29.不意打ち
「香織さん、おはよう、少し良いかしら?」
月曜日の朝の散歩中、前川さんの家の前で真理さんから声を掛けられた、今週末に早太郎のお嫁さん候補の秋田犬をブリーダーが手配してくれるらしい、昼からになるが予定は大丈夫だろうか?私に予定が有るのであれば朝の散歩のときに早太郎を預けらせてほしいとの事だ
幸い土曜に講義は入れていない日曜も予定はないと答える土曜日に手配するから立ち会って欲しいと頼まれた、早太郎は私のとっては現在早太郎の身体を使っている魂である『白夜』様として認識している、千秋様と魔王討伐の旅をしたフェンリルの魂だ、そして『魂の交換』をした香織さんの愛犬だ『白夜』様も見合いを嫌がっている訳ではないようで、私もその日を楽しみにしていた
翌日予定の時間に早太郎を連れて前川さんの言えぬ向かうと真理さんと有紗ちゃんが出迎えてくれた庭に10頭の秋田犬が待っていたブリーダーらしい男性のと犬のトレーナーが2名が彼女たちを従えている、それを見た早太郎がと言うよりむ『白夜』様が一頭の秋田犬の前に駆け寄るとてもうれしそうに尻尾振りながら精霊語で話している相手の秋田犬も精霊語だが私以外には普通の犬の鳴き声に聞こえておるようだった
私には「言語」スキルのお陰で二重に聞えてくる彼女は『白夜』様の故郷で死に別れた番の魂が日本の秋田犬に転生したようだ女神様の好意によるものだろうか?それと偶然なのだろうか?いずれにしても素晴らしい出会いだった有紗ちゃんも喜んでいるし、早く仕事を切り上げられるブリーダーも笑顔だ、その秋田犬一頭を残して引き揚げていった
余りに嬉しそうな早太郎はとりあえず明日まで前川邸に泊まって貰うことにした、彼女の名前は有紗ちゃんが決めた「雪」ちゃんだ彼女も『白夜』様も喜んでくれているようだ、用事は済んだので帰ろうとすると
「香織さん、突然で悪いんだけど会ってもらいたい人がいるの、私の義弟の誠二よ明日のお見合いの前に会いたいというものだから」
明日のお見合い?今初めて聞いたびっくりしていると
「ごめんなさい、義父が香織さんが土日予定が空いていると聞いて貴女の御両親や誠二君に連絡をして予定を入れたしまったの、貴女の御両親と相談してサプライズにしたみたいなの」
応接間で待ってもらっているから会ってもらえないかしら」
気がつくと逃げ場が無くなっていた、覚悟していなかった訳ではないが、不意を突かれため
「解かりました、お会いします」
と答える事しか出来なかった
真理さんに案内されるまま応接間に通される、以前に香織さんが前川さんと対決した場所だ心の中で身構えながら部屋に入ると穏やかそうな男性が立って待っており私にソファを進め私の後に着席された
「初めまして香織さん、前川誠二と申します、可愛い姪を助けていただきありがとうございました、そし父が迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした」
「義姉さん、2人で話したいので席を外してもらえないでしょうか?」
「解かったわ、この後は若い二人だけでってやつね」
真理さんが応接間を出ていく、しばらくして誠二さんが話し出した、真理さんが確実に離れるのを待っているようだった
「香織さん、改めて父の我儘で迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした、早太郎君の事もそうですし、見合いの件もそうです、兄からも話を聞きました、香織さんがあまり乗り気で無いように見えたと聞いています、個人的には香織さんは素晴らしい女性だと思います、この点は父や義姉さんと同じ考えですが、貴女の意志が尊重されるべきだと考えています」
「もしこの話が迷惑なら、明日の見合いは私から断るつもりです、他に好きな方が居られるのであれば、私の出る幕ではありません」
渡りに船と言うにふさわしい提案だった、そのまま提案に乗れば解放されるだろう、ただ「有り難うございますお手数をお掛けします」と言えば良かったのかも知れない、私はほっとしてしまったからだろうか安心して正直に今の気持ちを伝えてしまった
