38.真剣勝負
前川さんと誠二さん私と両親で車に乗り警視庁に向かう、柿崎さんと言う警察のお偉いさんが出迎えてくれた、真っ先に母に挨拶をしている、なにか弱みを握っているようだ、前川さんが何か分かったような顔されていた、私には力関係しか判らない人生経験の違いなのだろう
道場に案内されてお父さんと誠二さんが道着に着替えるため更衣室に向かう、私も着替えようと女子用の更衣室に向かうと千尋さんついて来て着替えている道着は貸してもらったようだ、私は空手の道着を持参していたが
「誠二さんは柔道しかやってないのでしょう、空手の道着だと少し誠二さんに不利よ香織も小学校までは
柔道経験が有るんだから柔道の道着を借りなさい、ミネアも投げ技や関節技を使えるのでしょう」
「柔道とは違ってこの世界の合気道みたいなものですね、投げると言うより関節を折る技術ですから打撃しか使うつもりはないです、異種格闘技戦になると思いますので千尋さんが審判をしてください」
「それは良いけど誠二さんに勝ちを譲る気はないの?」
「本気でやらないと誠二さんに失礼です、誠二さんはお父さんより強そうだからすぐ終わるでしょ」
「ある程度は手加減して投げさせてあげるでしょ、そうしないと父の面目丸潰れよ、それくらいの接待はするはずよ」
「なんだか、面倒くさい話ですね、私には縁のなかった生き方です、あっちで神官だったころにはそんな事必要じゃなかった」
「あっちでも身に付けてなきゃ駄目よ神官でもね、その先の司祭まで出世したら絶対に必要になっていたでしょうね、こっちでもそうよ、その辺りはあとで私が教えてあげる」
ミネアさんと二人で女子更衣室で着替えを終え、道場の戻る男性の方が着替えが楽だし私たちが話をしていたため丁度試合が始まる所だ、予想通り誠二君が夫に投げらえている、外から見ても素人には手加減しているように見えない、夫も騙されている、誠二君の腕が良いのだろう
それでもミネアには勝てない少なくとも綺麗に一本を取ることは出来ないだろう、彼もしばらく苦労することになる、私と違って待ちきれずにミネアが襲ったりはしないだろう、機会を見つけて学生時代の部活で選手にやったように練習相手をしてあげよう、この後ミネアの手の内を見てみることにした
しばらくして夫から綺麗な一本を取った、多少は疲れている様だが続けてミネアと試合をするつもりだ
「誠二君夫に付き合ってくれて有り難う、疲れているでしょう、香織だけ相手の技を見ては不公平だし私が香織と組手をするわ少し休憩してちょうだい」
そんな時前川さんの電話がなる、この試合を香織や千秋様が見たいようだ、部外者が入るのはまずいと渋る柿崎先生を私が黙らせて許可を取った
「折角だから香織と誠二君の試合は真理さん達が着いてからにしましょう、それまで私が香織の相手をするわ、香織は普通の空手や柔道以外の技も使うから誠二君はよく見ておいて」
私もカイン様を倒した聖女候補ミネアの力を見てみたい
「香織、遠慮は要らないから本気で着て」
ミネアの出方を待つと一気に距離をつめ貫き手で喉を狙ってきた、まっすぐで闘志が籠っているため動きが読める気配を消す気が無いのか消す事は出来ないのか、カイン様の魂が短剣に残っていたらと思うと背筋が寒くなる、その腕をつかみ投げようとしたが逆らわずに私の投げるに身体を預け私の手をはらい着地した後すぐに足払いを出してくる
バク転してそれを交わすと追撃が来た今度は目を狙ってくる、「本気で来て」とは言ったがここまでするか?楽しくなってきた、私の記憶の中にあるカミラ様との闘いを思い出す、身体にしみ込んだ経験で含み針代わりに唾でミネアの目をねらいたくなるが我慢してカウンター気味に掌底で顎を狙うと腕を取りながら飛びついて腕十字を狙ってくる、ただ腕を極めるだけはなく私の顎を狙った蹴りまで付いて来た
