76.神託
香織が一週間後に訪問医療から帰って来たって来た、何か不測の事態でも発生したのかと3日目に監視用のゴーレムを飛ばし確認したところ観光を楽しんでいる鯨のモンスターを退治した後に鯱をテイムしてマグロなどの漁を始めていた、アストリッド達の正体に気が付いて大暴れしているのではないかと案じたがそうでは無かった
そうなったとて構わないが良好な関係を構築出来そうだったのでまずまずの結果だ、その間にカトレアが襲撃を終え戦利品を確保して帰還している、本人は狩りのつもりの様だが香織が神官衣でモンスター退治をして「法王国」や女神信仰の宣伝をしてくれた
こちらも対「同盟」の第二段階に移行するカトレアの放った火を神殿の力で消火して威光を示して恩を売る、クロエやイザベル達に活躍の場を与えることも出来る、移動にはカミラが用意していた妖精の道が役に立つだろう連戦になるが香織が与えたクロエの錫杖が解決した、魔王軍と「法王国」等との和平を好ましく思わない「同盟」の幹部を吸血鬼に変え暴れさせている、邪魔者を消しつつ我々の力を見せつける理想的な結果だった
しばらくして香織が狩猟の獲物を持ち帰って披露してくれた、この世界で新鮮な刺身を楽しめるとは思っていなかった、醬油などの調味料は買い込んでおいたものがある
こちらでも調達できないか探しているが見つかっていない、リーゼロッテが雇っている異世界転移者達がこの世界で作り出すのを待つ方が早そうだ、現在ではアンジュがワサビのような植物を見つけたのが唯一の成果だが香織のスキルで毒抜きが必要な物だった
ヒルダも呼んで三人で懐かしい味を楽しんでいるとスーザンがやって来た
「姉御、俺に黙って弥生様達と旨いものを喰ってるな、俺の分は無いのか?」
香織がマグロ切らずに塊のままアイテムボックスから出しスーザンの前に出した
「姉御、冗談はやめてくれ魚は生で食うものじゃないだろ、お腹を壊したらどうする」
「新鮮だから大丈夫よ、スーザンはオークの熟成肉も生で食べてるじゃない」
「オークは生肉もいいが、あれも丁度食べ頃なんだよ腐りかける一歩手前が良いんだ、人間には解かんねぇいか?」
「しょうが無いわねスーザンにはこれが良いでしょう」
大きな赤身の肉の塊が出てきた
「これも新鮮だから刺身でいけるのよ」
「これは何の肉だ?確かに旨そうだな、魔力も十分に籠ってやがる!」
返事も待たずに齧り付いている
「クジラの肉よ「同盟」で狩って来たの大きいから現地で振る舞ってきたけど沢山あるからね」
「そい・・つはっ・・・いいな・・・で・も・・・もっ・・たい・・な・・
「スーザン!食べ終えてから話しなさいよ!」
「ふうっ、もったいないじゃないか、全部持ってかえってくりゃいいじゃねぇいか!」
「けち臭い事いっちゃダメでしょ、目玉もこんなに大きいのよ」
直径1メートル近くあるだろうか、香織が目玉を出してきた
「すげ~な、クジラってのは邪眼のバケモンなのか?」
「違うわよ、肉は解体して有るけど背骨周りはそのままだから外で見せてあげる」
「そこまでしなくていいよ、姉御が食わねえならその目玉も食わせてくれ」
「いいけど、調理しなくて大丈夫?」
「姉御は解かってねえな、目ん玉や肝は生が良いんだ新鮮なものが最高なんだよ、そうだ肝は無いのか?肝は?」
まだまだ漫才は続きそうだ、2人はそのままにしてヒルダと刺身を楽しんだ
私達もクジラの肉を楽しんだが一部をアイテムボックスに保管して残りは人狼達の胃袋の中に消えた、その時に思わぬ宝物を見つけた胃袋から消化されなかった本当の財宝も少し出てきたが本命は龍涎香だ
香織がクジラで腸詰を作ろうとして発見された最初は捨てられていたものを手伝っていたリーゼロッテが見つけた、毒物でもなく魔法の触媒にはならないので発見の功労者の2人が興味を持ったなかったため私が引き取り本神殿に寄進する事になった
儀式で使われるが内陸の海の無い「法王国」では特に貴重とされており大変感謝された高価で買えないのではなく物が無い様だ、通常はハイエルフの森でとれる香木で代用されている、正規の方法で儀式が出来ると最高司祭以下高位の司祭たちが張り切り参加者の席で派閥争いに発展した、バランスを取るため私が龍涎香を寄進した功績で争いの対象だった最前列の中央に座らされることになった
見なかった事にして仕舞い込むかいっそ捨ててしまえばよかったが、大騒ぎは最初の一回目だけだろう我慢して参加した、最高司祭もそうだがゴーレムでは誤魔化せない本当の実力者が本神殿には数人いる、香織に代理で参加させると何か悪い事が起きそうだ、前回の功績の披露の時は長い挨拶で表情が死んでいた流石に寝たりはしないだろうががせっかくの儀式に水を差してはいけないだろう
この儀式の後「シグルド同盟」に対する行動に対する聞き取りと最高司祭と審問官のトップを交えた上層部が集まり今後の「法王国」の意思統一のために話し合いの場が用意されていた、話の流れ次第では私に対する査問会に発展しかねない状況だった
実際、政治力も戦闘力も一流の審問官の第二席は私を目の敵にしている様で険悪な空気になり最終的に最高司祭様が奇跡で女神様を身体に降臨させ直接神託を下す事になった
「魔王の力を奪い取り、暗黒神までこの世界から追放した、今まで誰1人成し得なかった功績だ、女神として大変評価している、今すぐ使徒に迎えたいところだが1年後を楽しみにしているそれまでに引き継ぎを終わらせて貰いたい」
「いろいろ君にしか出来ない仕事を抱えているだろう、正式な儀式を行ってくれたおかげて世界の実情を詳しく知る事が出来た、カーリヤからの報告で君は秘密主義かと思っていたがこのタイミングで龍涎香を本神前に寄進する位だ、地盤固めをするタイミングも分かっている、これ以上遅れていたら心配する者達も増えただろう、「法王国」を思っての事だ君に強く当たった者達を悪く思わないでやってくれ」
「私がまだ使徒として先代の女神に仕えていた時の事だが君や君の父上を救ってやれなかった事を詫びよう、結果的には最高の形に落ち着いた訳だが、君にもカーリアにも辛い思いをさせてしまった、使徒としてカーリアやチアキと共にこの世界の為に力を貸してくれる時を楽しみにしている」
神託を告げられ引き返せない所まで引きずり出された、今まで敵意を隠さなかった審問官も女神様の神託で私が既に使徒になったかのように対応しだした、最悪だ現世で楽しい人生が続くと思っていたのにこの様だ
メリットもある話だが忙しい1年になる、引き継ぎの結果が使徒になった後の運命を変えるだろう、カーリアや千秋と楽しい時間を共有できるだろうが、常に一緒だとそれはそれで大変だ千秋に対する言い訳も考えておかなくてはならないだろう




