5.お礼2
着せ替え人形にされた翌朝いつもの散歩に出かける、有紗ちゃんの家に前に着いたが有紗ちゃんはいない様だ外で遊ぶことが禁止されているのだろう、インターフォンを鳴らせば歓迎してもらえるだろうが私の望んでいない歓迎までされてはたまらないまた市中引き回しにされるかもしれない今日はやめておこう、そのうち早太郎の奥さん候補が見つかれば連絡が来るだろうしそれまで待ってもいいだろう
いつもの散歩コースが終わりそうなときスマホがなった知らない番号からだったが出てみることにした
「犬飼香織さんの番号でまちがいないでしょうか?」
通話をつなぐと相手から先に話しかけてきた女性の声だ
「はい、そうですがどちら様でしょう」
「失礼しました、先日ご迷惑をかけてしまいました佐々木と申します、番号は弁護士から聞きました」
先日の事故の相手の様だ示談したとはいえ弁護士が個人情報を教えるのはどうかと思う
「いつも通っている道でたまたま見かけたもので直接お詫びとお礼を出来ればと」
周りを確認すると歩道際に軽自動車が停まっている、私が車の側まで近づくと窓を下ろし手を振ってくれた
「私の方から飛び込んだのが実際のところですし気にされなくて大丈夫ですよ」
「貴女が飛び込まなければワンちゃんをひき殺してしまうところでした感謝しています」
「それならもうすぐ散歩が終わる所で朝食がまだなんですそれをご馳走して貰えば十分です」
「それだけでは不十分と思いますがまず朝食をごちそうしましょう乗ってください」
「失礼ですが少し待ってもらえますか?」
スマホを取り出し弁護士さんに電話を掛ける
「もしもし犬飼です、先日の事故で運転さられていたとおっしゃる方が直接お詫びとお礼をしたいとの事なのですが間違いないか確認したくてお電話しました、お名前を教えていただけないでしょうか?」
「わかりました、本当は問題になるかもしれないのですがそういう事情でしたらお教えします『佐々木聡美』さんです」
「有り難う御座いました、早朝に電話してしまい申し訳ありません」
お礼を言い通話を終える、名前を女性から聞き確認しところ本人で間違いないようだ
「ごめんなさい、相手が女性でも初対面の方の車に乗るのに抵抗があって」
「大丈夫です、気にはしていませんこちらこそ突然お誘いしてすいません、その反応は当然のことだと思います」
「少し待っていてください家に早太郎を送ったらここに戻ってきますから時間は大丈夫ですか?」
大丈夫との事で早太郎を連れて一旦マンションに戻る
部屋に入ると早太郎から『念話』が来た
〈さっきの女、悪意はないが何か使命を持って近づいて来ている様だ、危険は無いと思うが一応伝えておこう〉
〈ありがとう気をつけるわ〉
よかった、話をすることが出来そうだ私の関った事故が一部で話題になっている
少女を犬が助けて車に跳ねられその犬を美人の女子大生が助けて跳ねられた、そのせいで二日間意識を失ったが無事意識が戻り大した怪我もない
本人が知っているかは分からないがネットニュースになり掲示板では彼女の空手の大会の画像や動画が投稿されており『美人JDリアル異世界転生』などと書かかかれている
仕事先でうっかり自分が事故の相手だと上司に話したのが失敗だった
「佐々木!すぐに連絡を取ってこい次のアニメの宣伝に使える、よそに遅れるなうちが押さえるんだ!」
「うまくいったらボーナスを出す、ただし失敗したらわかっているだろうな!」
酷いむちゃぶりだ、何とか弁護士から連絡先を聞き出して今に至る
「お待たせしました、ファミレスとかでお願いしたいです、昨日肩がこる店に連れていかれて落ち着けるところがいいんです」
そう言う彼女を車に乗せて発進する
「この車は代車ですか事故の時はもっと大きい車ででしたよね」
「そうなんですよ少しボンネットが凹んだだけなんですけど示談にしていただいたお陰で保険がおりたんで助かりました」
彼女の気遣いに正直に答える、これが上司なら「車両保険かけてなくて大変なんですよ」とか言って説得の武器にするだろうが私には出来なかった、説得に失敗してこの事がばれたら怒られるだろう
そうしなかったのは別の武器を見つけていたお陰だ、彼女のスマホケースの中に漫画のヒロインのステッカーが入っているのが見えたアニメ化もされている人気作だ、運の良いことに次のアニメに出演が決まっている声優がそのヒロイン演じている、お礼の名目で彼女をアフレコに招待すればいいだろう一話にだけ登場するキャラクターにゲスト扱いで声を入れて貰ってもいい、宣伝になるし彼女も喜んでくれるだろう実にWin-Winな良案だと思う
感謝を伝える為と恩を感じて貰うためにファミレスでも高級路線のチェーン店を選び駐車場に車を停める
早朝の為すぐに席に案内して貰えたすべてが順調だと感じる、こんな時に油断をすると大失敗をするのがお約束だ気を引き締めよう、彼女はサラダチキンと温野菜のスープを注文した、私は普段から朝食を抜くことが多く今日も食欲が無かった為ホットコーヒーだけだ、タイミングを計りスマホのステッカーのヒロインの事を話題に出しアフレコに招待すると切り出した
「嬉しいですけど、そんなことして貰って大丈夫ですか?」
「大丈夫、こう見えて社内でも力があるのよ」
そんな力などあるはずも無いが調子に乗って答えてしまった、今回の様な事情もなく関係者以外を勝手に招待したら最悪クビになる
「流石に上司に許可を取らないといけないけど一話限りの脇役で良ければアフレコに参加して貰うことも可能だと思うよ、エンディングロールに名前を載せる事も出来るかもしれない、本名でもいいかな?芸名でもいいよ」
「本当に力があるんですね、それなら『位階香』でお願いします本名の『犬飼香織』からイヌカイのヌと香織の織をぬいて名字の読みに別の漢字をあてたんです、大学では空手中心の生活なんですけど演劇サークルにも所属しているんです」
「いろんな経験をしているたいだねもっと君の話を聞かせてくれたら嬉しい」
「つまらない話ですけど、小学生の時は柔道をやっていたせいで本名の『犬飼香織』から『犬の匂い』とか陰口を言われて嫌だったんです、このヒロインへの憧れのあって中学から空手に転向したんです」
連絡先を直接交換できたし、フレンドリーに話せる関係もつくれた、アフレコに招待するついでに宣伝に協力して貰う約束を取り付ける事にも成功した、大成功と言っていい成果だ、このまま上司に報告すると手柄を奪われ一回酒を奢ってもらうだけのショボいボーナスで誤魔化されてしまう、そのボーナスには10%も源泉徴収どころではない上司と一緒の酒と言うデメリットまでついてくるボーナスなどでは無い罰ゲームだ、折角のチャンスだししっかり自分の手柄にしないと
「やりました彼女との約束を取り付けました、アフレコにも参加していいと返事をもらいました」
上司ひとりではなく同僚や直属の上司より地位の高人間のいる前で大声で報告する
「どうしたんですか?ネットニュースで話題の『美人JDリアル異世界転生』『犬飼香織』さんですよ部下の手柄を褒めてくれてもいいじゃないですか、いつも指導いただきありがとうございます」
黙っているので追い打ちをかけると悔しそうにしている、とても気持ちがいい




