37.幕間
お見合いが終わったタイミングで店を出ると前川さんが先にエレベーターに向かわれた、先に車の手配をされるらしい、急ぎの仕事でロビーに部下を待たせているとの事だ
千尋さんが、誠一さんと真理さんに私達を紹介してくれた、その中で私がドレスのデザイナーのミネア、坂本さんが宝飾品のデザイナーのカーリア、千秋様は三年前の内戦で婚約者が結婚寸前に無くなっているが国際結婚のため先に書類上は結婚済みでで国籍も変わっている、彼女の義理の姉がカーリアだと紹介している、事前に説明をきいておけばよかったのだが、大筋で私たちの打ち合わせと同じだ、
「真理さんもフランス語が話せるけど、専門的な言葉まではわからないから千秋さんが通訳をお願いね、誠一さんはフランス語は習得されていないから、結局通訳は必要になるわ」
千尋さんから説明を受けた、フランス語だからと迂闊に内緒話はしない様にとの忠告もあるのだろう
「素敵な、ドレスとアクセサリーでした、SNSで他の作品を投稿されているなら見てみたいわ」
その言葉に私は固まってしまった、千秋様も坂本さんも20年位の浦島太郎状態だ、私が対応を考えておかなければいけなかった、千秋様が周りに気付かないように私に目配せをしながら、少し時間をかけて通訳してくれる、そもそもスマホが無いのだ、どう返事をしようかと硬直したままだ
「期待に応えられなくてごめんなさい、日本に来る時に空港でスーツケースが迷子になってしまってアメリカに運ばれたみたいなの、見つかって後日関空に届けて貰えるけど今はスマホが無くて、ミネアが馬鹿みたいに真面目で機内に電子機器の持ち込みは駄目だっていうものだから、空からの景色を撮りたかったに私達も巻き添えよ、見てよ気まずくて変な顔してるでしょ」
坂本さんが助けてくれた、私はどんな顔をしていたのだろうか
それも私たちが打ち解ける切っ掛けになり話がはずんだ、ロビーに降りて車に乗り込んだ後も坂本さんが上手く盛り上げてくれる、要望を聞いて後日ドレスとアクセサリーを送ることになった、誠一さんは衣装ケースが気に入ったらしくその材料で仕事道具を入れるカバンを作成して欲しいそうだ
「予算はこのくらいでお願いします、高価すぎると最初の宝石で父に怒られてしました、私が買ったものだと思われてしまいまして」
その、これくらいが結構な値段でびっくりした
「観光でこちらに来られているとか、お礼と言っては何ですが地元の人間しか行かないような穴場を案内します」
「それならリクエストして良いかしら?千尋のお嬢さんがお見合いの後で結婚を賭けて試合をするとか、警視庁っていう日本の警察の中心でやるんでしょう、私達じゃ滅多に行けない所でだわ、もし可能なら見学させて貰えないかしら?」
坂本さんが最高の提案をしてくれた
「お義父さんに相談してみますね」
真理さんが連絡を取ってくれる、大丈夫だという事だ、千尋さんが許可を取り付けてくれたようだ
休日だが部長から電話が入った、都内のホテルに向かい社長から資料を受け取って社内監査の準備をする様にとの指示だ、幸い外せない用事はない午前中に妻と息子を連れて大型会員制スーパーで買い物を済ませ昼食が済んだところだ
自宅のある千葉から指示されたホテルに向かう予定の時間までにホテルに着いたロビーで待っていると社長がエレベーターで降りてきた、フロントに向かう社長に近づき会釈をして社長に声をかけるタイミングをはかる、車の手配だったようだ
「社長、部長の指示でお待ちしていました、松本です」
そこで資料を受け取った、支店で取引先との接待の予算を懐に入れている者が二人いる、手口は少し違うがやっていることは同じだ、相手からキックバックさせるか、親しい店で領収書の金額を水増しするかの違いだ
社長はどこでこの資料を手に入れたのだろう?考えれれるのは木下さんだ社長秘書をしていて実力を買われ後継ぎの息子と結婚している、彼女が現役の時よく気が付いて仕事を増やしてくれた、未然に大きな仕事を小さくしてくれていたのだがまだ未熟な私には大変だった、娘さんが大きくなり職場復帰が近いのかも知れない、仕事を覚えた今では彼女が戻ってきてくれるのが待ち遠しいみんなを助けてくれるだろう
ロビーでの私の対応が良かったようだ、昨日と今日の二日分休日出勤で処理して良いとい言ってもらえた、最近はわが社も労働環境がホワイトになり残業しないと仕事が終わらないのは無能という空気が社内にある
基本的には良い環境だが残業代を稼ぎたいものもいて良い事ばかりではない、一部には評価を上げるため仕事を持ち帰るものもいたが社内秘密を持ち出すことになる、それぞれの上司が管理すべきだが上司が部署全体の成績を誤魔化そうとすると歯止めが利かなくなる、それを取り締まるのも審査部の仕事の一つだ
そんななか二日分の休日出勤手当は有り難いマイホームのローンもあり小遣いも限られる、妻に言って趣味である釣りの道具を買えるかもしれない、結局財布のひもは妻に握られている給与明細も確認されているため手当は息子をつれて三人で子供向けの映画を見て食事をすることになった
残ったお金は将来の為の貯金だ休日を一日使う事になったが家族サービスが出来て妻の機嫌もよくなった、最近釣りにも行けないが息子が大きくなれば釣りを教えて三人で出かけようそれなら妻も許してくれるだろう、それが幸せなのだと思う




