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175.根回し

待ちの望んだ時が来た、私は運が良い、本当であればこの獲物は私のモノでは無く悔しい思いをしていたが運よく獲物が逃げおおせたのだ、今まではその不甲斐無さを責めていたがそのお陰で私が狩る事が出来る、律義に私に情報も提供してくれた


今なら当時の状況を考えると最適な行動を採った上で逃げられたのだと思う、むしろこちら動きが漏れたのは私達の不手際の可能性が高い、だからといってこのチャンスを逃す気は無い、私個人に限ればニブルヘイム様との出会いの切っ掛けでも有るのだが、落とし前は付けなければいけない共に攫われた仲間たちは私以上の動機と権利が有るのだ


今では愛しい夫であるが、私達は魔王討伐を成し遂げる事が出来なかった、それは「魔導国」の魔術師達の能力が足りなかったのが主因ではあるが、私達の力も足りなかったのは否めない、今ならそれも可能なだけの力も装備も手にしている


12年越しの復讐のチャンスだ1人はこの世界で愛する伴侶を得て丸くなってしまったが、私を含む3人に尊敬出来る先輩が協力してくれる上に聖女といっても間違いで無い賢者の助力も得られる、楽しい狩りと言ってもいい、油断と慢心は避けるべきだが余裕をもって魔王討伐に臨めるのは有り難い





美咲殿達が訪れる五日前に私の森を使徒に昇った後に初めて降臨した弥生様が訪れていた、以前一年をかけて「同盟」の各国を私が冒険者マチルダとして巡礼の旅を共にした魔術師だ、使徒になった恩恵だろう別人かと思う程強くなっていた、要件は驚くべき事だった


「貴女に良い話が有るの、ヘルマンの魂を手に入れたのよ、面白い使い方を考えたのだけど教えてあげようと思って、興味があるでしょ?」

私の知る皆から尊敬を集めていた弥生様とは少し違っていた


人としての心を失っていた言っても良いだろう、近く女神の座に就くとと聞いていたがそのためだろうか良く言えば世界を管理する存在として相応しい精神性を獲得していた


友人としてはお断りだが女神としては頼もしくもある、それならば私も世界樹の守り人としての立場で接しなければいけないのだろう


「そんなに重く考えなくても良いのよ、香織に魔王軍を掌握させるための噛ませ犬の役目を与える事にしたの、貴女は私と同じ様な重責を背負わされたのでしょう、だから次期女神としての私を見て欲しかったのよ、もう少しで私は人間では無くなってしまうのだから」

十分に重い話だ、私が如何に甘い考えをしているかを思い知らされた


「感謝します師よ、貴女との旅を思い出します、人を卒業する前の戯れに付き合う事にしましょう、どの様な趣向ですか?」

私も覚悟を決めよう


「真面目ね、貴女が変わってくれたら使徒として気楽に千秋やカーリヤと過ごせるのだけど考えてくれないかしら?」

冗談ではない、私の手に負える役目では無い、今だってドライアード達に振り回されているのだ、何が楽しくて目の前のバケモノを含めた問題児の世話をしなければいけないのだ


「今の女神様を引き留めれば良いじゃないですか、私を巻き込まないでください、私は現世に子供達がいるのですから」


「そうだね、私が深入りし過ぎた報いだ甘んじて受けるさ、そのかわり茶番劇に付き合って欲しいの、ヒルダの打ち漏らした相手の魂を確保したんだし好きなように料理してくれて良いからさ」

何処か胡散臭さを感じる


「今まで有効な使いどころが来るまで温存していたのでは?今がその時なのでしょう次期女神様、違いますか?」


「頼もしいわね、否定はしない、でも一番美味しくなるまで熟成させていたと考えてはくれないかしら、最高のタイミングだと思うわ」


「折角だからコースの内容も伝えておくわ、前菜とスープはアンジュ作のアンデットから初めてヘルマンの魂で味付けした魔王が魚料理、適当な口直しの後に裏ボスがメインの肉料理って感じね、ゼザートやコーヒーも必要なら用意するわ」

嫌な例えだ


「私が魚料理を賞味して、メインは香織が片付けると言うシナリオですか?胃薬の準備が必要みたいですね」

気が進まないが話を合わせよう


「ヒルダとは気が合うみたいで嬉しいわ、香織にはサプライズにしたいのよ、この機会に適性を確かめておきたいの、貴女は世界樹の保証が有るから問題無い思うけど、あの子は今の女神が選んだ勇者なのよね」

迷惑な話だ、さりげなく今の女神をディスってもいる


確かに私から見ても少し香織には頼りなさを感じる事がある好き嫌いがはっきりしていて熱意にムラが有る、イライザが付いているから問題無いとは思うが彼女も性格に難が有るいい機会かもしれない、香織には私に意見するドライアード達の様な存在が居ないのだ


魔王軍を掌握すればカミラ様がその立ち位置になるだろうか、アンジュやスーザンの様な子分は居るが参謀役が居ないゲオルグ老やツクモ殿の方が適任かもしれない、あるいはリーゼロッテ殿を「魔導国」から借り受けるかだがこれ以上香織のイエスマンを増やすのは危険だ


カミラ様を通じた私の妹でもある、世界樹の守り人としてもブレーキ役を務める覚悟も必要な様だ、正直今まで通りの管理された緊張感を保った和平を継続した方が良い気もするがもうその段階では無さそうだし準備も終了している様だ、「邪魔をするな」と言う警告でも有るのだろう


「アンジュが張り巡らせた地下道で魔王城の地下までの地図を渡しておくから活用して頂戴、香織の屋敷に入り口があるわ、話も通しているからよろしくね」

最後に紙の地図を残して姿を消した


地図を見る限り迷宮の様には見えない一直線で伸びている、等間隔で関所の様な場所も見えた一部分しか記載されていないが地下の道路網が出来ているのかも知れないどこまで伸びているのだろうか?ドライアード達に調査させよう今回は味方だが将来的には分からない


香織が生きている限り問題は無いだろうが誰にも寿命がある、アンジュが独り立ちしたら何をやらかすのか分からない、アンジュは成長時に私の血も与えているため私に対しては友好的だがドライアード達はもっと長い時間軸でこの世界の行く末を見ているのだろうこの森全体の意思を統一しておく必要があるだろう

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