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189.恫喝

部下が報告を上げてくれる、私に力を授けてくれたヤヨイ様の指示なのだろう瞬く間に私の生まれた世界を支配していた竜王を中心とした10将達が敗北した、私が魔王の座に座らずじっくりと実権を握ろうと遠回りしている間の事だ、少人数で見せ付ける様に完勝して組織をそのまま乗っ取られた


「欲しい物が有るのなら、こうやって手に入れなさい」

と行動で示された、私や私の部下には手を出してはいない事から見ると


「要らないので有れば私が貰ってあげる」

という催促かもしれない、実際私のライバルとなる者を狙い撃ちにしてる


支配を恒久化する様な動きは無いが吸血鬼達には食事の作法についてあちらのマナーを押し付けようとしていた、どうやら人間達に対しての処遇について不満が有る様だ、これはヤヨイ様の意向ではなく聖女の独断なのかもしれない


侵攻に参加した経験で実力差は身に染みて分かっているため部下も私を臆病者だと責める者は少ないが侵攻に参加していない者達の中には私に動きに疑問を抱く者もいる様だ、勿論表立って批判する者は出て来てはいない様で助かっている


獣王は竜王が敗れる様子を見て服従を決めたようだが部下の統率が乱れ大変そうだがオークを圧倒した人狼の女部族長が実力と意外な気前の良さを見せて今は大人しくしている、ナンバー2のワーベアとその部下が生きたま毛皮を剥ぎ取られた、見せしめの効果と提供されたオークの肉で侵攻の結果を推測したからだろう


ここまでは何とか我慢できる範囲ではあるが結界を張り怯えて何とか命を繋いでいるエルフ共と接触をはかっている様なのだ、奴らの森に被害を与えて少しは削っているものの無視できない戦力を温存している、何度も殲滅を目指して結界の破壊に挑戦したが成功していない


エルフの森はほぼ枯らす事に成功しているが中央の古エルフの森には被害を与えられていないしエルフ達も保護しているのに食料や精霊力も枯渇する様子は無い、悪い事に私を子供扱いした人間の女が周辺部を整地している現在は北部に火山を産み出し東から南へと自然の城壁を整えつつある


私もお下がりのような形では有るが魔王の持っていた力を受け継いでいるが勇者であろうあの女に勝利するビジョンは描けない、その上にもう一人同等かそれ以上の化け物がこの世界に来ている、この化け物は魔王城に居座っているが勇者に何かあれば直ぐに駆けつけるだろう手を出す訳にはいかない


狙うのであればエルフを標的にするしかない夜は勇者と合流して休息を取っている様だが昼間は別行動でエルフの女2人が僕のドライアード達を連れて森の再生を行っている、結界の近くに迷宮を創造している様だこの情報がもたらされ危機感が増した、異世界との通路が確保されてしまえば手出し出来なくなるだろう


襲撃して破壊したいが悪手だろう、問題の迷宮がいつから用意されていたのか不明だ、何とかして情報を得たい危険だが私自ら表敬訪問と言う形で挨拶に行こう、既に手遅れかも知れないがそれでも確認しなければいけない


無念ではあるがエルフの領地を認めて機会を待つ方が良いかも知れない、その場合は停戦して次の機会を待つ事になる、あの女も永遠にこの世界にいる訳でも無い、心情的な問題を除けば予想される地域を確保されたとしても脅威は限定されるだろう、見守るのではなく交渉して地域を限定させなくてはいけない


交渉のための手札を整えよう、期限付きの停戦は仕方が無いだろうがそうであれば油断を誘い次の手の準備をしておくべきだ、死んだ魔王の血と私の血で育ったアルラウネを2人を連れ古エルフの森近くに向かう事にした、事前にイライザ殿を通じて訪問を伝えてもらった


迷宮の破壊を残念したのは迷宮を通して大型の草食動物を移動させていると報告を受けたからだ、いつから準備していたのだろう監視の者も置いていたが監視対象はあくまでエルフの張った結界であり、不手際と担当者を責める事ではないが気が利かないと内心は穏やかでは無い


この訪問には意味がある、古エルフに対して私の姿を見せて今後接触した際に疑念を抱く種を蒔く事だ、一時的に監視の人員を引き上げた事で結界に対しての破壊を試みると見て古エルフどもが結界を強化した事が幸いして直接の接触は行われては居ないと推測される


迷宮を拡張して地下から結界を部分的にやぶって接触をおこなえば地上部の結界に変化が現われる筈だ、些か希望的観測であるが、これは古エルフの結界を攻略しようと様々な手段を我々が試した経験からそう判断した皮肉だが古エルフの結界を信頼していいるとも言える


会談は地上で真昼間に行われた意図的に会談内容を古エルフに聞かせようとしているのだろうが、今までの因縁は深い古エルフ共は僅かな言葉尻を捕らえる様に、密約や罠を疑うだろう、そこまで我々ダークエルフと古エルフとの間には怨恨が存在するのだ


「イザベル様初めて直接話をする機会を得ました、アスタから貴女の噂を聞いています、私の戦い方をトレースして見せられたと、一度手合わせをして頂きたいと思いまして、嘘で塗る固められた言葉より剣を合わせる方がお互いの事を理解できると言うモノでは?」

挑発にも聞こえるがのっては来ないだろうと声をかける


「面白そうですね、本気で楽しみたいので別の身体を使う事にしますね」

そう言うと迷宮から一人のダークエルフが現われた


「ヒルダと申します、楽しみましょうダフネ様が相手ですので手加減は失礼ですよね?」

穏やかに笑いながら答える


「イザベル様この方は?」


「私が平行思考で使う身体の一つですが失うには惜しい身体ですので手は抜きかねます、接戦になるとうっかりダフネ様に無用な傷を負わせるかも知れませんね、早い内に降参して下さいね」

私の問いにエルフの身体で答える


冗談では無い、前提が全て崩れてしまうかもしれない、相手の立ち位置と目的が分からない、結界の中で古エルフも混乱しているのは確実だが私も状況が正しく把握出来ない


「この世界の三分の一を頂けると聞いています、一番美味しそうな場所を頂こうと思いまして、世界樹は貴重なのです、貴女の目的はこの結界の中を殲滅する事なのでしょう?」


「この先じわじわと枯らしてしまう様な臆病者たちには過ぎたモノだと思いませんか私が貰って上げます、この世界からエルフが消えれば貴女にとっても悪い話では無いでしょう?」


「一緒に結界を壊しませんか?」

意味が分からない


何故森の再生をしていたのか?何故この結界を包むように周囲に火山を創造しているのか?


「ごめんなさい冗談です、古エルフの皆様出てきてここで話しませんか聞こえているのでしょう?」

この台詞でようやく気が付いた


この女は私を古エルフを交渉に引きずり出すために利用したのだと、この状態でまだ引き篭もる様な臆病者なら支援する価値など無いと言っている、エルフ同士だからと言って常に共闘するとは限らない価値が有る物が失われるくらいなら自分の物にする方が良い当たり前の事だ


仲良くなれそうな気さえする、交渉のためのブラフだとしても別の世界の世界樹を奪うと言う選択肢を交渉の手札に持ち出す相手だ敬意すら感じる、何故彼女は女に生まれたのだろうか?

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