6.駆け落ち
自業自得だが大変忙しくなってしまった、女神様から仕事を取り上げた為だ
『異世界転生』『異世界転移』異世界からの『魂召喚』の三つだけでよかったのだが、女神様が拗ねてしまい既に此方に存在している転生者や転移者・召喚済みの魂に対する指示やサポートの仕事まで放棄している
言ってみればたちの悪いストライキだ
これまで私の仕事だったこの世界の勇者たちのサポートも続けなくてはならい以上仕事の負担はざっくり倍にになってしまった私の他にも使徒として働いている者もいるが各々仕事を抱えており無理も言えない
新しい使徒を増やす事は女神様にしか出来ないのだがこの状況でお願いしたらせっかく取り上げた仕事を返せと言うに決まっている、返す訳にはいかかない、こんな状況の中で問題が起きようものなら恩着せがましく
「まだ『チアキ』にはは早かったか期待していたんけどね~、しょうがないから手伝ってやろう」
などと説教した事に対する仕返しにネチネチを嫌味を言いながら自分の好きな仕事だけをするのが目に見える
全ての責任を押し付けられてはたまらないから女神様の責任となるよう状況報告のレポートも提出しておかなければならない
そんな中、放置出来ない問題が発生した、問題の原因は女神様の言うところの「くそ犬」最近こちらにお迎えした『早太郎』だ彼は大変優秀でフッワークも軽く様々な場面で活躍してくれていたのだが直近の仕事でハイエルフの精霊使い兼ビーストマスターである少女と彼女の従魔である白狼の救援を依頼した
快く引き受けてくれ、戦闘となっていた敵のダークエルフと使役されている黒狼への対処を見事にやってのけたが到着した時点で白狼は彼女を庇いすでに亡くなっていた
ダークエルフの喉を噛み切り服従の呪いで使役さえていた黒狼の呪いを解呪し戦闘は終了したが幼い時からと共に育った白狼の敵とみなしとどめを刺そうと動けない黒狼に矢を放つ、その矢を横から飛び込み空中で咥えて止めた
「フェンリルさん助けてくれたことは感謝するけどスノードロップ敵なの邪魔しないで」
精霊語で少女は訴えるが
「服従の呪いは解呪した、相手に戦意は無いとどめの必要は無い」
と早太郎は譲らずにらみ合いになった、にらみ合いはしばらく続いたが
「どうしてもとどめを刺したいなら彼女の傷を癒そう戦闘不能にしたには俺だ、君の傷も癒すお互い万全な状態での決闘であれば手は出さない俺が見届けよう」
この世界の倫理観とはズレている早太郎の正義感を前に少女は泣き出した
「どうして邪魔をするの!私たちの味方じゃないの?わたしじゃ無傷の黒狼に勝てない」
「なら力と腕の磨いて出直せ、君には十分な寿命があるだろう」
と少女の涙の訴えに対しても冷たい返事を返した
「だったら貴方も敵よ」
血走った眼で早太郎越しに黒狼を睨みながら自分の残った魔力をつぎ込み風の精霊魔法を放つが早太郎が同じ魔法をぶつけて相殺した、その光景を呆然とした見つめながら魔力も精神力も使い果たして気絶した
早太郎はそのあと黒狼の傷を癒したあと気絶した少女と白狼の遺体をハイエルフの森の最深部世界樹の根本まで届けた
ここまでだったら問題はそこまで大きくならなかったのだが悪いことにこの少女はハイエルフの族長の孫娘っだった目を覚ました彼女は部族の仲間を集め敵討ちの為に戻ってきた
そこで彼女が目にしたものは愛し合う早太郎と黒狼の姿だった
彼女の激怒は仲間に伝染し20人のハイエルフが早太郎に襲い掛かったが少女以外の仲間を戦闘不能にし、へたり込み呆然とする彼女を残し早太郎は黒狼を連れてその場を立ち去った
この事態に気の付いたハイエルフの族長が彼女たちを回収した、死者は無かったがあまりの悲しみとショックに彼女の認知は歪んでしまい早太郎がダークエルフ・黒狼と手を組み、共に育った白狼であるスノードロップを殺したと思い込んだ、泣きながら祖父にそのことを訴えるが族長にとってにわかに信じられる事ではなかった、最初の戦闘の内容は孫娘の証言しかないため思い込みとしても、早太郎と黒狼の愛の営みは今回の敵討ちに参加全てのハイエルフが目撃していた為半信半疑いったところだ
この世界に於いてフェンリルは女神の使いとされる、早太郎の魂が入っているフェンリルの肉体は今まで勇者たちの魔王討伐に同行したことがありよく知られている、毛皮の模様で個体の識別も出来るしそもそも個体数も少なく族長など魔王軍との戦いで共闘しているそのためフェンリルが普段ねぐらにしている神殿の場所もしっていた
族長は真偽の確認の為息子を神殿に遣わしたが使者となった息子にとって今回の騒ぎの中心にいる少女は愛娘だ、彼女の言葉を信じ真偽の確認など必要とは思っていなかった、その為神殿で出迎えた司祭に対し猛抗議をおこなった、ハイエルフを含むエルフのほとんどは精霊信仰であり女神を信仰している訳ではないが魔王軍に対して共に戦う同盟者と言った立ち位置だ怒っている彼もフェンリルを引き渡せとまで言う程冷静さを失ってはいなかったが黒狼の引き渡しは譲れない要求だった
対応した司祭は黒狼の引き渡しもしくは討伐を約束した、勇者が残したフェンリルと連絡を行う神具があり、急いで早太郎に黒狼を引き渡すよう要請したがこれを早太郎は拒否した、何度も繰り返し説得を試みたが最後には連絡すらつかなく無くなってしまった
しびれを切らした息子は黒狼の問題が解決しない限り魔王軍に対する共闘はしないと宣言して引き上げていった、この共闘にはエルフの国や世界に散らばっているエルフの冒険者も含まれる
現時点では魔王が不在な為大きな戦は行われていないし冒険者たちに対しても強い強制力をハイエルフが握っているわけではない為人間たちとパーティを組んでいる冒険者がすぐに引き揚げることは無いし信頼しあっている仲間がいるものは強制されても残ってくれるだろうが長期的に見て今後の悪影響は多く解決しなければならなかった
使徒となっいている『チアキ』日本での名前「三澤千秋」はフェンリルとここで出会った、『白夜』と名付け共に勇者として魔王討伐を成し遂げた、身体を引き継いだ早太郎も普段この神殿をねぐらにしていた




