179.たらい回し
ようやく魔王城に辿り着いた、分裂し散り散りになっていた同族を纏め上げて新たな魔王にはせ参じたが目端の利く者達に遅れてしまった様だ、それでも一万近い数の力は評価して貰える筈だ
「臭っせいゴブリン共が何の様だ、オークと違って食うことも出来ないゴミに用はねぇんだ」
偉そうな人狼のメスに絡まれた
「新たな魔王様に挨拶したく馳せ参じました、引き継いで頂きたい」
とても勝ち目が無い相手だ下手に出よう
「ほ~う、意外と見る目が有る様だな後で姉御に合わせてやろう、腹も減ってるだろう、あそこにいる小娘に言えば食わせてくれるだろう、あれでもお前達え程度は苦しめながらじわじわと殺せる化け物だ、怒らせたら命だけじゃすまねぇいぞ」
やはり随分出遅れた様だが仕方ない部下共を喰わせてやらなくてはいけない恥を忍んで頼みに行こう
人狼に言われた人間のメスのところに行こうとすると俺に次ぐ規模の群れを率いるゴブリンが手を出そうとしていた、人狼の話しを聞く前は俺も奴隷だ思っていたがその馬鹿もそういう態度を取ったのだろう、目のまえで石になっていった
「役に立たないごく潰しに用は無いのです、しばらくそこで見せしめになっていて下さいね」
その女が周りに聞える様に大きな声で宣言した
よく見ると人間ではなかった魔力から植物の妖精だとは分かるが詳しい種族は分からない、ドライアードだろうか?ダークエルフの森の木に宿った者なら魔王に忠誠を誓っても不思議は無い、今までの魔王はダークエルフを重用していたため我々ゴブリンは下僕として使い捨てにされて来たのだ、惨めな過去が思い出されたが今更引き返すことも出来ない
「新たな魔王様に忠誠を誓うために馳せ参じました、活躍する機会をお与えください」
恥を忍んで頭を下げた
「そうですね区画を割り当てましょう、種を配りますので畑を耕して下さい、食料も配給しましょう」
妖精が少しの間考える様な顔をした後返事をしてくれた
「嫌ならあなた達を潰して肥料にしても良いのですよ、大人しく待っていなさい、私は忙しいのです」
俺の不満そうな顔に気が付いたのだろう
脅しの台詞を吐いたあと土の精霊魔法を使ったようだ畑を仕切る大きなあぜ道が我の集まっていた場所をから魔王城の方向から拡がるように伸びていく、そして井戸だろうか所々に岩で造られた囲いがみえる、そして何か緑いろの蔓が拡がっていった
「その蔓の根元を掘れば食べられる芋が取れます、しばらくはそれを食べて過ごして下さい、後で次の作物の種を用意します」
その言葉が聞こえた訳でも無いだろうが匂いを嗅ぎ食料が有ると気が付いたのだろう、連れて来た仲間達が持っていた槍や斧で地面を掘り出している、赤紫の芋だろうか争う様に皆がそれに齧り付いている
俺もついに族長としてのプライドも投げ捨てて芋堀りを始めていた、驚いたことに一万近い仲間たちが腹を満たしてもほんの一部の芋を掘り出したに過ぎなかった
逆らってはいけない魔術の腕前だけでは無いこれだけの実りがあるという事はこの土の下にそれだけの養分が眠っているのだ「あなた達を潰して肥料にしても良いのですよ」という台詞が頭に蘇る、この下に新たな魔王に逆らった愚か者たちが埋められているのだろう
骨が出てこないのは空に映されたアンデットとなって魔王の軍団に加わったからであろう、俺の様な特別なエリートとは違い馬鹿な同族には理解できないかの知れない、各群れの頭を集めて俺が教育しなければまとめてスケルトンにされてしまうだろう、ゴブリンのリーダーとしての統率力を示さなくてはいけない
面倒なことになった、想像通り囮としての魔王は討伐されて実質的な魔王はイライザ様とカオリ様が務めるおとになった、「法王国」としては魔王軍を平定する将軍と言うお題目で二人の統治権を認め魔物達を支配させ女神の威光を示す事にした様だ
問題は囮としての効果が遅れて発揮された事だ、これは仕方が無いことげもある、10日どころか5日で意思を持った魔剣をイライザ殿が自分のモノにしてしまったからだ、今日もゴブリンの群れが魔王城に引っ越し作業中に参陣してきた
「ツクモ様ゴブリン達を支配するにはどうすれば良いでしょうか?」
アンジュと共に手伝いに言っていた如月が呑気に某に経験が有ると思った様で聞いて来るでは無いか
私が魔王に仕えていた時はゴブリンは足軽の様にダークエルフの指揮下でこき使っていたが繁殖力が強くある程度増えると群れが分裂して新たな生息地を探して勝手に移動を始める、その多くが人間の開拓地などを襲うのだ
管理法と言えば、ある程度数が増えた時点で口減らしを兼ねて人間の国の砦などを襲撃させて数を減らしてせて間引く程度のことだ、人間と敵対していればそれで充分なのだが、その方法は選択出来まい、さりとて某の知った事では無いと言う訳にはいかない
ダフネ殿から預かっている者達の弓の的にでもして肥料にして森の拡大のためにすき込んだ方が簡単だ、ゴブリンの管理などやっても得るモノが無いだろうが、どうやら如月は前向きに力になってやろうとしている様だ仕方が無いなんとか知恵を授けてやろう
「そうじゃな、まずはイライザ様とカオリ様の意向を確かめるのが先決だろうて、アンジュに口をきいてもらって相談すべきであろう」
自分で持て余す事は上位者の意見を確認して責任を回避する
これ以上の組織で生き残るための知恵は無いと言える、独断専行して後で叱責されてはそれまでの苦労が無駄になるばかりか不興を買ってしまう、無能な上官であれば逆に怒りを買うか良きに計らえと丸投げされるだけだがあの2人はそうでな無かろう
如月にとっては少し不満そうではあったがこれが最適解であろう、アンジュの居る魔王城にむかって行った、これはダークエルフとして魔王様に仕えた経験では無い、前世で主君の影武者として仕えた経験だ、主君と重臣達の板挟みになり、主人の寵愛を受けられえない側室等に困らされながら得た知恵だ
某に裁量権が有ればまだ選択肢があるダフネの部下のダークエルフに下働きとして押し付ければ済む話だ異世界で本来の目的の通りに魔王の下で活躍する機会も無い訳では無かろう、そのほとんどがそれを叶えることが叶わずに死んでいくとしても上位種に進化するまで生き残れば道が開けよう
そんな無責任な選択はあの2人ならば選択しないであろ、如月のとってもよい結果となるだろう




