70.クロエ
聖女ユリア様の発案で弥生様とマチルダ様そしてセシル様の四名が「シグルド同盟」にある冒険者ギルドの本部へ向かわれた、マチルダ様が冒険者として魔王ヒルダを討伐したあとその跡を継いだ魔王カトレア討伐のため冒険者パーティを送り込んだ挙句失敗し眷属として魔王軍の戦力を増やす有様だ
魔王討伐の経験者であるマチルダ様を中心に再度討伐を計画しているのだろう、S ランク昇進を名目にマチルダ様に召喚状を送ってきた、これ以上魔王を刺激したないし、もしもまた返り討ちになろうものなら更に状況が悪化する、「同盟」は魔王軍と我々「法王国」・「エルフの王国」の間で和平が成立したことを喜んでいない節がある、「同盟」から輸入していた軍需品の購入が減少した事もあるのだろう
これに対しての抗議と「同盟」内の女神信仰の神殿を巡検する為の旅だ、弥生様の試算では1年前後の期間がかかる事にになる、その留守を守る勇者香織様を助けるのが私達の役目だ、留守とっても和平が守られている限り私達の役目は自分の力を磨くことと巡礼に訪れる者達への対応だ
聖女イライザ様の癒しの力は本神殿まで届いていた、直接個人の癒しを施す機会の少ない最高司祭様を除けばその力は「法王国」で最高の癒しとまで伝わっていたが実際は少し事情が違っていた、実際に癒しを行っているのはイライザ様ではなく香織様だった、ここに癒しを求める者たちの先入観で香織様をイライザ様と思い込みそれが繰り返されたため香織様はその誤解を解くことを放棄されたようだ
ただその癒しに奇妙な点があるユリア様も気付いておられたが一部の珍しい病や呪いに対しての癒しの際に治療や解呪はしているのだがその病や呪いを香織様が吸収している様に感じる、後で直接香織様に聞いて解かったのだが「蟲毒壺」と言うスキルで吸収してしまえば治癒薬や解呪のための護符を作成できるとのことだ
ただし、それだけでは無く病の蔓延や呪いをかけることも出来るスキルのようだ、スキル名のイメージ通り相当危険なスキルで元々魔人やダークエルフなどに発現する、そのスキルの力で魔王になり「法王国」を含む人間たちに大きな被害をもたらした事もあった
香織様自身は聖女に間違われるくらいの善人だがその代わり魔王軍を含め多くの者に寛容だ、和平の際に前魔王ヒルダと義理の姉妹の契りを交わし関係も良好だったと聞いている、その証拠に二人の血でアルラウネを育て弥生様にも可愛がられている「アンジュ」と名付けられたアルラウネは普段は神殿の地下にある弥生様が用意した森で暮らしてる
アンジュは定期的に香織様の言う養豚場で種付けの仕事をしているハイオークの所に出かけていく、普段ワイルドボア種付けするハイオークに幻術をかけ人間やエルフの相手をしていると思わせているのだという、そして週に一頭の豚を神殿に持って返って食事をする、噂では生き埋めにした豚の上で根を生やして栄養を吸いつくすのが彼女の食事らしい
私が見かけるのは神殿の外で地中に埋まって日光浴をしている彼女の姿だ、私の知る限りは温厚なモンスターに見えるが恐ろしい蜂を引きつれて狩猟に出かけると所を目撃した者もおり、彼女の魔力も相当高い
そいうえば養豚場で種付けをしているハイオークも魔力は相当高いと推測している、推測でしか無いのははそのハイオークが魔力を隠蔽している様に見えるからだ、実際はハイオークではなくもっと高位のオークに進化しているのではないだろうか?
魔物は進化の結果巨大化するのが通常だが、進化した時に小型化し魔力も力も濃縮して強力になる個体がいる、オークロードやオークキングであれば下位のオークを異界から召喚できるスキルがある筈だ、スーザン殿に知られたら同族を食料として差し出す事を強要されるだろう、流石に可哀そうだ知らなかった事にしよう
スーザン殿は人狼だが香織様の従魔で弥生様も彼女を餌付けしており今では神殿の出入りを認められている、巡礼者を怖がらせないため狼の姿でやってくるだが、魔力を感じられる者から見れば恐怖以外の何物でもない、従魔契約の恩恵もあるが彼女の魔力は私よりも高いのだ
香織様は私がミネアと同期である事を知って対吸血鬼の神器と思えるほどの魔道具を授けてくれた
「私も弥生様も和平を継続する為に努めていきますが、ある程度魔王に対抗できる力が無ければ和平も成り立たないでしょう、その力をクロちゃんに持っていて欲しい」
可愛がってくれるのは嬉しいが、私の名前のクロエをクロちゃんと言われたのは初めての事でいつ迄たっても違和感が消えなかった
「クロエと呼んでください」
とお願いしてもしばらくはクロエと呼んでくれるのだかいつの間にかクロちゃんに戻ってしまう、その内私が諦めると皆からもクロちゃんと呼ばれる様になってしまった、それ以外には不満は無い、女神様がミネアにかかった呪いに打ち勝つために香織様と魂を交換されたことも教えて頂いた
ミネアが香織様の世界で武術の正確さや美しさを世界中の者達と競い頂点に立ったことや、素晴らしい結婚相手と結ばれた事も知る事が出来たその相手はこちらの世界で言えば審問官の表の仕事を担当する者達の中で出世を約束された様な優秀な人物だという、香織様は自分の事の様に喜ばれていいた、私もミネアの幸せを共に喜んだ
私が香織様から頂いた魔道具は香織様の世界の神官が用いる錫杖と言う杖だったは吸血鬼など邪悪な魔物を塩に変える力が宿っている「蟲毒壺」と言うスキルで吸血鬼を滅する毒や呪いを練り上げてその効果を具現する魔道具を創造して下さった
「蟲毒壺」の影響なのかミネアが受けたと言う短剣の呪いと比べれば恐ろしいものでは無いがこの錫杖から自身の力を使って欲しいと言う意思を感じる、常に討伐すべき相手を探している様だ、これは敵の発見に役立つ有り難い能力でもあるが私が使いこなさなけらばならない、魔道具に使われるような事になればミネアに笑われてしまう




