきたのだせめて綺麗に死にたいものだ、私には過ぎた望みだと分かってるがもう少し足掻こうではないか、地獄で魔王様が待っているだろう土産話の一つも無しでは会わせる顔が無い
カオリ殿の魂にわずかながらダークエルフの匂いを感じる「蟲毒壺」のスキルの存在がそれを証明している、彼女の息子を見た訳で話無いが彼にも伝わっているだろう、いずれスキルも受け継がれる可能性がある
「貴方の系譜が「蟲毒壺」と共に世界を手に入れましたぞ」
地獄で魔王様に再会した時にこの上ない土産話となるだろう




