45.井上美咲
弥生様の歓迎の準備をしなけらばならない
3名の来訪が告げられているが弥生様以外の2名の共のものが誰なのかまでは知らされていない、予想できるのは使徒が擁立したともいえる偽りの魔王ヒルダ様と実質的なダークエルフの指導者であるカミラ様の二人、正式な交渉の前の打ち合わせなら弥生様が配下の者を伴っての訪問だろうになるだろう
可能性としては低いが勇者と聖女を伴って魔王討伐を狙うこともあり得る、弥生様はアイテムボックスでゴーレムを持ち込める、本気であれば防ぐことは困難だ、私の知る弥生様なら偽の三人の訪問者を囮に単身で乗り込みゴーレムを展開し転移の魔法陣を張って勇者と聖女を含む精鋭を呼び込むだろう、私が下手に対策したところで防ぐことは不可能だ
ニブルヘイム様の読み通り暗黒神の手駒である魔王を奪うことが目的のはずだが、その選択肢に討伐が含まれてしまうのが懸念事項だ、変にこちらの利益を狙って交渉を長引かせるのは良くない、ヒルダ様とカミラ様が「魔導国」を目の敵にしているのは判っている
先払いで魔王の力を渡しても「魔導国」を奪うことに協力してくれるだろう、弥生様が下準備をしてダークエルフが暗殺すれば残る七家の当主の命だけではなくその力と政治的な権力・そとて経済的な権益も奪えるだろう、それは「魔導国」を手に入れることに他ならない、入れ替わるためのドッペルゲンガーを召喚すれば良いだけだ
私たちは「魔導国」を手にいれ、魔王ヒルダは念願の復讐を果たす、弥生様は「魔導国」の積み上げてきた魔法そのものを自分のものとする、無駄に戦闘を行い情報が洩れる事はしない筈と魔王討伐を選択するメリットを最小限に抑えることが最大の防衛策として機能するだろう
共に「魔導国」の奴隷にされていた仲間も喜ぶだろう、復讐を強要したため私より弥生様に感謝しているくらいだ彼らは魔王からの呪いから解放された後も自らの意志で復讐の機会を待ち望んでいる、それは私も同じだ、ニブルヘイム様が貴族の当主と入れ替わっているため表向きには私は魔王討伐に失敗したが優秀な跡継ぎを残すための道具として生かしているという扱いだ
そんな私がこの国の王妃になるのも目の前だ、その後に私が楽しみにしているもう一つの復讐の順番がやってくる、私を蔑んだ目で見て笑いものにした奴らをどう料理してやろうか、魔王から妃に望まれた私の恐ろしさを死ぬことも狂うことも許さず私が忘れた後も永遠に味わってもらおう
予定の通り弥生様が腹心の部下である真祖と勇者の二人を伴って屋敷を訪れた、出発前に面会のメンバーの通達があっため少し安心できたがもしもの事がある、真祖のカトレア殿に提供する料理について確認したが通常のもので大丈夫とのことだった、三人共素晴らしいドレスと宝飾品に包まれていた、この世界のドレスは重く動きづらいものが主流だか、動きやすく軽やかだったが戦闘に対しての考慮もあるのだろう宝飾品を含め様々な魔法の効果が付与されている
「美咲さん、お久しぶりね直接話すのは4年ぶりになるわね、あの時の三人も息災かしら」
「ええ、今も元気に復讐のための牙を研いでおります、復讐の相手となる七家をヒルダ様とどの様に分配するか相談させてもらえますか?」
「魔王様もいない場でいきなりそんな相談を始めるのね、私はまだ用件を切り出してもいないのにせっかちね、せっかく素晴らしい料理を準備してくれているのだからそれを楽しんだ後でも遅くないわ」
早く話をまとめたい私をからかう様に、弥生様がじらしてきた
「僭越ですが、私は弥生様のお考えが理解できると自負しているのです、魔王の力をお譲りできます、私を解放してくださったようにニブルヘイム様を自由の身にして頂けるのでしょう」
