176.仲間
「何なのよこの通路、何処まで続いているのよ?」
「何処って魔王城の地下までだろ、美咲は説明を聞いてなかったのかよ」
私の呟きに余計な突っ込みが入る
「はぁ、馬鹿なの?そんな事を今さら言って無いわよ、いくつか分岐があっあでしょこの通路網はどこまで拡がっているのかって事を聞いてるの」
「なら最初からそう言えばいいだろ、弥生様の事だ必要のない事まで教えてくれるほど優しくは無いだろ」
共に「魔導国」の八大貴族の一角を倒して乗っ取り、後で国自体も手に入れる際に協力してくれた長い付き合いの仲間だ、力を貸してくれた弥生様の事を信頼している様だ
「石田、弥生様は良くも悪くも人間離れした使徒様よ、私達なんて使い捨てにしても惜しくもない駒なのよ信用し過ぎちゃダメよ」
「だから何だよ、駒の役目を離れて余計な事に手を出したらそれこそ排除されるんじゃないのか?俺たちは粛々と復讐を果たすそれで十分だろ、最後の獲物だ集中しようぜ!」
「王妃としての仕事に集中するなら国で国民を守ってれば良いだろ、俺たちがヘルマンの魂を持ち帰って来るから好きに遊べば良いだろ、魂は譲ってくれるって話だっただろ」
もう一人の仲間の村上も私に意見をする
「そうね、集中するわ国の事はダーリンに任せてあるから心配しないで、貴方達2人も結婚相手を探しなさいよ、財産も十分あるでしょ」
「女の尻に敷かれる生活は御免なんだよ、家事は全部ゴーレムに任せれば良い、浮気もしないで尽くしてくれる」
スキルの無駄遣いだ村上は名前も付けてもゴーレムとの生活を楽しんでいる
「余計なお世話は止めてくれないか、一人の女に縛られたくは無いのでね」
石田が寝言を言っている
彼は自由に一夜限りの恋を楽しんでいる、その内女に刺されそうだ、寧ろ一回刺されれば良いのだ、そんな事で死ぬようならこの世界で今まで生き残れてはいない、少し痛い目にあえば大人しくなるだろう
初めてアンジュが作り上げた地下通路の足を踏み入れたが恐ろしさを感じる、共に進む美咲が脅威を感じて仲間達と話している、私の森でもアルラウネが活躍していくれているが、アンジュは異常だ次いで卯月だろう、ドライアードが危惧するのも分かる
「凄いですね、うちの子達と比べて何が違うのでしょうか?」
ユリアが私の表情から考えを察したのだろう話しかけてくれた
「香織のビーストテイマーのスキルの恩恵が有るのだろうね名付けた者の力も影響しているのでしょうね」
「そうね、レンがカオリ様とイライザ様の血を頂いて育てているけど、まだあそこまでの力は身に付けていないみたいだわ」
「そろそろ魔王城の地下に着きそうね、もう一度侵入後の打ち合わせをしておきましょう」
目の前に封鎖された壁が見えて来た
魔王に存在がバレて利用させないための処置だ聞いている残されていた地図が扉を開くための鍵の役目を果す呪符となっており使用すれば消失する
「失礼な話だわ、私達が打ち漏らすとでも考えているのかしら?」
美咲がぼやくがその言葉が私に刺さる、前回の襲撃で打ち漏らした記憶が蘇る
「ヘルマンは敵を異世界に転送して襲撃から逃れたと聞いているわ、ユリア「聖域」でこれを防いでそれで召喚魔法も妨害できる筈よ、それ以外の手札は分かっていないけど魔法の威力は強化されているでしょう」
「私が居た時は地下は倉庫で迷宮化はされていなかったのだけどそもそも何処に出るかは分からないわ、いきなり戦闘になる様な所に出ないと聞いているけど警戒して呪符を使用して通路をひらくわ」
壁が音もなく拡がり通路が出来る、目の前は地下とは思えないほど明るく花が咲き誇っている、中に入ると壁が閉じていく
「本当に魔王城の地下なのか?」
美咲の仲間の石田がつぶやく
「カトレアが眷属の食事のために整えた薔薇園でしょう人間の血の代わりの生命力と魔力を吸収出来る」
物資は持ちだしたそうだがここはそのままなのだろう、今も蜂が蜜を集めている通常の蜂では無くモンスターだ
「案内するでち」
鉢の羽を利用して言葉が届けられた
元の声とは違うが口調はアンジュのモノだ大きな蜂が先導してくれる、迷宮化した地下を3層分上がると私の記憶に有る場所に出た地下2階だ、玉座の間は地上部の3階にある
「後は任せるでち」
蜂が引き返していいく、ここまでは一切戦闘も無く通過した来たがそろそろ遭遇する可能性も出て来るだろう、警戒しながら更に二回分登り地上一階でようやく警備のアンデットに出くわした、ユリアが捕らわれた魂を救済すると武具を残して崩れていった
「ある程度は神聖魔法に耐性が有るようです、私には関係ない誤差ですが経験の浅い神官では厳しいでしょうね」
ユリアが自分の力を誇ると同時に後輩の事を心配する言葉をつぶやく
「ヘルマンは死霊魔法を嫌っていた筈だがこのアンデットは誰が造ったんだ?美咲、この鎧の紋章に覚えは無いか?俺も少しは勉強したんだが記憶にない意匠だ」
「私にも覚えは無いわ、一応王妃として紋章学の講義も受けたけれどこんな紋章は無かったわ」
「魔王のために弥生様が支援したのかもな、噛ませ役の魔王でもある程度脅威が無いと観客に受けないだろう、アンデットは後で処分もしやすい、元々エルダーリッチのお嬢様だ、遺産で受け継いだ骨董品だろう後で支配して回収するだけで良い」
このアンデットはアンジュが異世界で調達したものと聞いていたがそこまでは情報共有してはいない、弥生様のシナリオであることは説明しているので順当な推測だろう、意外とチームワークが取れている様だ、それを見て私も共にこの世界に攫われ死んでいった仲間の事を思い出す
その元凶の最後の一人が魔王として私達の手の届く所にいる、今度は逃さない




