3.お礼1-1
翌朝早太郎と散歩をしていると有紗ちゃんがご両親と一緒に彼女たちの自宅の前で待ってくれていた、
いつのも散歩コースに家がありよく出会った早太郎を撫でてくれる、いまも撫でながら「ありがとう早太郎も無事でよかった」と嬉しそうだ
「この度はありがとうございました、おかげで有紗も無事でした」
とご両親からお礼の言葉を頂いた
「私の父が是非ともお礼がしたいと申しておりまして、犬飼さんの喜ばれる物かあれば教えてはいただけないかと」
有紗ちゃんの父が私に尋ねてきた
「遠慮しないで仰ってください、義父も犬飼さんか喜んでくれれば喜ぶと思います」
「お恥ずかしい話ですか、義父は自分の気前の良さや周囲への影響力を見せるのが好きなのです」
こちらは有紗ちゃんの母からの言葉だ
「良かったら家に上がってください父から「どうして外で遊ばせたのか!」と言われてまして、その際に有紗が「早太郎と会えなくなるのは嫌だ」と泣き出してしまってうちの庭で遊ばせてやりたいと」
断り切れず家に上がることとなった
応接間に通されると50代位だろうか紋付袴をまとった貫禄がある男性が待っていた彼が有紗ちゃんの祖父なのだろう、隣に着物を着た上品な女性が座っている、彼女が祖母という事か?40代位に見えるが有紗ちゃんや両親の年齢を考えると50歳以上でないと計算が合わない
そんなことを考えていると、祖母と思われる女性からソファーを勧められた
「今回の事には大変感謝している孫娘の命の恩人だ、お礼をさせて欲しい何でも言ってくれ、その代わりと言ってはなんだが貴女の愛犬を譲っては貰えないだろうか?」
「有紗も喜ぶだろうし何時でも会いにきてくれて構わない考えてはくれないだろうか?」
「少し考えさせてください」
有紗ちゃんの祖父の言葉は柔らかいのにすごい圧力が感じられた、そこまで悪い話ではないし少し前の私ならその要求をそのまま受け入れていだろう、それでも女神との交渉した経験が私を支えてくれたのか落ち着いて返事が出来たそして『念話』で早太郎と相談する
「申し訳ないですが早太郎をお譲りする事は出来ません」
私の返事に表情こそ変わらないものの空気が変わる
「何とか前向きに考えてはいただけませんか有紗の為と思って」
何かに怯える様な声で祖母が話しかけてくる、夫の怒りを感じているのだろう穏やかにこの場お納めたいからでた言葉に聞こえる
「私の返事は変わりません、ですが有紗ちゃんと早太郎・私・皆さんの為に提案があります、併せて頂きたいお礼が決まりました」
「言ってみろ、聞いてやる!」
私の返事に対して怒りがこもった言葉が祖父の口から洩れる
「では、先に頂きたいお礼から、早太郎の結婚相手を探してください、出来れば早太郎と同じ秋田犬がいいです、有紗ちゃんを助けたのはうちの早太郎です、結婚相手が見つかれば早太郎も喜ぶと思います、もちろん早太郎が気に入る相手じゃないと駄目です」
「そして提案です、見つけた結婚相手はこの家で飼ってください、結婚生活は通い婚です私が散歩の時に連れて来ます、子供が出来たらその子たちも飼って下さいそうすれば有紗ちゃんも嬉しいと思います」
私の話が進むにつれ凍っていた応接間の空気も少しずつ緩んできた、私の勝ちだと感じる、あの時女神はこんな気持ちだったのだろうと思っていたら思いもしない反撃がきた
「面白い!気に入った!」
「その提案を呑もう、そして一方的にこちらの要求の押し付けようとしたことを詫びよう」
「だが、それだけでは貴女に対してのお礼としては不十分だ」
「貴女の結婚相手もさがしてあげよう、ちょうど私にはもう一人息子いる当然独身だ今は海外だがしばらくしたら帰国する予定だ、お互いにとって悪くない話だと思うが?」
提案だけではなく私も気に入られた様だ、さすがに下手な返事は出来ないだろう、断ってしまうと相手の面子が立たない、本気で怒らせるかも知れない
「光栄なお話ですが、息子さん本人にお会いしてからでないと返事は出来かねます」
少し間を置き
「そして1つ呑んでいただかなくてはならない条件があります、仮に結婚するとしても私は一人娘です、婿に頂くことは可能でしょうか?」
時間稼ぎになればと、そして婿入りはハードルが高いだろうと考え回答した
「構わないとも後継者は此処にいる、問題は無い、私と互角に話が出来る者はなかなかいない、本当に気に入った!息子をよろしく頼む!」
私の遠回しな断りの返事は乗り気であるととられてしまいさらに追撃が来た
「それでしたら私の父に会ってみますか?、ちょうど事故の事もあり東京に出てきていおりますので」
流石に怖くなってきたこのままでは押し切られると思い援軍を呼ぶことにした、親バカな父なら断ってくれるはずだ、母には知られる訳にはいかない喜んで裏切り敵にまわる気がする
是非とも会いたい今からでも構わないと言うので私から父に電話をかける
「お父さん、話をしたいという方がいるので聞いてもらってもいいかな?」
「ちょっと待ってくれ、いま警視庁だから使っていない部屋を借りて掛けなおす」
「それじゃ直接相手に出てもらうから待っててもらうね」
しばらくすると着信音がなったので電話をつなぎスマホを渡した
「もしもし、忙しい中時間を頂いて申し訳ない、縁があって貴方の娘さんと知り合ったのだがとても気にいってしまったんだ、私の息子を紹介したいと考えているのだがその許可を貰いたい」
早く断ってくれることを期待して待っていると流れが予想外の方向に進んでいく
「勤務先は違うが息子の大先輩とはただの偶然とは思えない運命を感じるよ」
「今日の6時に車を手配させよう警視庁まで迎えにやればいいかね」
「娘さんもこちらで迎えを用意する楽しみにしてるよ」
父の言葉はわからないが私の望まない方向に進んでいるようだスピーカーモードにしていればよかったと思うがもう遅かった通話が終わり返されたスマホを受け取る
「学生だと父君から聞いたが今日の6時から時間を貰いたい、勝手に予定を入れてしまって申し訳ないが大丈夫だろうか?」
「大丈夫です、よろしくお願いします」
今更断れない、そう返事をするしかなかった