「4年前もそうだったけれど、話が早いのは助かるわ、でも千秋様のようにじっくり楽しませても欲しいの、わたしの我儘なのでしょうね、もっと欲張って利益を最大限に狙っても良いのよ、食べながら細かいところを決めていきましょう」
もうすこし具体的な条件を提示して様子を伺うと私の読みは基本的に間違っていなかった事を教えてくれた
私は使徒ではないバックに女神様がいれば冒険も出来るが、私のチップの上限は限られているし、それを見透かされてもいる、はじめから勝負にならない、歓迎の料理くらいの最低限の場代で賭けをすることも無く今ある権利を守り「魔導国」を手にいれたい
この化け物相手にギャンブルなど出来ないのは判っている、平気でイカサマをしてそれを押し通す相手だ、私が魔王様との賭けに勝利したのは彼女のおかげで味方になってくれれば頼もしいが、同時に敵に回した時の恐ろしさも十分すぎるほど知っている、だからこそ私が望んでいるは多少勝利を譲っても確実に実利を確保する商取引だ
食事が終わる頃にはヒルダ様ととカミラ様に3家で弥生様の実験相手に2家を割り当て1家を勇者たちの実戦訓練の相手とし1家を私たちの復讐の相手として分配することになった
食事と共に話が纏まり、カトレア様と勇者の香織様を残し弥生様をニブルヘイム様の部屋の案内する
「ニブルヘイム様、話は纏まりました後はお二人でお願いします」
「気にすることは無いそのまま見ていろ、だだし美咲は何が有っても手を出すな手元が狂うと元も子もない」
と言ったあとワインの栓を抜き自分と弥生様のグラスに注いだ、空気となじませるようにグラスの中でワインをまわす、そこでいつもなら有り得ない事が起きた、ワインがグラスの縁を越えニブルヘイム様の左胸に雫が数滴とんだ
「いけない、緊張している様だ、染み着いて取れなくなってしまうと厄介だ、弥生殿何かいい方法があれば教えて欲しい、良ければ綺麗にしてくれると助かる」
らしくない失礼な言葉への弥生様からの返事は、アイテムボックスから取り出した勢いのまま右手一本で繰り出される魔槍の3連撃だった、それをニブルヘイム様は身動きできないまま胸を貫かれた、私も同じように刀を居合の様に放てるが動けなかった、間に合わなかったが直後に身体を動かし刀をアイテムボックスから直接弥生の首を狙い放つ
「貴様!何をっ「弥生殿見事だ私の目印に飛ばしたワインの雫に寸分違わず槍を突き刺し暗黒神の頸木を破壊してくれた」
私の言葉を遮りニブルヘイム様が弥生様に賛辞の言葉を送った
「美咲、手を出すなと言ったはずだ、余計な回復魔法をかける手間が増えた」
私の腕が刀を握ったまま宙を舞っていた、見れば弥生様の左手に魔剣が握られている、遅れて私の右腕に痛みが襲ってきた、ニブルヘイム様が私の腕を癒しつなげてくれた後に自らの胸の傷を癒していた、その順番に私は喜びを感じていた、自らの弥生様への無礼を忘れたまま
「美咲さん貴女のドレスを汚してしまったわ、お詫びに香織のドレスを仕立てさせましょう、ニブルヘイム様のお召し物も必要ね」
弥生様から言葉がかかる気が付けは二人とも血だらけになっていた
「すまない、2人だけで進めるべきだった、美咲をここに残したのは我の過ちだ謝罪しよう、我の為に激怒する美咲を見れたのは嬉しい誤算だこれには感謝する」
「魔槍だけではなく魔剣の試し切りが出来ました、楽しい余興です、気にする必要は有りません」
アイテムボックスに魔槍と魔剣をしまった弥生様の身体には一滴の返り血すら付いてはいなかった
私からも謝罪した後にニブルヘイム様から魔王としての力が弥生様に移された、何の喜びも見せず淡々と力を受け入れ
「こんなものなのね、カーリアと一緒にいた時の方が不安定だったわ」
と語り、受け入れしている間も終わった後も外から見える魔力や力がこの館に訪れた時と変わらない状態に保つ弥生様が恐ろしくて仕方無かった




