77.疑念
「ヤヨイ殿についてどう思う彼女に野心は無いだろうか?魔王の力に心を奪われてはいないだろうか?」
「ユリアン様考え過ぎでは、私はヤヨイ様に助けられていいます」
信頼している部下に相談したが否定された
確かにヤヨイ殿の貢献は素晴らしいものだ、チアキ様とカーリヤ様と懇意にされ、聖女ユリア様をはじめ多くの者の師となり導いている、多少の独断専行は見られるが全て「法王国」の利益となっている、もしも自分が力に溺れる様な事が有れば救済して欲しいと聖女ユリアに語ったとも聞いている
だが彼女は一年間の間聖女ユリアと共に「同盟」を旅した、「同盟」の冒険者たちの行動に対しての牽制の為で事前に本神殿に連絡もあり問題のない行動だ、彼女が管理している神殿で腕を磨いたものは不自然なほどヤヨイ殿を信奉する一年も旅を共にして彼女の側にいたユリアは正しい選択を出来るだろうか?
彼女はエルダーリッチの力も引き継いでいるチアキ様の判断を疑うのは心苦しいがチアキ様とヤヨイ様は特別な関係だその関係に判断が狂わされたのかも知れない、私はチアキ様とパーティを組み魔王討伐を成し遂げた、私は「魔導国」生まれだが異世界の人間を道具とする八大貴族に反発し「法王国」の勇者に力を貸した
その過程で勇者エレノアがダークエルフの手にかかり魂を喰われてしまいチアキ様の魂を迎える事になった、そのあと恋人を失い自分を見失った戦士ジョアンが恋人を追いかける様に魔王が派遣した暗殺者の手にかかりで命を落とした、恋や愛は時に冷静な判断を不可能にする
私は魔王討伐の後「法王国」に迎えられ今では審問官のナンバー2にまで昇進した、イザベルの言葉の様に考え過ぎであれば良いのだが全てがヤヨイ殿の計画通りであれば取り返しがつかない、魔王ヒルダが冒険者に打ち取られたあと魔王の座を継いだのが吸血鬼の真祖だ
200年ほど前に吸血鬼の魔王がシグルドという冒険者に討伐されたあと吸血鬼の勢力は急激に低下し、エルダーリッチが自分の研究のために狩ったためほとんど姿を見なくなって久しい、魔王カトレアは何処から湧いて出てきたのだ、エルダーリッチが研究を完成させ部下や弟子が真祖になっていたらどうだろう?
エルダーリッチの力と娘の魂を持ち力を引き継いだヤヨイ殿が関わっていると考えるのが一番納得出来る答だ、和平を継続したとはいえあまりに魔王軍と彼女の鍛えた弟子たちの動きが噛み合っている、彼女の目指す場所は何処なのか?
父の遺産を活用して「法王国」で栄達する事で満足するのであればまだ良いとして、彼女がこの世界の女帝として君臨する事が目的なら刺し違えても止めなければならない、その過程で少なくない血が流れるだろう、女帝として彼女の代は安定するかも知れないがその後は何の保証もない、審問官として見定めなくてはならないだろう
久方ぶりに本神殿で女神の功績を称え加護を願う儀式が完全な形で実施された、私が女神の座についてから初めての事だ、それだけ竜涎香が枯渇していたのだと解かる
この儀式には世界の状況を女神に報告して正しい判断を求める意味がある、自分の管理する世界であるが高位の司祭や使徒の目を通して知る事には限界があり、密かに進められた魔王軍などの動きも知る事が可能だ儀式を行う最高司祭がその情報を知る事は無いが女神がその情報を生かして信託を降臨させて世界の危機を未然に防ぐことが出来る
その情報に看過できない物があった、最早手遅れかも知れない深刻な事態だ、弥生と言う魔王の力を手にした女が魔王軍と「法王国」双方に影響力を持ち、暗黒神のスキルを手にしている、その上暗黒神をこの世界から追放するほどその力を使いこなしているのだ、カーリアが降臨の後に懸念すべき事態と報告を受けていたが千秋に相談したところ信頼に足る人物と説明され安心して放置していた
このまま大人しくしてくれるのであれば、いっそ弥生に世界を任せても良いかも知れないが、彼女の前々世で私の先代の女神は彼女とその父親を見捨てている、私も使徒としてその決断に一枚嚙んでいるのだ、まずい、非常にまずい、父の敵と暗黒神を追放した女だ女神に対して何をしでかすか分からない、十分に功績を積み力もある、私を蹴落としてこの世界の唯一の神にだって手が届きそうだ
何か良い解決策は無いものか?恥を忍んで千秋とカーリアの知恵を借りよう、ここで高圧的に二人を責め様ものなら弥生との二人の関係を考えれば裏切られる恐れもある、どう切り出そうか、ここで良い考えが浮んだ弥生を私の使徒に迎えたいと相談すれば良いだろう
いやこんな爆弾を放置した先代の様に使徒に丸投げして、今の成果を手により高位の存在に位階をあげれば良いのでは暗黒神を追放した手柄を主張できる、弥生にはこの功績をもって使徒になったあと直ぐに女神を継承して貰おう千秋とカーリアと仲良く暮らせるのだ悪い話ではないだろう
女神の地位にしがみついて暗黒神の様に追い出されたら取り返しがつかない、この方向で二人に相談して基本的に賛同を得た、勘の良い審問官が弥生を追求しようとしているところに割り込んで信託を下した、危なかった、弥生を追い込んだら手痛い反撃を受けて「法王国」が崩壊したかもしれない
敵対しては駄目な相手がいるがあの女はその最たるものだ、まずは一年後に使徒として迎えたいと伝えることが出来た一年様子を見てカーリアと千秋の2人から話の通りやすい方を降臨させよう、最近関係を持ったカーリアにしようか、千秋は弥生が浮気したと怒っていた




