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18.審問官

私が彼女を初めて見たのは彼女が12歳の時本神殿で最高司祭様の前に集まり、神官になる誓いを捧げる時だった


そこの集まった者たちの中から神官になるべきでない愚か者を振るい落とすため私はそこにいた、彼女に問題は無かった7年前に凶作の年があり口減らしの為神殿に預けられたものが多くここ数年よく見る貧しい村出身の娘だった


代表は貴族の出身の者がから選ばれ親が一門の中から取り巻きとして同時に神殿に入った娘たちと最高司祭様に近い最前列に陣取っている、それと対照的に後ろの席の隅っこで同じ境遇の者があつまり身の上話をしていた、大した力は無くとも故郷に近い神殿で人々を支えてくれるだろうと自分の心を削る役目をこなしながら彼女たちを見つめていた


彼女に再会したのは司祭として定期的に各神殿を回り異常や不正が無いか監査していた時だ、先輩の神官を前に元気に武術の指導をしていた私は日々の荒んでいく心に癒しを求める様に彼女に武術の修行をつけてやった、嬉しそうに師匠と慕ってくれた、定期的に訪れ旅に私の修行から得た成長を見せてくれる、神聖魔法の方は素質の限界のため力は低かったが小さな原石を懸命に磨いていた、彼女との時間は荒み乾いていた私の心を癒してくれた彼女はこの神殿を守る立派な司祭に成長するだろうと期待した


そうした時魔王が現れた、これには「魔導国」がこの世界へ呼び出した勇者が対応し途中結果は不明だが共に姿を消した魔王討伐が成功した場合魔王軍の勢力は衰えるのが普通だが統率を失いながらも勢力は衰えず対応に苦慮していた、今後女神様により異世界より魂が導かれ勇者が誕生するのではないかと期待されそれが噂として流れていた


本神殿も重い腰をあげ聖女候補を集め聖女を選び、今後現れる勇者を支えるために教育をする必要があり準備を進めていた今回は頭一つ飛び出た候補のユリア様がいるが、何処にでもある前例第一主義と他の候補の成長にもつながるため通常通りの選抜が実施されることとなっている


候補とそれを護衛して旅する騎士の選定も進んでいたユリア様は中位貴族の出身で親も反対を押し切って神官になられたその経緯と実力でほぼ聖女に内定している、彼女は貴族の娘として神殿に入る前から護身術を身に付けていられるがもし勇者と旅をするとすればその環境に対応できるのか?と不安があったその対策として身の回りを世話が出来る護衛として女性の神殿騎士の中から適任者を選ぼうという話が出てきた、女性の神殿騎士は少なくその上実力者となると選択肢は限られる神殿はその選択肢の中からミリアを選んだ聖女候補一人に対して2人の神殿騎士が付くがこれにミリアと彼女の恋人のカーライルを選びユリア様との相性を確認し親睦を深める事にした


準備が進む中私は自分の通常の務めとして視察にでいた、普段の汚れ仕事と比べると息抜きの様な仕事だが不快になることもある、不快になるものを探し消していく仕事だからだ、私は割り切れないまま仕事をやってきた、未だに割り切れない、そのせいで私の地位は審問官の中でナンバー3止まりだ、使命の中で上の二人が命を落としても別の者がその地位を引き継ぐ彼らは私が無いもの持っている、いや逆だ私に捨てられないものが有るのだ、一部の者だけが知ることだが魔王を討伐するため戦士を切り捨てた勇者『チアキ』の様な冷徹さが必要なのだ、望めば足を洗い大きな神殿を任される司祭になれる、私の適正をわかっているのだろうそう最高司祭様より勧められた事もある、それでも審問官を続けた私にとってこの仕事も捨てられないものとなっていた


そんな視察の中

「ガンダルフ様この神殿でうちの娘がお世話になっていますどうか宜しく」

と男が包みを渡そうとして来た、聖女候補選定の噂が流れたためだろう自分の娘を推してほしいがための贈り物と見える

「そうか、ならば神殿全体への寄進として受け取ろう」

と目の前で中身を寄進箱の中にほりこんでやった、この寄進箱からは一定の神殿の運営に必要以上のものは本神殿に上納されることのなっている、全てがこの神殿に入るわけでもなく賄賂としての効果は無い、ここの司祭に突き返されたため私のところに持って来たのだろう唖然とする男をしり目に司祭に挨拶をして自分の仕事をつづけた


その旅で彼女のいる神殿に到着した、いつもの様に彼女が武術の指導をしていたが様子がおかしい

「真面目にやれ!聖女になれば自分の身も守る必要がある、勇者様の足を引っ張る気か?誰がこの神殿の聖女候補に選ばれるかわからない、この神殿から選ばれるかもわからないが、本神殿で司祭様に恥をかかせるつもりか?」

いつのもとは違う彼女がそこにいた

「熱くなりすぎるなミネアもういいだろう」

しばらくその怒号が遠くから聞こえていたのだ


「すみません師匠、普段お世話になっている先輩に死んでほしくは無いのです」

「ミネアお前は聖女候補に選ばれたいか?」

「何言ってるんですか師匠、私が選ばれる訳ないじゃないですか、私の神聖魔法の腕を知ってるでしょう、師匠が選んでくれるんですか?毎日師匠が鍛えてくれれば「拳聖」になれるかもしれないですけど、それなら聖女と旅をして守ることが出来ます」

自分が選ばれるとは微塵も思っていない、「拳聖」のくだりも冗談だろうが、最後の「聖女と旅をして守る」と言う言葉には強い思いがこもっていた


そこで閃いた、売り言葉に買い言葉ではないが「師匠が選んでやろうじゃないか」と

ミネアを聖女候補に選びミリアとカーライルを彼女の護衛にあてた、後で確認すればいいどちらがユリア様に相応しいかなんなら二人とも付ければい


この判断のせいで「私の可愛い弟子」を失うことになった彼女の身体に宿った勇者にこの世界の事を教えた内の1人は私だが彼女は「私の可愛い弟子」ではなかったそれは心の中で「私の憧れる師匠」となった彼女の見せてくれた「空手の型」は美しかった


この後私は審問官をすてた、最後まで捨てられなかったもの、いや捨てることなく守りぬいたものを心に残したまま若い修道僧の武術の指導に専念した、彼らが新しい「私の可愛い弟子」となった彼らの中から「拳聖」が出れば素晴らしい、結構な年だが共に「拳聖」を目指そう「私の憧れる師匠」の存在が私がまだ強くなれると教えてくれた

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