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64.勇者と聖女

自らを鍛え、限界を超えるチャンスがやって来た、イライザ様と弥生様が私を含めた聖女や神殿騎士達、そして審問官や魔法使い達を鍛えてくれた、死亡する間際まで追い込まれ回復される、傷の痛みに耐えながら自分の身体の損傷を正確に把握しその状態で出来る最善手をくりだす、精霊使いとして心を落ち着けたまま冷静に精霊を操る


かつての私の様に感情を暴走させてぶつける様な恥ずかしい事は出来ない、最終手段として覚悟のうえで行使する手段として放棄はしないが、そんな状況にしない強さを手にしないといけない


神殿で出される食事は素晴らしい、故郷では口に出来ない食材が使われ私の力になってくれる上にすごくおいしかった、それですら食欲がなくなるような修行だが無理にでも胃袋に押し込んでいく、残そうとしてもイザイザ様が許してくれないが、人間たちの前でハイエルフの恥をさらす訳にはいかない


途中からハイエルフどころかエルフとして見られなくなったが、これは私の実力を認めてくれたからだろう、少し不本意でもあるが喜ぶべきことだ、最初は心配して止めようとしていた私と従魔契約を結んでいる白狼の「スノードロップ」も安心して見守ってくれる


ヒルダ様、いえここではマチルダ様は森の管理で忙しいが時々修行に付き合ってくれた、一度ヒルダ様と呼びそうになって慌ててマチルダ様と言い直したが聖女のユリア様に聞かれてしまったが、弥生様とユリア様が話し合い秘密にしてくれることになった


香織様はイライザ様が修行から離れたあとも手が空いている時に私達に付き合ってくれた、イライザ様が居ないからだろう今までの地獄の様な修行では無かったが神聖魔法で傷を治せるため手加減してくれないのは変わらなかった、そんな中因縁のある彼女の従魔の「早太郎」が「スノードロップ」を口説こうとしたが「スノードロップ」は相手にしなかったこれには安心した


恨みはもう残っていないが気まずさは消えていない、世界樹の力が宿っているからだろうとヒルダ様が教えて下さった、「早太郎」にとって初めての失恋だと言う、黒狼と楽しんでいる姿を思い出して怒りが蘇ったいい気味だ「スノードロップ」を褒めてあげないといけない


いずれ「スノードロップ」にも私自身にも相応しい相手を見つけなければいけないが二人とも寿命は長く急ぐ必要はない、まずは強くなることに集中しよう





「聖女ユリア様、貴女にお願いが有ります」

イライザ様と香織様が自分の住まいに帰られた後に弥生様から声をかけられた


「良く、熱狂や復讐への思いに飲み込まれないままイライザ様の修行を乗り越えましたね」


「そんな貴方にお願いが有ります、私は魔王の力を自らの物として封じています、ですがイザベル達を救うためとは言えにその力に手を付けました、そんなつもりは有りませんがその力に溺れる可能性は有ります、そんな最悪の時は貴女が私を救済してください」


「私の力はイライザ様や香織様に遠く及びません、修行にも付いて行くのがやっとでした、私ではその役目を果せないでしょう」


「確かにイライザ様も香織も強力ですが個人としての強さです、貴女の強さはパーティを束ねその力を最高の状態に整える事です、イライザ様の修行は個人の強さを引き上げる事が重視されていました」


「これからは私がパーティの連携や集団で一人の強力な個人に対する戦い方を教えましょう、使徒の千秋様は先頭に立ってこれが出来る勇者として魔王討伐を成し遂げました、貴女は後衛として勇者だけではなくパーティ全体を支援して魔王を討伐出来る聖女となれるでしょう」


「戦術や戦略を教え貴女を磨いてあげます、適性を見て魔法も教えましょう、私は聖女だけではなく賢者としての適性も貴女に感じています」


涙が出そうだった、千秋様に蘇らして頂き最高司祭様から聖女に選定された時とは違う喜びがあった、そして見いだされた私の力をその師匠を倒すために使わないといけないかも知れない事が悲しく恐ろしくもあった


強制された修行で強くされるのではなく、自らの意志と覚悟をで強くなろうとした私は一気に成長スピードが跳ね上がった、個人の武術はそれなりだったが神聖魔法の腕前は上昇し、弥生様から才能を見いだされた元素魔法は私の新しい力となった、今なら魔王カトレアの呪いも解呪出来るだろう


イライザ様と香織様の代わりに弥生様が修行の相手をして下さった、時にはマチルダ殿が森の整備の合間に修行を相手を務めてくれた二人とも魔法中心で魔王の役として私たちのパーティを相手してくれる、甘く見ていたマチルダ殿も1人で私達を圧倒した


何度かパーティのメンバーを入れ替えながら挑戦しているうちハイエルフのセシル嬢が「流石ヒル・・イザベル様」と呟くのを聞いた、休息の時間を待ち弥生様に確認したところ彼女は魔王ヒルダが自分を討伐しようと挑んだイザベルを倒し身体を乗っ取っているとの事だ


私を含め聖女候補や神殿騎士を襲撃させたダークエルフの指導者だ許しがたい相手だが、弥生様を含めて話し合い彼女の森の状態を自分の目で確認した、そして彼女がこの世界に来てから今までの戦いを聞き、この後の彼女の生き方を見守ることにした


この世界の安定に貢献している間は私もこの事実を秘密にしておく、弥生様もこの事を知っていたが和平を維持するために認めたようだ、弥生様の力でイザベル達は見逃され和平も引き継がれたのだと知った、弥生様がもしもの時に自分を救済する様にと頼んだのはこの事も理由の一つなのだろう


修行の中で信頼関係が出来た後時期を見て説明するつもりであったと弥生様から謝罪があり、改めて聖女としての使命を果たすよう頼まれた


今思えばヒルダには修行の中で私達を殺す機会は幾らでもあった、彼女は「魔導国」やカミラへの復讐を果し、自らの人生を歩むのであれば彼女は強制されたのではなく自らの意志でこの世界を平和に貢献してくれている、聖女として彼女を導いていこうと決意した


私が彼女を完全に魔王ヒルダから解放しダークエルフの後継者を奪い取るのだ、「勇者香織」に聖女ユリアは必要では無いだろうイライザ様が居られる、私はようやく自分の勇者と巡り合ったのかも知れない、私の「勇者千尋」だ女神様も祝福してくれるだろう


2年半くらい後に千秋様が降臨され魔王軍との和平が更新されるのか戦いになるのかが決定される、もちろん和平が更新されるのが望ましいが、戦いとなるなら魔王カトレアを討伐しなくてはならない、いや討伐するチャンスがやってくる


そうなればイザベル達は復讐戦を挑むだろう、魔王はその復讐心に付け込んでくる、私はイザベルの復讐心をも魔王討伐に向けて逆用されることなく矛先を正しく魔王に誘導し、彼女たちの暴走しそうな熱狂を戦意へと昇華し魔王の暗黒魔法が精神を汚染するのを防がなくてはならない


私は復讐などはしない、かつて越えられなかった魔王の呪いを返し、その力を敬意すら持って分析し、聖女として賢者として討伐するのだ、魔王カトレアが真祖であるなら女神様の奇跡で人間として正しい道に戻して救済しよう、そのうえで彼女に罪を償わせる


もしも私の師匠である弥生様が道を誤ることが有ればその経験は私にとって大きな価値があるだろう、失敗しても構わない実験だ気負わずに行こう魔王カトレアの討伐は最悪の事態に対する訓練に過ぎない、そう言えるように私は自分を鍛えていこう

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