57.結婚式
新しい職場での仕事も順調だ、前川社長の気に入られ香織さんに仕事を依頼できる、香織さんが大学の単位を取り終えて時間が出来たのが大きい、始めの内は頻繁に社長に会っていたため私が社長の愛人という噂が拡がりかけたくらいだが今では誤解も解けているはずだ、解けていて欲しい立場が悪くなってしまう
しばらく広報の仕事が多くて良くも悪くも大忙しだった、私個人のファンも少しずつだが増えている、困ったものだアニメ制作に集中できない
新作で香織さんに出番を提供できた、流石に主役ではないが重要な役を与えることに成功し、見事に演じてくれた、完璧と言っていい、スタッフたちの評価も高い、声優としての知名度も上がっていいことずくめだが面倒な話が出てきた、原作でも人気があり彼女の演技の効果でそれを押し上げた為、魔王軍の将軍と相打ちになってアニメから退場されるのが勿体無いという上層部の意見だ、ファンからも生存ルートを望む声がある
原作者からすれば受け入れられない話だ、今回限りで続編の予定が無い作品であればアニオリの演出もあるし、前の職場でもよくあった話だファンの希望を叶えることになるが、悪く言えば焼き畑農業の様に作品を食いつぶす行為だ
上層部と作者の板挟みになりながらも双方の納得できる案を提案する、流石に安易な生存や復活は出来ないが死後に神の啓示を伝える使いとして最後まで出番を用意する案を提示して何とか話をまとめようとしていたが、香織さん自身がストーリとして美しく無いと賛成しないばかりが、スポンサーである前川社長の力を利用して私の苦労を無にしてくれた、彼女が社長の力を行使したのはこれが初めてだった、個人的には少し残念だったが作者はこれを喜んでいたようだ、会社との間で交渉した私にも一定の評価をしてくれていた
私の提案したいくつかのプロットを元にして香織の演じた修道女が勇者と聖女の子孫として転生するストーリーが描かれた、私をクリエーターとして認めてくれたのかもしれない
アニメの完成祝賀会でも、2人で盛り上がった、アルコールも入り2人きりで二次会で居酒屋で楽しんだあと、お持ち帰りされてしまった、そのまま付き合うことになり後日結婚することになる
偶然同い年だが相手が年上に見える外見をしており、私が逆に若く見えるため親子の様に見える、ホテルに行こうとすれば、パパ活に見えるだろう、実際一緒に歩いていただけで生活安全課の警官に話を聞かれたことがある、2人の身分証明書を見せてもまだ疑っている様な態度だった
彼は締め切りに追われていなければ自由に時間を作れるため、その後のデートは私の休日にドライブにいくことが多くなった、私の車に彼のロードバイクを積み彼の希望する観光地に出かける、峠や山の下に彼を残して私が坂の上で御馳走を用意して仕事をかたずけながら彼を待つのだ、御馳走には私の手料理だけでななく私自身も含まれる
帰りの車で体力を使い切って、助手席で眠る彼が可愛いと思うくらい大好きだ、結婚して年を重ねれば憎たらしくなるのだろうか、そうなる前に健康のため私もロードバイクを始めて2人で走ればいいかもしれない、その時家に帰った後の御馳走に私が含まれていれば最高だ
朝倉課長に酒を奢る計画は白紙にした、今更どうでもいい人間だ時間も勿体ない、交友関係を継続すれば結婚式に呼ばなくてはいけなくなる、元の上司として挨拶されれば何を言われるか分かったものでは無い、このまま関係をフェイドアウトさせるに限る
自分の将来を妄想しながら仕事も頑張っている内に香織さんに先を越された、婚約者に自分より強くないと駄目だと言っていたらしいがついに一本を取られてしまったらしい
「卑怯な手で一本を取られた、お母さんの入れ知恵に違いない」
とこぼしながらも嬉しそうにしていた、
結婚式に招待されて驚いたのが彼女のウエディングドレスの素晴らしさだ、千尋さんが海外からデザイナーを招待して仕立てたという話だ、私もモデルとして協力したことが有るがコネが無いと普通のドレスも手に入れることが出来ないため希少価値が高くなり人気も高い、千尋さんのブランド戦略だろう
モデルを務めただけの私にも紹介してくれないかと名前も覚えていない昔のクラスメイトから連絡がある、この調子では下手に同窓会にもいけない、元々参加する気は無いのでどうでもいい、私の友達はアフレコに招待してくれとか言うような奴らだドレスに興味など無い、推しの声優のサインを友達宛に色紙を書いてもらうくらいまでは出来るように社内で地位が上がったがこれ以上の公私混同は出来ない
結婚式のブーケトスで香織さんから花束を投げつけられた、事前に教えて貰っていたので何とか顔面で受け止められた知らなかったら避けているところだ、野球の始球式か何かと勘違いしているのではないだろうか?見事なストライクだった、いや違うデッドボールだ、わたしは結婚に向けて一塁に歩かされるらしい、コンタクトで出席していて助かった、眼鏡だったら壊れていただろう




