52.カーリア
勇者達とパーティを組んでエルダーリッチ挑み、力及ばず勇者が倒れ、乗った3人のうち2人を救うためエルダーリッチと取引をした、彼が病で失った娘を蘇らすことに協力すれば2人を神聖魔法で本神殿まで帰還させることが許される
魔法で保管された娘の身体に魂は残っていなかった、迷宮に留めておけば瘴気に蝕まれ自我の無いアンデットになり果てるため彼が安全と考える異世界に魂を逃がしたのだ、私たちの前に挑んだ「魔導国」の勇者たちの死体の一つに娘の魂に目印となる術式を刻んだうえで移植し、異世界転移された元の世界に反転術式で送り返した、娘の魂は無事その世界で転生を遂げたことまでは確認できているそうだ
私が取引した時点で娘を病で殺めたのが魔王だ有ると彼は理解していた、魂を召喚して蘇らせた所で彼女が幸せになるとは限らない、向こうの世界で幸せ気暮らしているかもしれない、それでも彼は元居た世界に連れ帰ることを諦めなかった、自らの罪を娘に背負わせると知りながら私に協力を強制した、彼はもう既に狂っていたがその狂気が女神の奇跡を歪な形で再現させる事になる
時折見せる正気が私に娘の事を頼むと懇願し自分を浄化してくれすがり、次の日には私を実験材として魔法の研究を進めた、彼の弟子も困惑しながら自分の悲願である不老不死を目指して研究を助けていた、弟子の隙を見つけて彼の精神を安定させる神聖魔法を使った、数日の間であるがしっかりと正気を取り戻してくれた、その時間を彼は有効に使い切った
娘を助ける為に弟子と取引をして彼女たちの求める不老不死の研究を娘が引き継げるように研究内容を私の頭の中に封じ召喚の準備を整える、暗黒神からの支配をかいくぐるために転生した娘の自我が確立するまで召喚術式の完成しない様に自分の記憶を封印する
再び狂気に陥る前に自分を使役する魔法をかけた、自分の魂を召喚で傷つく娘の魂と実験で傷ついた私の魂の回復のために喰らいつくすように呪いをかける、娘へのメッセージを魔道具に残し弟子に託した、この後彼が正気を取り戻す事は無く自らが残した魔法に従う道具になっていた
信じられないことに彼の最高傑作であるアンデットは娘を取り戻すことに成功した、私もが彼の奇跡に貢献した、私の身体に彼の娘の魂を受け入れ共存する、その後身体を共有しながらエルダーリッチの罪の清算に力を尽くした
彼の娘は前世の記憶だけしか持っていなかったが、この環境に適応した、父の力と私と共にエルダーリッチに挑んだ勇者の力を受け継ぎ彼女自身のスキルも発現していた、自分の父をこの世界に無理矢理つれて来た魔王の手先と信じている彼女に真実を語ることは出来なかった、彼女自身が思い出せばエルダーリッチの弟子たちがメッセージを再生するだろう、私から彼女に真実を語るのはその後で良い
共に暮らすうち彼女は私をカーリアと呼ぶようになり、私は彼女を弥生と呼ぶようになったこの共存もい続くのか判らない、時が経つにつれ私たちの魂は回復しこの身体では共存できなくなっていった、いっそ2人の魂が溶け合ってしまえば良いのではと思う様になっていったそんな時、使徒の千秋様が迷宮を訪れた
弥生が千秋様と取引し私の魂を女神様のもとへ返してくれた、私は身体を弥生に譲り女神様の使徒になった、そして再びこの身体に使徒として降臨した、弥生が異世界時代の身体で一週間の享楽に溺れた後の眠りから目覚めるのを待っていると丸一日眠ったあと目を覚ました
「ずいぶん楽しそうでしたね弥生、暗黒神の宿ったサキュバスの味はどうでした?」
「カーリアなのね?素晴らしいスキルを手に入れたのよ、手ごわい相手だった、何回も昇天させたし、させられた、相手の力を考慮すれば勝利したと言えるかしら」
あの享楽すら復讐のための手段と割り切っていたというのか?清々しく晴れやかにそして誇らしく言葉が紡がれていた
「聖女カーリア様、父の望みを叶えてくれて有り難う、父の敵を討てた、もうこんなことはしない、誇れる方法ではないけど恥とは思わないわ、私の魂の中のに溶けた父の魂にも報告できる、父が聖女カーリア様に詫びて欲しいと言っていた、私の後始末を押し付けてしまって済まなかったって」
ここでその話をするのはずるいと思いながら弥生の言葉を聞いた
「それだけ?彼なら娘の事を私に託さなかった?」
ようやく返せた言葉がこれだった、娘の事を頼むというエルダーリッチの言葉を思い出す
「そうね、最後に娘を頼むっ言ってたわね、でももう私は大丈夫だから」
「どこが大丈夫なの?サキュバスいえ性別を変化してインキュバスの相手まで、おまけに中身は暗黒神でしょ、私が浄化してあげる」
「そうね、有り難う、お願いするわ、使徒カーリア様」
微笑んで目を閉じる私の事を信頼しきっている、なんだか馬鹿みたいだ、これじゃ私だけが心を乱されている、この感情は何なの?
