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177/197

177.無効試合

有難い話だ、「法王国」に対する作戦は全て撃退されたが本命の獲物が自分からのこのことやって来た、どうやら我に恨みが有る様だが逆恨みも甚だしい、自分の力不足でダークエルフや魔王に敗北したのがいけない、我はこの世界に導いてやったのだ元の世界に不満が有るからこそこの世界に来たのだろうに


女神の導いた勇者の前の肩慣らし丁度良い相手だ、我を魔王に覚醒させてくれた暗黒神が新たな力を授けてくれた、前魔王に忠誠を誓う残党に襲撃された時の様な無様な真似を繰り返すマネはもう出来ない、その力を試させて貰おうか


相手の初手は神聖魔法による空間の封鎖だった、聖女と言って良い実力を感じる転移で逃げる様な事をすれば暗黒神に見限られてしまうため敗北と同義だが敵を分断する事も異世界に飛ばすことも出来ない、切り札を一つ封じられてしまった


王座の間に5人組のパーティが踏み込んで来た、今回は我を守るためのゴーレムが有る「魔導国」で創造された物がガラクタとしか思えない出来だ我は魔法を放つだけで良い





「私達に任せて下さい」と事前の打ち合わせ時に決めた役割通りに美咲殿が距離を詰める、魔王の左右に控るミスリルゴーレム2体をそれぞれ石田と村上が牽制して一対一の戦いに持ち込んだ、私は神聖魔法の「聖域」を維持しつつ回復役に集中する、横に千尋様が控えてくれている


「ヒルダ、私達は待機で大丈夫でしょうか?」

今回のパーティの中ではヒルダの名の方が通るためヒルダ呼びだ


護衛のゴーレムは弥生様の作だろう、ある程度手は抜いているが身長が3メートル近い大型なミスリム製だ美咲殿の仲間も決して弱くは無いが押されている、魔王は様々な魔法で美咲殿を刀の間合いに入れさせない


「戦闘には慣れていないね、無詠唱で魔法を連射しているだけだ、美咲が求めるまで手出し無用だが時間の問題だ、魔王になったとは言え魔力は無限じゃない、腰に魔剣だろう剣を下げているがヘルマンには猫に小判の代物だろう」

油断とは言わないが、千尋様も落ち着いて観戦していられる感想をつぶやく余裕も見えた


世界樹の影響で自分の手で切り刻みたいとまでの復讐心に囚われてはいない様だ、戦略的にも私の「聖域」を維持する事は必須である事もあるが、接近戦が苦手な私の側にいる事を優先していくれる事が嬉しい魔王を討伐する事が復讐であると冷静に考えていることが頼もしい


事前にかけた補助魔法も2時間以上効果が継続する、この調子なら魔王の魔力が先に付きそうだ、私はゴーレムの相手をしている2人を魔法で援護して美咲殿が魔王と一騎打ちの状態を維持していれば良い、そして魔王に焦りが見え出した、勝負を急いでいるのだろう魔法を連射速度優先から威力が高いモノに切り替えている





魔王の連射する魔法を回避しつつ避けられないものを刀で切り裂いて消滅させ障壁で防ぐ、補助魔法のお陰で息も上がらず運動能力が落ちない、魔王の焦りが伝わってくる、魔王を守るためのゴーレムは石田と村上が引き付けてくれている


魔人の身体を持つ魔王を倒すための刀はアイテムボッスの中で出番を待っているリーゼロッテがそのための毒を調合してくれた、水魔法で操るための毒も充分な量を準備しているがそれは非常手段だ、そんな詰まらない方法で復讐を遂げても興覚めだ


3対1で十分にゴーレムを操る魔王を追い詰められている、正確にはヘルマンの魂が宿った魔人と役者不足のヘルマンに弥生様が与えたお守り役のゴーレムだ今やヘルマンは焦りを越えて恐怖を感じているのが伝わってくる、もう何時でも仕留められるがもう少しいや魔力が尽きて絶望するまで遊んでやろう


私は完全に勝利を確信していたし、観客となったヒルダもユリアも安心していた、ヘルマンが前座で魔王の後に裏ボスの存在も聞いていたが、最早後は準備運動と思ってしまっていた、それを裏付ける様にヒルダもユリアも「聖域」の外に警戒を振り向けていた


裏ボスが私達の手に余るほどの強者であれば私達は目的であるヘルマンの魂を奪って主役にバトンタッチしてユリアの神聖魔法でヒルダの森に帰還する予定だ、それを油断だと言われるのならそうなのだろう、魔力が尽き変えたヘルマンが苦し紛れに腰の魔剣に手を伸ばした時に状況が変わった事に気付かなかった


魔王の力を得ても所詮魔法使いでしかないヘルマンに魔剣を使いこなす事等出来はしない皆がそう思った、私は無様に魔剣に振り回されるヘルマンを少しづつ切り刻むつもりだったが、それは間違いだった私の刀を魔剣を抜き打ちで弾き飛ばして見せた


そこにいるのヘルマンではなかった、無表情に魔剣を構える魔王がいた、刀を弾き飛ばした勢いで私に止めをさせた筈なのに追撃をしてこない


「武器を拾うが良い、ようやく役立たずな魂の支配から身体を奪えた、これからは私がこの身体を使わせて貰う、楽しませてくれ」

今までとは違う口調だ、一人称も我から私に変化していた


「インテリジェンスウエポンの様ね、私はその魂に用が有るの譲ってくれないかしら?」

刀を拾いながら交渉を持ちかける


「ならば私を満足させて見せろ、単純な話しだ一対一で私に勝てるならば私の主人と認めよう、そうすれば抜け殻は不要だ」

交渉に応じてくれたと言えるだろうか?


どちらにしても厄介だ、この魔剣の方がヘルマンより魔王の力を使いこなせるだろう、ゴーレムもこの魔剣が動かしている様で2人を子ども扱いする様に圧倒するが止めを刺そうとしてはいない


「美咲、貴方が相手をする?その魔剣が満足しそうな相手は弥生様かイライザ様レベルの腕前が必要みたいよ、あるいは貴方の夫であるニブルヘイム殿になるでしょうか」

ヒルダが話かけて来た


魔王は魔剣を床に立て柄をを両手て押さえるような形で私達を静かに待っている


「貴方の主人に相応しい相手を連れて来るわ、少し時間を頂戴」

ニブルヘイム様に任せよう


あの魔剣も手に入れたいと言う欲もあった、ダーリンならあの魔剣に支配される事も無いだろう、弥生殿は監督の立場だ舞台には上がらないだろう、友好関係ではあるが「魔導国」の妃としてイライザ殿にこの魔剣を渡す事は避けたい


「私は如何なる相手の挑戦も拒みはしない」

魔剣はそう答えてそのままの姿勢で立っている


一応ヘルマンには勝利したと言えるかもしれないが満足できる様な結果では無いが私の手に余る、ヒルダも相性が悪いと判断したのだろう挑戦する気は無さそうだった

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