4.お礼1-2
「お義父さま、私達からもお礼をしたいので6時まで香織さんをお借りして大丈夫でしょうか?場所と時間をを教えて頂ければそのまま私たちが店まで連れて行きます」
「そうだな、私も準備をしよう6時までお前たちに任せる」
物の様に私の自由時間が奪われていく、そして準備とは何の準備だ、私の城の外堀が埋められていく、頼みの援軍が役に立たない、裏切る恐れのある母は友人と旅行に行きそのまま神戸に帰ると夜のうちにメールが届いていた、城内に居ないのは安心材料だがそのうち敵軍に合流するだろう
早太郎と有紗ちゃんをこのまま家に残して彼女の両親の車で連行された、何処に連れていかれるのかと心配していたらしばらくして有名デパートの駐車場に車がとまる、
「前原様お待ちしておりました」
駐車場までスーツの店員さんが男女それぞれ一名づつ二人で私たちを出迎え、そのまま入ったことのない部屋に案内された
「お義父さんは良かれと思ってドレスコードの厳しい店の予約を取ると思うから衣装をプレゼントさせて」
「義父のお気に入りで私の義妹になる予定の娘なのドレスや靴などを一式揃えたいの持って来て頂戴」
「真理、僕は喫茶店で仕事をして来るよ君も香織さんのドレスに合わせたドレスを選ぶと良い父や香織さんのお父さんを喜ばせたいし驚かせたい、後は頼んだよ」
幾らするか分からない服を店員さんが次々持ってきては3人で私を着せ替え人形にして楽しそうにしている専門の店員もやってきてメークもされた、2時間ほどしてようやく着せ替え人形から解放されたが最後に着ていたドレスのまま車に戻りつぎは高級ホテルのフランス料理店に連れていかれた景色の良い個室に通されるが美味しいは筈の料理も緊張と途中からマーナー教室の様な空気になった為に味が分からない
どうしてこうなったのだろう、こんなことなら早太郎を婿入りさせればよかった『念話』でいつでも話は出来るし会いに行っての構わないというはなしだった、お礼として希望しなくても結婚相手も見つけてくれただろう、頼めば子犬を一頭貰うこともできたはずだ、スポーツジムの年間利用権でももらえばよかったのだ、こちらの望みをしっかり伝えるべきだったのに格好つけて背伸びしたせいでこのざまだ、皮肉なことに履きなれないヒールの高い靴もドレスとセットでプレゼントされた、この地獄が善意からのものだというのがたちが悪い、そしてこの地獄からは最短でもまだ半日抜け出せない
ようやく味の分からないフルコースを食べ終えた、二人に連れられて店を出るが会計をしている様子が無い大丈夫なのだろうか?店員も止める様子はないみたいだ当たり前の様にとおしてくれる
「この後もう一度デパートに行って別の服を選びましょう、そのあと美容院の予約もとっているから丁度6時くらいになるわね」
嬉しそう話しかけられた
私にとっては着せ替え人形の刑2時間の判決を告げられたようなものだ、ドレスという名の囚人服を着せられ、ハイヒールという名の足枷、メイクと美容院の鉄仮面まで被せられた後処刑場に送られる
『結婚は墓場』というのな男性目線の言葉だが今の私にとってもそう思える
駄目だ、前向きに考えよう、客観的に見れば良縁で玉の輿だ相手は次男のはずだし婿に来てもらえるという話で義両親と同居する義務はない、最高だ
有紗ちゃんの祖父母・父を見る限りイケメンで身長も高いはず探そうと思ってもそうそう見つけることのできない優良物件だ悪い話ではない
私は勝ち取ったのだ、落城して処刑される訳じゃない「現実からの逃避」なのか「現実への逃避」なのか?回らない頭で「現実逃避」をしているうちに6時なっていたその間の記憶がはっきりしない「ドナドナ」が頭の中に流れている
そして父と有紗ちゃんの祖父と両親と私の五人でホテルの高級和食料理店の個室で話しをしながらの食事が始まった、海外からの観光客も狙ったテーブルで和食が楽しめる店で老舗料亭が出店してる、箸でもフォークやナイフでも食べる事が可能でドレスコードも厳しくは無いようだった、私が着せ替え人形にされた時間はなんだったのだろうか?
「美人過ぎて誰だかわからなかった、最初は先方の娘さんが来ているのかとおもった」
と父は私の姿を着て驚きそして褒めてくれた
「私の眼は正しかった息子も気に入るだろう」
有紗ちゃんの祖父は喜んでいた
「お義父さん私のセンスも褒めてください」
一番喜んでいたのは真理さんだ
有紗ちゃんの父だけがポーカーフェイスを貫いている被害者は私だけではなかったようだ
そうしているうちに私も落ち着いてきて料理が美味しく感じられるようになってきた、話は父と有紗ちゃんの祖父の間で盛り上がった
「息子さんも柔道を続けておられるのですね、ぜひ一度手合わせをお願いしたい」
「「娘が欲しいなら私から一本を取ってみせろ」と言ってみたかったのです」
「自分より強い男になら娘を任せることが出来る」
アルコールも入って父は上機嫌だ
「今の私の息子では少し厳しい知れませんが、そうですな私の還暦までには出来ると思いますよ」
「出来るまで何度でも挑戦させてやってください、まだまだ未熟でも私の教育で根性は鍛えたつもりです」
謙遜しているが息子の事を誇っているようだ
「貴女の娘さんには「愛犬を譲ってくれ」と無茶なお願いをしてしまったのですが、毅然と私の要求を断り双方に理の有る提案を返してこられた、それで気に入ってしまいました、貴方の教育の賜物と思います」
しっかりと父を褒める言葉も忘れない、援軍は全滅間近な様だ
既に「会ってもみないと分からない」と言ってしまっている以上会わないわけにはいかない、実質的には見合いの約束が出来ているようなものだ、抵抗手段は「私より強い相手じゃないと嫌です」くらいしか残っていないが勝てるかどうかも分からないこれは見合いまで残しておこう、それにそれだけの優良物件なら既に彼女がいてもおかしくない、むしろいる方が普通だ、いないなら別の性癖があるとしか思えない、下手に期待して裏切られてはたまらない
そんなことを考えながら話の聞き役に徹しているうちに9時になり顔合わせの食事会は終了した、車で送ってもらい有紗ちゃんの家で着替えようやく囚人服から解放された、自分の部屋のスペースの制限もあり手入れの仕方も分からない為、そのまま預かってもらうこととなった、そうしてようやく早太郎を連れて自分のマンションに帰ることが出来た




