73.アストリッド
「シグルド、貴方の「同盟」が大変な事になっているわよ、助けに行かなくて良いの?」
かつて200年前に私が討伐した魔王が俺に囁きかける
「俺の名前を勝手に使っているだけだどうなろうと知った事では無い、お前こそ新たな吸血鬼の魔王が気になっているのだろう?」
今俺の妻になっている、いや俺が眷属として侍っている彼女は吸血鬼の魔王だった
俺の魔剣の力を利用し暗黒神の支配から抜け出し自分の消滅すら偽装した、そのことで俺にも彼女にも恩恵をもたらした、俺は魔王討伐の栄誉と褒章を得て彼女は自由を得た、俺は一部の自由と引きかえに永遠の命を手に入れている
「確かに気に入らないわ、カトレアとか言う小娘は自らの研究で真祖に至ったと公言しているのよ」
生意気に平気で太陽の下を歩き吸血すら必要としていない吸血は眷属を増やすための手段でしかない、私は暗黒神の加護で普通の吸血鬼から真祖へと進化させてもらったというのに
それでも200年は私に力を与え魔力も高めるには十分な時間だ、吸血で力と魔力を増やしていけるからだ、暗黒神が魔王としての活動を煽るためだろう吸血無くして存在出来ないままにされた対価でもある
「吸血鬼の魔王の先輩として挨拶に行きたいところだけど相手の底がみえないのよ、判断に迷うわ」
私に力を与えた暗黒神から代替わりもしているだろう行方をくらました先代の魔王といい私の前後の魔王と傾向が違う、使徒が擁立したダークエルフは偽物だから参考にはならないが今回の魔王は暗黒神の加護も有るようだ
「それならもう少し様子を見ましょう、私達の狩場を侵す様なら何か手を打つ必要があるでしょうけど」
気に入らないが私が「同盟」内部に潜り緒ませている者達を使って現魔王と手打ちをさせた方が良いかも知れない、楽しみにしていた食事を無駄に小娘の眷属として横取りされている、女神信者の司祭を狙ってもいいが以前それをやって厄介な事になりかけたこともある
今回も「法王国」は聖女を中心としたパーティを「同盟」に派遣して各神殿を廻り情報収集をしている「エルフの王国」も情勢を伺っている様だ、聖女も優秀な様だが外交官向きな人物で力は歴代の聖女と比べ特別強力では無い、されでも同行している魔術師が厄介そうだ
ミスリルゴーレムは素材のミスリルの効果でで吸血鬼に対してもそのままダメージを与えることが出来る、冒険者ギルドの本部で八千体のゴーレムを確認した、運用も巧みで実数以上に誤認させる配置と行軍をして見せている単に数を並べるだけではなく実戦でも完璧な戦争を遂行する能力がある証左だ
商業ギルドが欲をかくからこの様だ、私も介入のタイミングを逃したのだろう、今更介入したところで混乱を招くだけだ、次の機会を逃す訳にはいかない和戦両方のプランを準備しておかなくてはいけないだろう
カトレアとダリアに任せていたら暴走を始めた魔王としては間違ってはいない、「法王国」「エルフの王国」との和平と「魔導国」がニブルヘイム殿の支配下になったことから「シグルド同盟」に勢力圏を拡大するつもりの様だ、カミラも協力している何時でも妖精の道で「同盟」へ部隊を展開する準備を整えていた
新たに獲得した眷属を従え冒険者ギルド本部を制圧する寸前に作戦の修正が間に合った、ダリアが拘束している冒険者を丹に加工する前に保護する事も出来た、これからは私が直接指揮を執り魔王軍と「法王国」の両者が利益を得る将棋の二面指しの様な共同作戦に移行していく
簡単に言えばマッチポンプだ魔王カトレアが「同盟」の冒険者ギルドの本部をはじめとする重要拠点や参加国の王城・商業ギルドの本館などを襲撃し価値のある魔道具や財宝優秀な人員を奪った後、何時でも使い捨てに出来るレッサーバンパイアを自害させられるよう細工をして残し暴れさせる、その鎮圧と救援を「同盟」内の神殿勢力に援軍を送り「法王国」の手柄として恩を売る、無駄に領土を拡げた所で管理の手間が増えるだけだ
ダリアに指示を出して拘束している冒険者の時間を戻してやり目と耳を解放してやり魔法で冒険者ギルドの様子を中継する
「貴方が新しいギルドマスターすか?貴方の大切な冒険者達を預かっています、貴方の首と今後魔王軍に手出しをしないと誓うのであれば手打ちにしてあげましょう」
カトレアが眷属を引き連れてギルドマスターのカスパーに迫った
「問題児の役立たず共がどうなろうと知った事ではない冒険者ギルド本部が空だとでも思ったか、私の忠実な精鋭が対吸血鬼装備でお前の首をあげてやろう、魔王城の向かったクズ共に与えた武器は二級品だこれで私の名が永遠に語り継がれることになる」
最高の返事が返ってきた、カスパーが敗北のフラグを盛大に立ててカトレアが見事に回収した彼女の専門はホムンクルスや魔獣の創造だ死霊魔術の技術も活用したキメラを魔法で転送しすぐに制圧して見せた
「冒険者の皆さん、選択肢をさしあげます「法王国」より貴方が達を保護したいと話が来ております、冒険者ギルドの「法王国」支部長ヘンリック殿が身元保証人になってくれるそうです、ギルドマスターのカスパー殿に義理立てするのであればもう一度私と戦う機会を差し上げましょう、私としては戦って頂けると素材が手に入るので歓迎しますが選択は出来ましたか?」
ダリアが冒険者達の拘束を解き自分の周りに拘束に使っていた流体金属で水芸を披露しながら選択を迫る
再戦を選ぶものなど一人も居なかった、カスパーの失言が無くても二度と戦いたくは無いだろう窒息寸前で時間を止められ解放されたばかりだ、勝ち目など有りはしない冒険者達もその事に気付いている
「弥生様、忙しい所失礼いたします、弥生様に見て頂きたい患者をお連れしました、何とか救ってやりたいのです」
神殿で各地の様子を見ながら指揮を取っているとクロエ部屋の外から声をかけてきた、後は事前の打ち合わせ通りに進んでいくだろうカトレアとダリアに任せてよいだろう、魔法を中継を網膜と鼓膜に直接送る様に調整し入室を許可した
消滅寸前の状態で手足が塩に変わった吸血鬼がゴーレムによって運ばれてきた、カトレアに見せられない有様だ、流石に彼女でも恐怖する位に哀れな姿だ、既に肘や膝まで崩壊していた
「弥生様申し訳ありません、魔王の配下と誤認して救いを求める彼女をこのような姿にしたしまいました」
クロエが錫杖を手にしたまま私に頭を下げる
「香織が与えた錫杖の効果ですね、話を聞いていましたが大したものです、ですがそれがここの有ると崩壊が進むでしょう、他の巡礼者の救済を進めて下さい、後は任せてもらってだいじょうぶです、香織を呼びましょう」
私の指示に従いクロエが退室する
「よくも可愛い弟子を騙してくれましたね、それでも要件だけは聞いてあげましょう、話が出来る位までは癒してあげます」
以前カトレアの眷属の食事の為ににカミラが用意していた輸血パックがアイテムボックスに残っており、それを使って血をかけると崩壊が止まり少しは回復した
「弥生様、感謝いたします200年前に魔王を務めておりましたアストリッドと申します」




