63.魔王カトレア
「ユリア様、イザベルを助けて下さい」
共に弥生様の元で修行中の神殿騎士達が駆け込んできた、彼らに急かされ神殿の入り口に急いだ、そこには女性の石像を担いだ二人の男が今にも倒れそうな状態で疲労を見せながらも必死に立っていた
「フレデリック、ポール、何が有ったのです?」
つい疑問を口にしたがかけよるうちにその石像がイザベルの変わり果てた姿だと判った
「みんな二人を手伝ってイザベルを下ろしてあげて、すぐに石化を
「お待ちください、イザベルを地面に下ろしても、私達二人以外が触れても粉々になってしまうのです」
フレデリックが必死に私の言葉を否定した
「このままの状態でイザベルに触れずに石化の呪いを解いて下さい」
これはポールの言葉だ
「解かりました、すぐに呪いを解きます」
女神様に祈りを捧げ神聖魔法を唱えるが呪いが強く私には解除することが出来なかった
「誰か弥生様を呼んできて」
イザベルを支えているフレデリックとポールの疲労を癒すため神聖魔法を唱えたがこの効果も弾かれた呪いを受けているのはイザベルだけでは無いようだ
この呪いをかけた相手はすぐに直感で判った、新たに魔王となったカトレアという名の女吸血鬼だ、彼女が魔王を継ぐと宣言した際に真祖だと本人が語っている、今まで何処にいたのかも分からないが、娘を失ったカミラでさえ彼女が魔王を継ぐことを認めている
ハイエルフの女冒険者が率いるAランク冒険者パーティが魔王ヒルダを討伐したためだ、本当に余計な事をしてくれた、仲間を失いながらも魔王討伐を成し遂げ、故郷のハイエルフの森から世界樹の若木を賜って自分の森をこの神殿の近くに作り上げようとしている
同じく魔王軍と戦う仲間のハイエルフとは言えこの事を許している勇者香織の心が理解できない、和平のために交わした姉妹の契りではあるがヒルダ姉さんと呼び親しくしていたと言うのに
イザベルたちは本神殿から魔王カトレアの実力を探るべく派遣された審問官の影の部隊に所属している、三人共私と同じく聖女選定の旅の中でダークエルフの手により命を落とした、イザベルは聖女候補でフレデリックとポールは神殿騎士だった、私と同じく奇跡で蘇ったが今は表向きは死亡したことにして審問官として魔王軍と戦う道を選んだ者達だ
私の神聖魔法がきっかけになったのだろう、呪いが発動しフレデリックとポールの疲労が一気に進みだした、このままではもうイザベルを支えつつける事が出来ない、魔王の残酷で陰険な手口に怒りを感じるとともに自分の力が及ばなかった事が悔やまれる
そんな中弥生様が到着した、エルダーリッチを救済し聖女として認められているが彼女は神聖魔法が得意なわけではない、香織様とイライザ様がハイエルフに付き合って森の整備に出かけているのが致命的だ、あの疫病神のせいでイザベルが救えない
そんな絶望を弥生様が救ってくれた、石化の呪いを上書きする事でフレデリックとポールの身体を石に変えて時間を稼いでくれた
「緊急事態のため魔王の力に手を染めてしまいましたがカーリアも許してくれるでしょう、念話で香織とイライザを呼びます、2人が到着するまでこれでもってくれるでしょう」
すぐに二人が到着し無事香織様がイザベルたちの石化を解除してくれた、そこで魔王カトレアの邪悪さと悪意を再認識した、イザベルの背中に刺青でメッセージが残されていたのだ
「魔王の座と共に使徒がお膳立てした和平も継承してあげましょう、このようなネズミを無事に返すのは今回限りです」
一生残るであろう刺青をイザベル簿身体に彫り付け最後に「魔王カトレア」と署名まで彫っている、これだけの仕打ちをしておきながら無事に返すとはどの口が言うのか
「良い趣味をしているな、手紙は本神殿に届けなくてはいけないだろう、香織、神聖魔法で皮膚の再生も出来るな?」
返事も待たずにイライザ様がナイフを取り出しイザベルの背中の皮を剥ぎ取った、その傷を香織様が傷跡一つ残さず癒して見せた
「イザベルと言ったな悲鳴1つも上げないとは良い根性だ、良ければ私が鍛えてやる、ユリア達も一緒だ、弥生様みたいな優しい指導では魔王に礼が出来ないだろう、命がけでなければ身に付くものも身に付かない和平など破棄されたと思え!」
この後地獄の様な訓練が待っていた
イライザ様のお腹に子供がいる為か、格闘術では無く剣で襲われる、必死で致命傷を避ける騎士たちの傷を癒しながら自分もメイスを持って戦った、手足が切り落とされても、死にかけても香織様が全て癒してくれる、休憩すらほとんどない、食欲が無くても食事を残すことも許されなかった
どこが勇者香織様と聖女イライザ様だと言うのか、役割が反対だ、私達が慣れてくると訓練相手が増やされた、勇者イライザと拳聖香織に襲われる、二人は何人半殺しに出来るか勝負しているのだ最初にこの神殿に来た神殿騎士や審問官の半分が脱落して本神殿に逃げるように帰って行った
「そろそろ私達二人の相手にも慣れてきたみたいだな剣士で精霊使いのマチルダを追加するか」
イライザ様が恐ろしい事を言っている
「こちらは人数が半分になっているのに、そちらが5割増しではあんまりです」
流石に泣き言を言ってしまった
「そうだな、せっかく精鋭が残ったのに5割増しでは不満だな、魔法使い役を弥生様にお願いするから許してほしい、聖女ユリア様に失礼だったな、やる気が有って素晴らしい」
イライザ様が悪意も無く真剣にうなずいている、香織様も止める気配が無い、この地獄は心から私たちの成長を目指した善意のものだと分からされた、幸いなことに自分の森の管理に忙しいようでマチルダ殿は参加せず、弥生様は手加減をして下さった
そんな中イザベルはやる気を持続しているフレデリックとポールもそうだ、ルイーズとオスカーの姉弟も修行に付いて行っている、ハイエルフの女冒険者が修行のために連れてきた族長の孫娘もそうだ、心が折れそうになるが聖女に選定された私が逃げる訳にはいかない
魔王への備えはイライザ様と香織様の2人が居れば十分だと思ってしまう、この地獄はイライザ様のお腹が大きくなるまでの3か月間続いた
「この修行の成果を本神殿に持ち帰り仲間を鍛えましょう」
イザベル達三人はこの地獄を乗り越えたようだ敵わない、ただ耐えしのいだだけの自分が恥ずかしいと思う位には私も鍛えられたようだ
この3か月の間、弥生様、イライザ様そして香織様の力を頼り、神殿への巡礼者や病や呪いを解いて貰いうために多くの信者たちが訪れた、そのほとんどが香織様を聖女イライザだと思って病を癒され呪いを解かれて喜んで帰っていく
始めの内は香織様も間違いを手訂正していたが拳聖として私たちの修行の相手に加わった後くらいからは諦めて聖女イライザとして過ごされた、その間だけ私たちは巡礼者にとっての勇者香織様と適切な力に調整した弥生様を相手の修行で一息つくことが出来た




