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40.ファーストキス

無事に最終話のアフレコが終わった、現在放送中だが視聴率も良く円盤(DVDやBlu-ray)の販売も決まっている、犬飼さんの希望もありもう一度だけキャンペーンに協力してもらう許可を前川社長から取り付けている、それが今の会社で私が手掛ける最後の仕事になる、次の会社に移る話も決まっており、この仕事を成功させて課長に置き土産を残し自分の実績に加えたいところだ


その許可を貰いに行ったときの帰りに犬飼さんのお母様から食事に誘われた、綺麗な方で

「初めまして、香織さんにはお世話になっております、本当にお母様ですか私にはお姉さまかと思いました」

社交辞令のお世辞が混じっていないと言えば噓になるがになるが、若々しくお姉さんと紹介させたら信じていただろう


「佐々木さんお上手ですね、前川さんから仕事が出来る女性と聞いていましたが流石ですね、貴女も磨けば光るものを持っているのにもったいないわ、仲良くなりたいし千尋と呼んでくれていいわ、聡美さん」

「千尋さんこそお世辞はやめて下さい、からかわないでくださいよ、私なんか貧相な体で課長から接待の戦力にならないとか言われていたんですよ」

「あら、見る目のない上司だ事、前川さんが良く言わない理由が解かるわ、私が少し磨いてあげる、磨き方もおしえてあげるわ」

良い雰囲気になって来た、彼女の協力を得られるのは大きい、でも磨くとはどういう事だろう?


疑問はすぐにとけた、私はこの後彼女からメイクをしてもらい髪型も整えて頂いた、鏡の中に美人が、いや美少女がいた、もうアラサーだが童顔のため多少若く見られる自覚はあったがメイクでそばかすを隠し、目を大きく見せる化粧をしてまつ毛や眉を整えるだけでこんなに化けるとは思わなかった


「ほら綺麗になったでしょ、ところで聡美さん、また、香織を見世物にするそうね」

「そんな見世物だなんて、アニメの制作発表会での広報活動ですよ、香織さんも喜んで協力してくれました」

「そうなの?貴女の仕事は広報活動も含まれるのよね」

「そうです、広報と言っても私は裏方ですが大事な仕事です、誇りを持って努めています、若くて綺麗な香織さんには助けて貰っています」

「それなら、今の貴女も若くて綺麗よ、表舞台に出て仕事が出来るわ、聡美さんが一肌脱いでくれるなら香織が協力することも認めてあげる」


「一肌脱ぐとはどういう事でしょうか?」

「私から言わないとダメなのかしら?聡美さんは貴女が香織に何をさせたのか覚えてないの?嫌だなんて言わせないわ、見世物じゃなくて広報活動でしょ、貴女の仕事よ」

怖い、前川社長が剛の交渉なら、千尋さんは柔の交渉だ気が付けば逃げ出せない蜘蛛の巣にかかっている断ることなどで出来るはずも無く私もコスプレして舞台に上がることになってしまった


私がコスプレするのは貴族の娘の魔法使いで眼鏡っ娘枠のヒロインだ主人公の聖女と反発しあうが最後には聖女をお姉さまと呼ぶようになる、アニメで露骨な表現は無いが原作では恋愛関係も書かれているいわゆる「百合カップル」姉妹の関係だ


円盤の発売発表会でコスプレした私をみた課長が

「おい佐々木、整形までしたのか?うちの会社でもっと早くやってくれていたらもっと仕事で活躍できたのにもったいない」

どんな仕事での活躍だ、脳内ピンクめ


「朝倉課長、メイクですよ、メ・イ・ク、女は化けるんですよ、知らなかったんですか?」

「佐々木、てめえっ、うちでは地味に化けていたな、知っていたらもっと役に立ったのに」

課長が悔しそうだ、私はまともな仕事で役に立っていた、もっと早く自分の価値に気が付いていたら、こんな会社に来ていない、スクールカーストだってもう少し高かっただろう


いやまて、下手に可愛いとカースト上位に目をつけられてイジメられていたかもしれない、このスペックは今からでも十分役に立つまだ遅くはない、今だって16歳の設定のキャラをコスプレしていても違和感が仕事をしないのだ


そんな風に課長と仲良く喧嘩していると、イベントの開始時間が近づいてきた今回は脇で見るのではなく香織さん達と一緒に舞台に上がりアニメの場面を再現する


「平民が偉そうに指示を出すなんて、お父様に言いつけて立場をわからせてあげるわ、なんで私が基礎体力のトレーニングなんてしないといけないの?」

「あなた達は私と聖女を守るためにいるのよ、聖女の貴女もどうかしているわ、勇者や戦士と一緒に筋トレして何になるの、もう少し神に祈って回復魔法の腕をあげて下さらないかしら、どうして勇者がこのパーティのヒーラーをやっているんですか?その聖剣は飾りですか?」


「オークの大群とでも遭遇して逃げる事になったらどうする気だ、逃げ遅れたらどうなると思っている?お前を乗せてくれる馬車などないんだ」

「オークなど私の魔法で丸焼きにして食料にするから大丈夫よ、はじめから逃げる気で魔王が倒せる訳ないでしょ!」

この後本当にオークの大群遭遇して戦闘になるが魔法使いの魔力が切れ、逃げることになる、この時息が切れて走れなくなり気を失った魔法使いを聖女がお姫様抱っこで抱えて無事に逃きる


アニメの映像が舞台流された後、それを再現し香織さんが私を軽々とお姫さん抱っこして走って舞台袖にに消える、再度舞台の反対側から登場し私を舞台の中央まで運ぶ


アニメでは口移しで水を飲ませ、そのまま口づけで魔力を魔法使いに与えたあと、狭い谷に誘い込んだオークを魔法で一網打尽にするのだ


香織さんが本当にそれを再現した、キスする振りだけだった筈なのに本当にキスされ口移しで水まで飲まされた、私のファーストキスは香織さんに奪われてしまった、口移しで飲まされた水はなぜか甘く感じた


この写真や動画が投稿され拡散した、イベントは大成功だったがこんな目にあわされるとは思っていなかった、これが原作者のやる気を出させたようだ、円盤の特典として書き下ろしのSSが付くことになったSSとしてはページ数が多く18禁スレスレの内容で話題になった


怖ろしい事に私個人のファンまで出来た、数は多くは無いが一部の層に受けがよく、年下の女性から私を妹にしたいとファンレターまで届いていた、全て千尋さんのせいだ、遠回しに苦情を言ったら


「責任を取って私が貴女のお姉様になってあげる」と返されたので

「千尋さんじゃなくて香織さんを下さい」と返したら

「香織に聞いてみるけど本当に良いの?香織は空手部で年下の彼女がいたこともあるのよ」

と言われた、冗談だと謝って許してもらったが、千尋さんの言葉は本当なのだろうか?冗談であって欲しい、香織さんには婚約者までいるのだ騙されたのかもしれないが、香織さんに確認する勇気はなった


彼女は声優デビューしたあとすぐに婚約した結婚も目の前だ、男性ファンはそう多くは期待できないが、女性ファンは狙えるだろう、私のファーストキスをファン獲得のために役立ててやろう、そんなことを考えながら今後の事を考えていると、彼女が空手の型の部で世界大会に向けた強化選手に選ばれたと聞かされた


仕事を依頼しにくくはなったが彼女が有名になればおつりがくるだろう、おつりがくるようにするのが私の仕事でもある、直接私に利益が入るわけではないし本当は事務所の仕事だが、私には彼女との強力なコネが有るのだ仕事に生かしていこう

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