不意に弥生を懲らしめたくなった、こんなの私じゃないと思いながら弥生に近く、目を閉じた弥生の唇を私の唇がふさいでいた、使徒になり強化された神聖魔法で弥生を拘束する。弥生が魔王の力を手に入れていてもこの拘束からは逃れられない、逆だ、魔王の力が有るからこそ神聖魔法の効果が強化される、私のスキルを使い弥生が手に入れた危険なスキルを封印しておく事にした
「弥生、今から私が貴女の身体を綺麗にしてあげる、暗黒神の触れたすべての場所を私の手で清めてあげる、大丈夫よ爪は貴女が寝ている間に綺麗に整えているから傷つけたりしないわ」
そのまま弥生の上に覆いかぶさる
「頭の中も心の中も綺麗にしてあげる、降臨してる全ての時間を弥生にあげる」
彼女は一切抵抗せず私に全てを委ねた、ただ微笑み私を待ってくれている
「酷いよ、少しくらい抵抗してよ!」
私は叫んでいた、酷いのは私の方だ自分でも理不尽な言葉だと理解している、動ける訳が無いのだ、あの微笑みが弥生に出来るせめてもの抵抗なのかも知れない、それならば私の良心に訴えているのだろう、後悔が私の心に傷をつけた、その傷を舐めるように別の考えが浮ぶ、弥生もこの時を待っていて心から受け入れてくれているのだと
自分の手で抱きしめる弥生が愛しくてたまらない、魂同士でこの体を共有していた時よりも弥生を近くに感じる事ができる、千秋様から取り返して勇者香織との夜も私が上書きしよう、手を出してよかった、出さなかったとしても後悔していた筈だと自分に言い訳して弥生を愛し続けた、弥生もそう思っていてくれる一夜を共にしてようやく気が付けた
「カーリアが襲わなければ、私が襲っていた」
弥生の言葉が嬉しかった、それが分かっていればもっと焦らしてやればよかったとも思う、でも女神様の使徒としては正解だっただろう、弥生の復讐の結果であるが新たな暗黒神ともいえる存在に女神の使徒が手籠めにされる訳にはいかない
しっかりと暗黒神として振舞えるスキルが弥生の中に存在する、そしてスキルに振り回されることなく使いこなせるだけの力も有るようだ、そのことに安心して良いのか、警戒するべきなのか判断できない、その気になれば私の神聖魔法も破られるだろう、この一夜で気付いたもう一つの事だ
弥生に私の降臨している時間をすべてあげると言っている、後ろ髪を引かれが個人的な喜びのために浪費は出来ないようだ、彼女を引き返せない所まで女神様の勢力に引き入れる事にしよう、魔王の座はダークエルフに預けておけばいい
私が助けたアランとエレオノールの子孫を弥生が鍛えていた彼女たちも喜んで協力してくれるだろう、弥生の新しい身体のお披露目だ盛大に歓迎させよう、最高司祭の手で次なる聖女に指名させようか?私と共にエルダーリッチを救済した奇跡の娘「エア」として特別な存在に祭り上げるのも有りだ、弥生の迷宮は私を祀る神殿になっているこの神殿を束ねる司祭になって貰えばいい
私は100年以上エルダーリッチに捕らわれたのだ、彼の娘に償って貰って何が悪いというのか、実験材料にする訳でもない望んでもなれるものは限られている高位の司祭だ出来る限りの便宜も図ろう、魔王の力だけではなく暗黒神の力も自らの身体と魂で封じる勇者でもある、この世界の人々の信仰を束ねて私が聖女として出来る限りお仕えしよう、彼女に引き継がれた勇者のスキルがそれを成し遂げる力となった、今度は最後まで使命を果たそう、使徒になる名誉は女神様から先払いで頂いているのだから