「正直なところ自分の置かれた現実に戸惑うばかりです、他に好きな人が居る訳ではありません、この見合い話を受け入れれば喜んでくれる人が多く居ることも理解しています、周りからも祝福され羨ましがれる良縁です、誠二さんに他に好きな方が居ないのであれば見合いを進めた方が賢い選択でしょう、きっと幸せにもなれるでしょう、今の提案を聞いてそう思います」
「それでも、ただ与えられただけの幸せに私が耐えられる自信が無いのです、その幸せが他人から奪ったもので、自分に与えられるべきでは無いもの、相応しくないものだと思えてなりません、幸せになる義務に縛られたくは無いのです」
それが私の本音だった、香織さんから幸せを盗んでしまってはいけない、そしてその幸せは生涯私を縛る呪いになるだろう
「解かりました、見合い自体を無しにすることは出来ないですが、その後私からお断りする様にします、そのうえで私は私は貴女を自分のものにします、欲しいものを手に入れる為には手段を択ばないのは父譲りです、見合いは貴女を手に入れる手段としては下策のようなので別の手段を考えましょう、覚悟して下さい」
「それはプロポーズですか?貴女が私より強いなら貴方のものになってあげても良いですよ、見合いの場で宣言して下されば勝負をお受けしましょう、父と私二人に勝つ必要があると思いますがかまいませんか?」
面白いこの男は紹介された香織さんではなく、今あったばかりの私を欲しいと言ってくれた、それならば私が勝ち取ったものだ勝負の行方は分からないが勝とうが負けようが自分の人生を歩くことが出来るだろう、香織さんも私の故郷で自分の人生を生きているはずだ、目の前の男が私にかけられた呪いを解いてくれた今後の人生をかけて勝負する相手に相応しい
「父から多くの見合い話がありましたが貴女は最高です、急いで帰国した甲斐が有りました、明日が楽しみです父の驚く顔が早く見たい、この後義姉さんが明日の衣装を選ぶのを楽しみにしていました、申し訳ないのですが付き合ってあげてください」
香織さんの記憶に着せ替え人形にされうんざりしている時間があったが私にとっては楽しみだった、誠二さんが真理さんを呼びにいき、真理さんに彼女のウオーキングクローゼットに連れていかれた
「前回衣装を選んだ時私と香織さんと体型が同じで運命を感じたわ、買ったまま使っていないものもあるしここで選びましょう、誠二君は明日の楽しみを奪ってしまうといけないからここまでよ、自分の準備もあるでしょ、いつものジャケットじゃ先方にも失礼よ」
この後楽しいかったけど一時間を超えると香織さんの気持ちが解かって来た、故郷で高位の司祭様が着る儀式用の衣装よりはましだか動きずらいものも多く私も着せ替え人形にされていた、疲れた顔を隠し真理さんに礼を言い自分のマンションに帰ると、玄関に靴がある明日のために母が来ているようだ
「お帰りなさい、合鍵で入らせてもらったわ、いつも片付いているけど、今日は特別綺麗ね、内緒で来たから散らかっているかと思ったけど誰かを連れてくる予定でもあるの?前川さんに言えないような事はしてないでしょうね、それとも誠二さんを連れこむ気だったの?結婚まできれいな体でいろとは言わないけど順番は守ってね、新郎・妊婦の入場とか笑えないわ、母さんと同じ失敗はしないでね」
「そんなことする訳ないでしょ、誠二さんとは今日初めて出会ったのよお父さんみたいに積極的すぎる事は無さそうだわ、普段真面目な父さんでもそうなんだから、男の人はみんなそうかもしれないけど」
香織さんの記憶に、父さんは母に交際を認めてもらうため何度も勝負を挑み、やっと勝利してそのまま結ばればれたと話している父の姿が有る、自然な親子の会話ができているだろう、私の中身が別人だと気づかれる訳にはいかない
「そう、よかったわ、では初めましてミネアさん香織との関係を教えてもらえるかしら?丁度フェンリルも居ないようだし」
信じられない言葉を聞かされた、彼女は何者なのだろう、なぜ私の事と『白夜』様の事を知っているの?




