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194.油断

私が芽吹いてから暫くして別の土地に移植されていた、最初の場所も素晴らしい栄養が多く魔力に満ちた場所であったがこちらはさらに素晴らしい、変わらず近くに姉妹らしき株の存在も感じる、移植前には将来的に栄養の奪いあいにならないかと不安があったがここならその心配も無さそうだ


近くに強固な結界を形成する森が有る様だ、その結界から拡散する魔力もあたしには滋養になるので地下部分の結界を覆い巻き付くように根を伸ばす、その結界を中心に霊脈や水脈が伸びている、私と違い瘴気に対する免疫は低い植物が生息しているだろう、内部に瘴気が侵入しない様にしており浄化の追い付かない分は私がそれを頂くことにした


どうやら森の中央に存在する樹の精が私を共生可能な存在と判断してくれた様だ、栄養素の内お互いに必要なモノを分け合いお互いに不要なモノを提供しあう関係が自然に構築された、素晴らしい環境だ、自分の足で歩いて獲物を探す必要も無いし自分で歩いて引っ越しする必要まないその代わり蔦を伸ばして日の光を確保しよう


そこで気が付いたがここは迷宮の中の様だ私を産んでくれた母や他の強者がこの迷宮で暮らしている、迷宮内に日の光が入って来る様になっているがやはり直接浴びる方が良い、根を伸ばして結界に接触した様に迷宮の壁を突き破って蔦を伸ばす


迷宮が外の地中には瘴気や糧となる死体が埋まっていた、そこからこの世界の知識や経験を修得していった、多少の虫食いは有るが数でそれを埋め合わせる事が出来る、結界の中に有る森は魔王軍や人間の帝国から何度も侵攻を受けていた様だ結界を張って外界から閉ざすのも当然の選択だろう


知識を蓄えたお陰で中の森の意思と交流出来る様になった、どうやらかなり危機感を抱いている様だ、互いの根を通して結界の中から妖精がこの迷宮に訪れるに至った、ドライアードの様だが私の元居た世界の者より小柄で幼女の様な姿をしている、結界の維持でここまで縮んでしまった様だ





「侵入者でち、あたちの迷宮に入りこむとは何者でち?」

初めての経験だ


入り口以外から中に入りこまれた事など今までなかったと言うのに魔力はそこまで高そうでは無い、それでも経験やスキルに底知れなさを感じる、あるいは周囲に漏れる魔力も偽装なのだろうか?


「申し訳ない有りませんこちらのお嬢さんに招かれましてお邪魔しております、決して敵意は無いのです貴女の主にはこの地の環境を整えて頂き感謝をしております」

侵入者が敵意の無い事を示すように挨拶をして来た


私が害虫の研究に夢中になって目を離した間に娘達が急激に成長している様だ、事もあろうに迷宮の壁を貫いて根や蔦を外部に伸ばしていた、我が娘ながら恐ろしい迷宮の壁を貫いた事は勿論、監理者のあたちに気付かせる事無くそれを可能にした事が驚きだ


「そうなのでち?確かに敵意は感じないでち、何処から来たのでち?」


「結界の中で途方に暮れていた所にお嬢様より手を差し伸べて下さいました」

どうやら結界の中から出てきたようだ


地下を探れば双方の根で結びついて回廊を形成している様だ、随分と親のあたちや卯月とは違う進化をしている様だ将来の成長が楽しみで仕方が無い、実った2つの種の内もう一つは私と同じ様な成長をしているように見える地上に花芽が伸びて蕾が付いている、もう少しで地上に出てきそうだ


「それならカオリママとヒルダママに紹介するでち」

2人は結界の中と接触を望んでいた


渡りに船だろうどうやら古エルフという奴等は引き籠りのコミュ障が幅を利かせている様だ、そのためドライアードが外に出て来たのだろう、うちの世界の奴等と違い偏見も無いように見えるが流石にいきなりダークエルフの姿は問題が有るかも知れない、先ずはイザベルの身体のヒルダママを呼ぼう





「お労しい、私達より遥かな時を刻まれている筈の貴女がアルラウネより幼い姿でしか存在できないとは」

ミルラが気遣いと嘆きの籠った言葉をかける


アンジュが知らせてくれたため急いで迷宮に駆け付けたが共に向かったミルラが驚いている、レンがロラン殿を呼びに行ってくれている、彼も結界の中の様子を知りたい事だろう、香織は作業を続けて貰って大丈夫だろう


「ロラン、穏やかな顔をしていますね」


「セフィー様申し訳有りません、貴女の側でお仕えしなければならないのにこの様に無為に時を浪費して」


「責めてはいません、貴方がどれだけ真摯に私達と部族のために尽くしているか理解しています」

この後も感動の再会劇が続く


それだけ結びつきが強いのだろう、ついレンとミルラの顔に視線を送ってしまった


「ヒルダ様は好きに自分の森を拡張して頂ければ十分です、お互いを利用し合う関係ですがこれから絆も強固になって行く事でしょう」

視線に気付いたレンが語りかけてきた、ミルラもうなずいている


有難い言葉が私に送られたがいまの時点で追い詰めれた状況になればどういう行動をするだろうか、変にお互いの力を信用しているので各自最善と思う行動をするだろうか?良くも悪くも身軽だ森ごと迷宮に詰め込んで逃げ出す事も可能だ


私が囮となって敵を引き付けて猛毒の沼に引き摺りこんでいる間にレン達ドライアードが世界樹を守って脱出する流石に避難訓練こそ実施したことは無いが避難先の目星は付けてある、私がダークエルフとして得た経験でその様なハイエルフに無い動きも採れるのだ


彼女達に相談した時に帰って来た反応を覚えている、冗談だと笑われ、私が本気だと分かると反対され

アルラウネ達と実現の可能性を示すと今度はいかに世界樹に負荷を与えることなくそれを行うかを真剣に検討し始めた


今ではダークエルフの森に隣接しているのを嫌い引っ越し先の選定を探しだしている、その中で逆にアンジュの迷宮の更に奥にダークエルフの森を移転させられないかと言いだしたが、危険物同士を接近させるのは危険と近くで監視出来るメリットを優先する事になっている


ともあれ結界に籠る古エルフと交流する糸口が見つかった事は歓迎すべきだろう、レンがアルラウネ達にセフィーというドライアードが力を回復出来るように大きな睡蓮鉢に水を張って土やポーションを混ぜて準備を始めロラン殿が寝起きしている区画に運んでいる


「今夜はゆっくり休養なさってください明日今後の事を話し合うと事しましょう」

この時点では皆が平和に解決出来ると思っていた

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