59.世界樹
「ヒルダ様、高位の冒険者パーティが魔王城に近付いております、明朝には到着すると思われます」
弥生さんの腹心であるカトレア殿から連絡を受けた、部下の報告とも一致する
冒険者パーティのリーダーでハイエルフの族長の娘らしい、彼女たちの冒険者ギルドのランクはAランクで何か大きな功績を加えることが出来ればSランクに届くところまで功績を積み上げている、どうやら私が狙いのようだ
「弥生様より和平の維持のため余計な手出しをする愚か者は処理する様指示をうけています、私の方で処理致しましょうか?」
「偶には実戦を経験しておかないと勘が鈍るわ、弥生様から頂いた短剣やゴーレムの力も試したいし通して貰って大丈夫よ、香織からも「蟲毒壺」で創造した短剣を貰っている、ハイエルフの族長の娘の身体は利用価値があるわ、わざわざ献上してくれるのだから有り難く頂くことにしましょう」
「それでは、一応私も王座の間に待機しましょう、邪魔をするつもりは有りませんが、残りの3人の死体を頂きたい眷属に加えるほどではありませんが使い道は有るでしょう」
弥生さんから私の取り逃した敵の魂を届けて貰った借りもある、冒険者の死体で少しは返しておこうハイエルフの族長の娘の処理だがカミラ様に伝えたところ私に任せてくれた
Aランクの冒険者と聞き楽しみにしていたが、詰まらない相手だった、香織やユリア達を想定して腕を身を磨いていたためだろう、彼女の得意とする精霊魔法も私や香織の足元にすら及ばない、契約している精霊を奪い取り絶望している彼女の魂を短剣に封じ込め、無傷で身体を手に入れた
香織から貰った短剣も役に立った残る3人の冒険者を意識をのこしたまま麻痺させカトレア殿に引き渡した、彼らは不安と恐怖は麻痺のため表情には出ないが目に現れていた
折角のチャンスだカミラ様の得意技を使わせて貰おう、「死んだふり」で魔王の座を弥生さんに譲ろう、実際に魔王の力を持っているのは彼女だ、カミラ様は恐れているが身内に意外と慈悲深い事が判って来ている、相談すればカトレア殿を魔王にすれば良いと承知してくれた、「法王国」での立場も考えての事だろう、これからは私も自由に動ける娘を送り込んできたハイエルフの族長に挨拶に行こう
止めることが出来ず、もう戻って来ることは無いと諦めて送り出した娘のマチルダが帰って来た魔王を倒したという、信じられないが魔王の持っていたという短剣を戦利品として持ち帰って来た
「共に魔王討伐に向かった人間の仲間たちはどうなった」
「私の判断ミスで魔王との闘いの中で命を落としました、ここに戻るまでに弔いも済ませております」
マチルダらしくない返事だ、同胞のエルフですら下位の奉仕種族と見下していた、そのため力はあったが後継者候補から外したのだ、今までの冒険者としての活動や魔王との戦いがマチルダを成長させたと思うのはあまりに希望的観測が過ぎる
「確かに腕を上げたようだ、世界樹の裁定を受け資格を示すことが出来れれば認めよう」
マチルダも息子も未だこの制定に合格していない、特にマチルダは性格に問題があり世界樹は一切良い反応を返していなかった
「望むところです、安心して隠居生活をして頂けるよう私の素養を示しましょう」
この女はマチルダではない、この回答で疑念は確信に変わった、用心のため息子をはじめ実力者を見届け人という名目で集める、本当にマチルダが成長したのではという一縷の望みを捨てきれず集めるだけにして息子達には自分の疑念を伝えられなかった
世界樹の裁定の結果は衝撃的な物だった、世界樹はマチルダを騙る何かが後継者に相応しいという判断を下したのだ
「マチルダ、おめでとうこの後2人だけでお前に伝える事があるついて来てくれ」
確認しなければならない、そして場合によっては刺し違えてもこの女を殺さなくてはならない、継承に必要と言って自分の武器を揃え、2人で森の奥に向かった
「マチルダ、いやマチルダの身体を使うお前は何者だ?」
「初めまして、ハイエルフの族長殿、魔王ヒルダと申します、貴女の娘に討ち取られたためもう魔王では無いですね、ダークエルフの次期族長ヒルダです」
喉元に短剣を突きつけられ手足が痺れる直に手足の先から石化していく
「化け物め、何故ダークエルフが世界樹に認められるのだ」
この時に別の異常に気付いたダークエルフがマチルダを乗っ取っているのに、暗黒神の力を感じないマチルダの身体に宿る魂からダークエルフとは異質の力を感じた
「カミラが異世界の勇者の魂を自分の娘として産んだという噂は本当だったのだな、この後この森をどうするつもりだ、その短剣の力なら、世界樹を枯らすことも出来よう」
「そこまでやるつもりはないわ、今回は挨拶だけよ、私の中では千秋様が結ばせた和平は生きている、その答えは3年後を楽しみにして待っていなさい、挨拶も終わったし引き揚げましょう、その石化もしばらく知すれば解けるでしょう」
引き揚げようとするヒルダの前に人影が見えた
「ヒルダ様初めてお目にかかります、族長の孫でマチルダの姪のセシルです、マチルダ叔母様を返してください」
従魔のスノードロップと共にヒルダの前に立ちはだかる
「よせ、セシルお前がどうにか出来る相手では無い」
「若いのに勇敢ね、いいえ逆なのかしら若いから勇敢なのでしょうね、マチルダさんは私を殺しに来たのよ只では返せないわ、セシルちゃんは何か代金を支払えるのかしら?」
「和平中にも拘わらず、マチルダ叔母さまが貴女の命を狙った事は言い分け出来ない愚行でした、私を和平のための人質として連れて行って下さい、それが代金になりませんか?」
「面白い提案ね、良いでしょう大人しく付いてくるなら貴女の勇気に免じてマチルダさんを解放しましょう、おじい様はそれでいいのですか?貴女が人質になるのは御父上も認めないのでは?」
「ヒルダ殿、ハイエルフの族長を継ぐ気は有りませんか?マチルダの魂を娘として産んで貴女の手で鍛え直して貰いたい、そうすればマチルダも解放される、和平のためにダークエルフから婿を取れば良いだろう、私の血も残せる、カミラ様の意向を確認して欲しい」
私は正気なのだろうか、いや私の意志ではない世界樹がヒルダを欲しがっているのだろう、もう既にこの森の主はヒルダなのだと思い知らされた
素晴らしい!我々が求めていた魂が見つかった、今まではベターな選択しか出来なかった、ついにベストな選択を出来る、多少暗黒神の手垢は付いているが浄化できる範囲だ、魂そのものが自分の道を切り開こうとしているのを感じる我々が手を出さなくても暗黒神の影響を消し去るだろう、精霊魔法の能力も高く異世界の魂に関わらず女神に負債が有る訳でも無い、我々の更なる進化と発展を助けてくれるだろう
このままではハイエルフと共に緩やかに滅びを待つだけだった、族長の願望に働きかけ、我々の望む道筋に誘導する、彼女の魂が他者に縛られる事を嫌っているため我々の道具には出来ないが、だからこそ優秀な巫女となり得るだろう、彼女に若木を託そうどのように進化させてくれるか楽しみだ




