66.引き継ぎ
私が導くべき勇者を見つけた、私の勇者の名は氷上千尋「魔導国」が女神様の領分に踏み込んで異世界より攫ってきた「勇者」の一人だった、数奇な運命をたどり戦い続けた果てにこの世界でダークエルフとして転生した、その後使徒千秋様に担ぎ出され、魔王ヒルダとして和平を結ぶ道具にされた
今彼女は自分を討伐しに来た冒険者パーティのひとりであるハイエルフの族長の娘の身体を乗っ取り、世界樹に認められ若木を賜り自らの森を育てている、彼女自身の復讐も果たし自らの人生を歩みだそうとしている、既に彼女を産んだダークエルフの族長のカミラに対しても義理を果しているだろう
私を含め多くの聖女候補や護衛を務めた神殿騎士がダークエルフの族長の娘としてのヒルダの策謀により命を落とした、借りを返さなくてはいけない相手だが、その報復の手段としてダークエルフから切り離し族長を継いでいる彼女を独立させ、カミラの大切な後継者を奪い取ってやる事に決めた
だからといって「法王国」を離れ、世界樹の巫女である「勇者千尋」を導きたいと願い出ても認められる筈がない、それでも私は彼女の側にいることを諦められない、最低限の義務を果そう、千秋様に蘇らせて頂いた聖女候補は聖女に選ばれた私と審問官の道に進んだイザベルと司祭となるべく修行を続けているクロエの3名だ
クロエに聖女を引き継いでもらおう、聖女である私の影響力を行使して厳しい修行から脱落した者達の後任として他の人員と一緒に呼び出して指導しよう、審問官の第三席であったガンダルフ様も千秋様に蘇らせて頂いた神殿騎士の中から後継者を育て自分の仕事を引き継いだ上で武術の指導者に専念されておられる
私は神殿に無断でクロエに聖女の役目を押し付ける事になるが、聖女に相応しくない既成事実を作ってでも千尋様に添い遂げようイライザ様が香織様と結ばれた事実を私は知っている、性転換のポーションの存在も弥生様から聞き出している、もしもの時に弥生様を救済する使命も千尋様となら成し遂げられるだろう、協力してくれる筈だ
どちらが男性役を務めれば良いだろうか、楽しみで仕方がない正しい道をから外れてしまう背徳感すら甘美に感じた女性同士でも処女は捨てられるのだろうか?それならポーションに頼る必要はない、弥生様とカーリア様のような関係の方が尊いだろう、身体の火照り感じる月に一度やって来る体調不良のせいかもしれない、人員補充のを要請する手紙を書き上げ使いを本神殿に送り出した
本神殿で女神様の教えを拡げる役目をは果たしながら研鑽を積み司祭になるべく修行している、聖女候補として旅をする中で命を落とすも気が付いた時には本神殿で眼を覚ましていた、女神様の奇跡で蘇ることが出来たのだと知った、私の今までの信仰が女神様のお眼鏡にかない聖女になる道が開かれたのだと歓喜したが蘇ることが出来た聖女候補は私だけでは無かった
元々評価の高いユリア様もダークエルフの刃に倒れるも蘇らせて頂いている、ダークエルフの襲撃を撃退した聖女候補もいるミネア様と言う無名の候補だったが彼女のおかげで多くの命が救われ、ユリア様の身体が持ち去られることなく救援の騎士達が間に合った、それが無ければユリア様では無く自分が聖女に選ばれたのでは思ってしまい自己嫌悪に沈んだ、こんな事だから私は聖女に選ばれないのだと思い知らされた
だからといって自分を高める事を辞める理由にはならない、誰にも知られていない罪だが女神様は知っておられるだろう、蘇らせて頂いた奇跡に相応しい人間であらねば奇跡に選ばれなかった仲間たちになんと詫びて良いのかわからない
実際「何故私の娘が蘇らせて貰えないのか?」と本神殿に怒鳴り込んできた貴族がいるのだ、実際評判は良くなかった様だし実家に忖度したか寄付と言う名の賄賂で聖女候補にねじ込まれたのだろうが、私にその貴族の怒りの矛先が向けられてはたまらない、謙虚に自分を磨いていこう、聖女になることが女神様に仕える唯一の道では無いのだから
その決意を固めた時不意に自分が本神殿で神官になる誓いをした時の事を思い出した、私の家族は北部の平原で細々と家畜の放牧をしてくらしていた、凶作の年に牧草の生育が悪く折角出産した小牛の多くが育たなくて収入が減少したため神聖魔法の素養が高かった私は神殿に預けられた
誓いの儀式でに同じ境遇の者が集まり身の上話をした、その中にミネアという同い年の娘もいた、偶然名前が同じだけのの別人かも知れないが誓いを立てた後に彼女が女神様に捧げる武術の演武を私達と同じ境遇の者に披露してくれた、多くのものにとって再び本神殿に訪れる機会はすくない、本神殿の中では無いがミネアはここで女神様に演武を捧げたのだろう私達がそれを見届けた
誓いの儀式で同時に誓いを捧げた貴族出身の神官の取り巻きの一人が最高司祭の前で演武を捧げていたがミネアの演武の方が素晴らしいと感じたその腕前が確信させたきっとあの時の彼女だ
そしてもう一つの可能性に気付いた、私は使徒様が女神様より授かった霊薬により蘇っている、でその結果神聖魔法の力も上昇する恩恵も受けている、もしミネアの活躍が無ければ被害はもっと増え私の分まで霊薬の数が無かったかもしれない
あの時点で私以上の評価を受けていた聖女候補はもっといたのだ、ユリア様が蘇ることが出来ない状況なら私の蘇りもないのだと、あの時私がミネアの様に成長していたらダークエルフの襲撃を撃退しもっと被害を防ぐことが出来ていたかもしれない、私は自分を磨いていこうと決意は更に深くなった
そんな修行の中で、副司祭様から呼び出しがあった、使徒カーリア様を祀る神殿に向かい魔王軍との和平が破られた場合に備える人員に加わり修業する様にとの使命をたまわった、ダークエルフの魔王ヒルダが冒険者達によって討伐された後に魔王をの座に座ったカトレアと言う吸血鬼が、様子を探るため派遣されたイザベル達を捕らえ彼女背中に刺青を彫り込み親書として送り返してきた
イザベルは私やユリア様と共に蘇らせて頂いた聖女候補の3人の内の1人だ彼女に同行した2人も蘇らせて頂いた神殿騎士の内の2人が選ばれている、彼女達の実力に疑問は無い、魔王は和平の継承すると言っているが信用出来たものでは無い
本神殿の中には和平など破られたに等しい魔王討伐を目指すべきだという声も上がっている、本神殿に帰還したイザベル達も復讐に向け準備を始めた、私にも魔王軍に備えるために声が掛ったのだろう、今すぐ討伐のため勇者を派遣すべきと言う声は少数のため、和平継続に一安心している者が多数だが2年半後の使徒の降臨での和平の行く末を見て即座に行動を起こせるよう備えるべきだという意見が多く聞かれる様になってきている、私のこの意見に賛同しており副司祭様からの使命は渡りに船だ、弥生様やイライザ様から指導して頂ける
その指導は過酷だ人間のやる事では無いと逃げだしてきた軟弱者が言い訳がましい事を言っていたが私と同じく女神様の奇跡を与えられた者は1人として脱落していない、わたしはこの時のために蘇ったのだろう




