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2.女神の厄日

「女神様おめでとうございます、思い通りに上手くいったようですね」

「上手くいってなどおらんは!『チアキ』いつから見ていた?」

信頼している使徒の言葉に不機嫌さを隠さず返す


「土下座の話あたりからです、何か不本意な事でもありました?私からは全て女神さまの手の上で話が進んでいる様に見えましたよ」

「そうか、ならそう見えるのも仕方がないな、不本意も不本意でな、私が欲しかった魂を逃がしてしまった」

「犬の魂が欲しかったんじゃなかったんですか?いつもとは違う変わったチョイスで変だと思っていたんですよ、私が勇者として呼ばれた時より強力な魂じゃないですか」

「ああ強力だとも!おかげで酷い目にあったわ!」

話しているうちに屈辱の記憶がよみがえる、気分がわるくなり使徒に怒りをぶつけてしまった


「そうだったんですね、気分が悪いなら何か飲み物もってきましょうか?」

いつものやり取りで慣れている会話だ、からかう様に言ってくる、交渉中に散々飲み食いしている場面も見ているはずなのにこの調子だ


「すまん八つ当たりしてしまったな、下がってくれ」

「了解です、用があれば呼んでください」

そう答え使徒は姿を消した


途中までは順調だった、神力を使い目をつけていた娘の前で事故を誘導し少女を車道に誘い出した、娘の性格は把握していた間違いなく飛びこんで少女を助ける、そして『異世界転生』は成功していたはずだった

そこに邪魔が入った、娘の飼い犬が先に飛び込み少女を助けそのあと娘が飼い犬を助けた、何とか娘の魂だけでもと追加で神力を使い気絶させこちらに連れてきたが一緒に犬の魂までついて来た


「ご主人様をどうするつもりだ?お前の好きにはさせんぞ『妖怪変化』!」

倒れる娘の前に立ちふさがり吠えてくる


「女神に向かって何たる言い草だ犬っころ!お前の魂など消してやる」

簡単に消せると思って神力をぶつけたが何の効果も無かった、そればかりか私の知らない力で床に押さえつけられ、息苦しくなり意識が消えそうになる


「待ってくれ話を聞いて欲しい」

何とかそう言うと押さえる力が弱くなり床に手をついて息が出来るようになった


そのあとその姿のまま事情を説明した

現時点で魔王は行方不明だがそのため逆に統率の取れていない魔王軍が好き勝手に暴れ、かえって手が付けられられなくなっていること

魔王を討伐するため『魔導国』というこの世界の国の魔術師達が『異世界転移』で連れてきた勇者の行方も分からないこと

女神としてこの世界を救う魂が必要なことなどを正直に話した

噓をつくと酷い事になるとなぜか確信していた


「詳しい事を話せ、土下座しながら話すなら聞いてやろう」

嫌々ながら土下座をし、そのまま詳細を説明した

娘に話をさせてくれないかとお願いした


「認められない!俺がこちらの世界の状況を確認してご主人様の露払いを済ませたなら考えてやってもいい」

それが犬からの返事だった、そのあと方法を相談し何とか話がまとまった、そうこうしていると娘が目覚めそうになる


「お願いです、貴方のご主人様にこの姿を見せるのはお許しください」

床に額をつけ懇願すると立ち上がることを許してくれたボロボロの姿を見せるわけにはいかないと光で視界を隠し急いで着替え髪を整えた

娘と話をするときに女神としての威厳を見せる事も許可してくれた


そのあと茶番劇を開催した、犬がおこらない程度に娘に八つ当たりをしながら交渉が終了し、ようやく一息ついたところに私の使徒が声をかけてきた「土下座の話あたりからです」と言われた時はヒヤッとしたが私の土下座を見られた訳ではない様でほっとした


しばらく時間がたち落ち着いて冷静に考えたが女神である私が犬如きに負ける理由がわからない、『チアキ』なら向こうの世界の事がわかるかもしれないと『念話』飛ばすとすぐに来てくれた


「あのくそ犬の強さの理由がわからないんだよ、なにか心当たりは無いかい?」

「なにかもめたんですか?」

質問に質問が帰って来た


「娘に話をしたいと言ったが邪魔をされてな、力ずくで言う事を聞かせようとしたが上手くいかなかったんだよ、どうして私に対抗できたのか不思議なのさ」


「そうですね、犬の名前は『早太郎』ですよね?なら心当たりがあります」

しばらくして何かを思い出した様で『チアキ』は話しだす


「私のもといた国に伝承がありまして、猿の化け物もしくは妖怪、此方の世界のモンスターに相当するものが娘を生贄に求め、それを助けた犬の名前が『早太郎』だったはずです。」

「伝承にちなんで親か本人が犬のが名前を決めた、その名前が此方の世界に来たときに『従魔契約』の『名付け』として作用したんじゃないですか、状況的に化け物への生贄にされる流れだし効果が強まったんじゃないかと思います」

「何だい!それじゃ私がその化け物みたいじゃないか?酷い話だよまったく!」

「勇者として魔王や魔王軍と戦うのは生贄みたいなものじゃないですか、私は無事魔王討伐に成功したけど、返り討ちにされる方が多い事は女神様もわかっているでしょう」

認めたくない事や納得できない事もあるが理由の推測は出来た


「それにしたってあの犬も心が狭い、交通事故を誘発して呼び出したくらいであんなに怒りやがって!『チアキ』も酷いと思うだろう?」

ついつい愚痴を漏らしてしまった、これが大きな間違いだった


「女神様、「交通事故を誘発した」と仰いましたか?」

使徒の目付きがおかしい、今までに見たことのない目をしている、当時ここから様子をみていた魔王討伐の旅の中でもこんな目を見た事が無い


「説明しては頂けませんしょうか?私を轢いたトラックは居眠り運転と聞いていましが女神様のお力で成された『奇跡』だったという事でしょうか?」

怖い、さっきの犬より怖い、『チアキ』はキレた時敬語になるが今回はその敬語までおかしい


危険を感じすぐに土下座をした

「済まなかった、この世界を救う為だったんだ許してくれ」


そのあと私に土下座をさせたまま説教が続いた、一時間くらいして敬語がまともになったが説教は終わらない、そのあと3時間ほどしてようやく怒りが収まった


「良い魂が見つかってよかったですね、早太郎さんにも私と一緒に女神様のお手伝いをしてもらいましょう勇者は私が女神様の代わりに探します」

最後にとんでもないことを言いだした、『チアキ』は優秀だ十分に仕事をこなせてしまう


「勘弁してくれ、私の楽しみのひとつなんだ」

それが収まった怒りにまた火をつけてしまった、再開した説教は半日近く続いた

そして私は『チアキ』の許可なく異世界に関わる力も使うことを禁止された、使う時も『チアキ』の立ち合いが必要だ、これではどちらが女神なのかわからない、ひどい一日だった


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