それを躱し床に頭を叩きつけようとすると動きを察したのか手を放し逆立ちした状態で牽制にけりを入れその反動を生かして立ち上がる、少しバランスが崩れた所にタックルを入れ背後にまわり道着で首を絞めようとするとミネアの指が私の顔を探り目を潰そうとする、実践なら魔法で回復できるため片目と引きかえに絞め落として私の勝ちだがここでそれは出来ない
道着から手を放し後ろに跳び間合いを測る、まだ起き上がれずにいるミネアの頭を狙い前方に宙返りする様な形で踵を落とすが床に身体を投げ出し横に回転しながら踵を躱し立ちあがる、私も宙返りの勢いを生かして立ちあがり距離を取った
「おい、千尋、香織、何をやっているんだ!やめなさい、まるで殺し合いじゃないか、前川さんの前なんだ少しは落ち着いて考えろ!」
流石に夫が止めに入った、ほっとすると同時に残念な気もする、ミネアとの勝負を楽しんでいた、素手の勝負など殺し合いに入らない、私も身体がおぼえているしミネアも向こうの世界の感覚が生きている、ミネアも少し不満そうにしているこれからが本番だったのだから
「前川さん、すみません、娘と妻がこんなマネを」
「いいえ、素晴らしかった、本当の真剣勝負を見せて貰いました、今の私では香織さんに勝てないでしょう、普通の柔道ならなんとかなるかも知れませんが、腕を磨いて出直します」
誠二君も良い根性をしている、ミネアを任せて大丈夫な男のようだ
「もう少しで、真理さん達も到着するでしょう、それを待って柔道で勝負をして貰えませんか?こんな私や娘のところに婿にやっても大丈夫ならですが」
「構わないよ、誠二が怖がるのであれば反対するがそうではないようだ、妻を返していてよかったよ」
前川さんも認めてくれるようだで安心した
「ただ柔道で勝利しても私は納得できません、香織さんより強いところを見せると約束しました」
「なら婚約を賭けた勝負にしましょう、神戸住まいだから機会を見てになるけれど私が誠二君の練習相手になってあげるわ、それとも香織から直接教えて貰う方が良いかしら」
「誠二君じゃなきゃ誰が香織と結婚生活が成立するかわからないわ、わたしもこんな良縁逃したくないもの」
前川さんも誠二君もこの話で承知してくれたミネアもそうだ、誠二君の前でやり過ぎたと反省しているようだ
誠一さんと真理さんが異世界組を連れて到着した、純粋な柔道ではミネアに勝ち目は無かったが柔道のルールでは反則となる技で誠二君を投げていた、顎を蹴らない腕十字だけがルール上認められるが彼の腕を折らなくてよかった
前川さん達の顔がひきつりミネアの身体に入っている香織も引いてるようだ、楽しそうなのは千秋様と坂本さんの二人だけだ、それでも最後にはミネアが綺麗に投げられ婚約が成立した
後日婚約破棄されないか心配だが、婚約した2人が嬉しそうにしているし大丈夫だろう、念のため前川家の弱みを握っておこうスキルを駆使して探せば簡単に見つけ出せる
それぞれが別れたあと、誠一さんと真理さんに渡すドレスなどを預かった、異世界に帰ろうとする三人をもう少し引き留め、香織や坂本さんの許可を取りファッションブランドを立ち上げる許可を取り付ける、注文は定期的にカミラ様を通して伝えればいい千秋様も面白そうだと賛成してくれた
その準備のためミリアを含めて4人の写真撮影を済ませてから見送った、代わりに今後の為にスマホの準備とそれぞれのSNSの更新や管理の仕事が出来たがそれを任せるコネもあるし人員も確保できる、楽しい仕事が待っている今後の私の生活も充実するだろう




