33.お見合い1
11時半に妻と共にホテルのロビーに入ると誠二が待っていた、香織君は誠一と真理が12時前に案内してくれる、先方の御両親とロビーで合流し会場となる店に案内する段取りになっている、
今日の予定を話していると、若い外国人二人と日本人一人のグループが楽しそうに話しながらロビーに入って来た、3人共女性で本人もドレスも美しかった、2人は海外のモデルか女優だろうか、私は詳しくないから誠二や妻に聞いてみたが知らないという
見とれている者はいるが騒ぎになっていないところを見ると違う様だ、私の値踏みするような視線に気が付いたのか日本人女性に睨まれる、一瞬殺気の様なものを感じたが勘違いだろう、私たち一行を眺めたあと離れたソファーに座った
宿泊客が呼んだ接待を仕事にしている者達だろうか?私を睨んだ日本人と背の高い外国人女性はそろいの黒いドレスでそう見えなくもないがドレスの質がそれを否定する、かなりの高級店から派遣されたのだろうか?などと考えてもみたが流石にその手の行為を許すレベルのホテルではない、自分の間違いだろうと結論を出した、興味が残ったが彼女たちの会話はフランス語だろう、英語なら私も分かるが内容はわからないし、離れているため静かなロビーでも聞き取れない
関係のない話だと、親子三人で今日の話しに戻ると、誠二が昨日香織君と先に出会っており気に行ったという香織君からの印象も悪くないと、彼女から父や自分より強い男である事を証明して欲しいと言われており、見合いなど必要ないくらいで二人に自分の実力を示したいと言う、道着まで持って来ているようだ
海外でろくでもない女に騙されていないかと少し心配だったので安心したが、少し面白くないのも事実だ、今まで見合い話に興味の無かった誠二が私の認めた香織君をみて驚くところを見たかった、それでも二人の相性がいいのは良いニュースだ
この見合いでもう一つ確認しなければいけないことが有る、香織君や彼女の御両親を含め調べさせたが特に問題は無かった、最近になって香織君が少し芸能活動をしているのが気になるくらいだ、御両親は実質的に学生結婚で授かり婚だったようだが体育系の大学で部活動を通して知り合っている、よくある話しだ本人同士以外に浮いた話も無いようだ
母親が家族を早くに亡くしており、結構な遺産を相続したようだが私たちに比べれば大したものではない、あまり聞こえの良い話ではないが金銭的に主導権を握れる、今回は家と家の関係を強める政略結婚ではない、婿入り前提の話しだ、誠二は警察官僚で高給取りだが私や誠一と比べると収入が低くなるだろうある程度の生活環境や教育が出来るレベルでありがたいくらいだ
そう思っていたところにうちの会社の株を5パーセント取得した個人投資家がおり「犬飼千尋」と言う名前だ、昨日IR担当の部下から報告があった、まだそれ以上の事は確認出来ていないが本人なら少しやりにくい、結婚に反対はされないと思うが香織君の母親だ、もし反対なら手ごわい相手になるだろう、同姓同名の別人ならそれはそれで対応が必要だ過半数の株式は会社や親族で押さえているが物言う株主には厄介な相手もいる
11時50分くらいに誠一と真理が香織君を連れてきた素晴らしいドレスとそれに似合うアクセサリーを身に付けている
「誠一、少し話がある!」とお手洗いに誘う
「妻を美しく着飾るのも男の甲斐性だ、誠二の見合い相手に贈り物をして美しくするのも良いが、ドレスはともかくあの宝石はやり過ぎだ、真理は私の秘書をしていた時から優秀でお前の妻にしたがお前が手綱を握れなくてどうする!」
「父さん、あのドレスも宝石も、香織さんのお母様からの贈り物です、前回の顔合わせで衣装を送った事へのお礼の品だと」
にわかに信じられなかった
あれだけのものを一週間程度で用意出来るものなのか、ただ高級なものなら金さえあればなんとでもなるが、ドレスと調和した宝石を短時間でドレスのサイズも合わせて二人分だ、地元で贔屓にしている店が有れば可能だろうが彼女は神戸に住んでいるはずだ、店に出向くのではなくあれを調達できるコネとそれ相応の人間を動かすことが出来るのか?信じきれないままロビーに戻る
「お義父様、香織さんのお母様から、素晴らしいものを頂きました、このドレスを仕立てたデザイナーを紹介して下さるそうです、お見合いの後で引き合わせて下さと」
真理が嬉しそうに報告してくる、未だに信じられないが本当の様だ
香織君の御両親も到着した、見れば先ほどの3人連れがエレベータに向かっている、よく見ればドレスのデザインが真理たちの着ているドレスに似ている、彼女たちのうちの誰かがそのデザイナーなのかもしれない、だとすればこの見合いの為だけに海外から招いたことになる、目の前に居る香織君の母親のドレスも大人しいデザインだが素晴らしいものだった
私達も挨拶を交わし、エレベーターに向かい予約した店に向かう、同じ階で先に降りた3人連れが同じ店で店員に案内され店に個室に案内されていた、真理も気が付いているようだ目が姿を追っている彼女たちのドレスも気になる様子だ
私達も個室に通され見合いが始まった、改めての挨拶もそこそこに誠二と香織君が楽しそうに会話をはじめ父親を含めてこの後警視庁で勝負をする話をしている、真理が香織君の母の千尋さんにドレスのお礼を言った後、デザイナーの事を聞いている、とてもお見合いの雰囲気ではない、私達夫婦と誠一が取り残されていた、それでも千尋さんに確認しなければならない、なかなか話がとぎれないが、何とかキリの良いどころで声をかける
「千尋さん今回は素晴らしいものを頂きました、どちらであれだけのものを?、もう一つ私の会社の株を取得された「犬飼千尋」さんは貴女で間違いないでしょうか?」
「宝石は海外の友人から手に入れたものが有りました、ドレスの方もデザイナーをしている友人をたまたま日本に招待していて、観光案内ついでに仕立てて貰いました、そして、株式の方ですが私で間違いありません、人を見る目の有る人物が率いる企業は伸びると思っています、今回は親馬鹿かもしれませんが珍しく長期で保有するつもりです、いつもは短期の売りが多いのですが」
「失礼ですが、売りと言うことは事件や不祥事の情報を手に入れられる立場を利用されているですか、インサイダー取引になりませんか?」
つい皮肉を言ってしまった、商談の時の自分が出てきている
「御冗談を、警察から情報を手に入れてから売りを入れたりしませんよ、私が売りを入れた後に、良くない事をしている企業の事を私が告げ口をするんですよ、あら、もしかしたら株価操作になるかも知れませんね、秘密ですよ、そうそう、社長にお土産も有るんですよ、本社は企業統治が完璧みたいですけど地方の支店に泥棒ネズミが少しいるみたいですね、こちらが資料になります」
と書類袋を渡された
「失礼少し席を外させてもらいます」
トイレの個室の中で書類袋の中身を確認する、証拠となる資料も添付されているが現時点で悪戯の内容の真偽はわからない、2匹のネズミはうちの中堅社員で所属も名前も私の記憶と合っている、監査部の部長に電話かけ今すぐ動けるものを見合いの終わる予定時間にホテルのロビーに来させるよう指示を出した




