172.結実
「カトレア、いや今はイドニアだったわね、相変わらず真面目ね、こんな茶番に付き合わなくても良いじゃない、弥生様への恩返しはもう十分出来てるでしょう」
ダリアが、私と合わせるならジルケが冷やかす
「少し貴女が羨ましいわ、私に付き合わなくても良いのよ」
何故だろう、こう答えながらもジルケは私に付き合ってくれると信じていた
「今更ね、折角新しい術式を実戦で試せる機会だから逃す気は無いわ、勿論「法王国」に仕える気は無いから、これが最後になるかもね神官が嫌になったら何時でも言って頂戴、イドニアとの冒険者ごっこは楽しかったわ」
いかにもダリアらしい返事だ
「タイミングを測って騎士団を援護すれば良いんだよね、見た目より質の良いアンデットじゃない、本当にあれが不良在庫なの?」
ダリアが私に言う
「アンジュの作品らしいわ、この世界にオーク肉を届けてくれた、肉屋の主人の世界に遊びに行って素材を手に入れたそうよ、良い感じに怨念を蓄積した死体が転がっていたのでしょうね」
「カトレアっていつからそんな皮肉を言うようになったの?貴族様のお嬢様だった筈だよね」
「ダリアとイザベルのお陰よ、品の無い冒険者と話す機会もあったしね」
「それは良い変化だよ、司祭になっても貴族共とはうまくやると思っているど、幅広い階級の物と付き合わないといけないでしょ、下積みでは特にそうなるわよ」
「あら、研究にのめり込んで追放されたダリアの人生経験は役に立ちそうね、苦労したのでしょう?」
「その通りよ、その代わり稀有な出会いに恵まれたから報われているけどね」
楽しい会話はそろそろ切り上げなければいけない
「私達の引き立て役が押されだした、主役の出番ね」
ダリアも良く戦況を見ている
広範囲に治療効果を発揮する神聖魔法を展開する、傷を負った騎士達を癒すだけではなくアンデットへのダメージも期待出来る
「アンジュのアンデットは無駄に丈夫ねエリアヒールでダメージを受けないしデバフも受けて無さそうよ」
「ちっ、余計な事を、見かけより強力なのはアンジュと同じかよ、地味に嫌らしい、陳腐な手だが効果が有るもんだ、騎士に油断させて出鼻を挫いたようだね、私達も騙された事があったわね」
「そうね、あの子予想外の事をするのよ、お陰て私を恨む2人が結ばれたんだっけ、今回アンジュは弥生様の元で見学してるわ、あの子の蜂を警戒しないで良いのは有り難いわ、噛ませ犬に提供したのはアンデットだけだし」
「この茶番には弥生様と使徒チアキの勝負でも有るって事だし、いつ変なアドリブが入るか分かったものでは無いのよ、アンジュが暴走するかもしれないし」
「だから弥生様が近くで見張っている筈なのだけど、そう言われると気になるわね」
エリアヒールで持ち直し話をする余裕も出来た
そろそろ大きな野獣のアンデットが動き出した、指揮官役のアンデットが居ないため他のアンデットを蹴飛ばしながら進んでくる歩兵が長槍を並べて突撃の供えている、補助魔法で支援しようこのままでは突破されそうだ
「恐怖と憂いを禁じれば戦意を濁らせ澱ませる事は無し、しかして素人も歴戦の兵となる」
私の考えを察したのだろう、先んじてダフネが言霊に仙術を乗せ騎士や兵士から戦いに不要な感情を消し去る
「良いね、恐怖を押さえる仙術の効果が出ている、元々練度も戦意も高い部隊みたいだけど末端の歩兵も良い動きをしてくれているし狂乱もしていない、少し物足りないが良い感じだ」
「カトレアの神聖魔法のバフと干渉しない様に仙術をかけるのは面倒だが腕の見せどころだからね、カトレア以外に気付けるのは弥生様くらいでしょうけどね」
ダフネが自画自賛する様に大した技術だ、下手をすれば上書きだけけに留まらず効果が消滅する
「後は使徒チアキと昔の仲間達かしら、戦況を監視する為のゴーレムが浮いてるわ」
「弥生様のお下がりみたいだね、意外とちゃんと運用しているみたいね」
「そろそろ準備運動も終わり、しっかり主役として目立ちましょう」
「盛り上がってきたでち、流石カトレア様とダリア様でち、でも魔王が軍勢を上手く使えていないでち、観客としても少し残念でち」
アンジュが少し退屈そうにしている、私も同感だ
2人で神聖魔法の「献身」と仙術での紙人形へのダメージ置換と的確にダメージコントロールをして支援している、騎士団の戦意も最高潮だ聖女に等しい神聖魔法で支援され、精神支配に近い仙術で連携も訓練以上の戦いを実現している
「アンジュ提案が有るのだけれど、私の花粉で子孫を残さない?」
唐突に話を切り出す
「卯月が冗談を言うとは驚きでち、弥生様に影響されたのでち?」
反応が薄い
「気でも狂ったでち?」と言うかと思っていたが本気で冗談だと思っている様だ
「コント、受粉」
冗談の延長と思われる様に私がアンジュを抱えあげる
頭に咲く芥子の花の雄しべの花粉を活性化させてアンジュの彼岸花に押し付けた
「本気なのでち?卯月はあたしが嫌いなのではないのでち?」
驚いた事に嫌がりもせず、狼狽もしない
「あたちと対等な力をもつアルラウネは卯月だけでち、後は咲夜しか居ないのけれどカオリママの血が被るからよくないのでち、卯月はスキルの相性に懸念が有るとしてもメリットは多いでち」
狂っている
ここまで感情を排除して実利だけを追求する事が出来るのだろうか?口惜しさを隠している様にも見えない私のスキルの影響から自力で逃れただけはある
「卯月と咲夜の子孫は優秀で助けて貰っているでち、あたちも優秀な子孫を残す事が出来そうでち」
何だろう少し気に入らない
やっぱりこいつは嫌いだ、喜んでくれているがこんな反応は望んでいなかった
「次はあたちの花粉で子孫を残して欲しいでち、卯月が魔力を完全に回復したら声をかけて欲しいでち」
「考えておきましょう」
私は何を言っているのだろうか
「そろそろ決着が付きそうですね」
不自然だが話を逸らした
カトレア様とダリア様が騎士団を支援してその実力を示していた、弥生様の目論見の通りに愛弟子と言ってもしい信頼出来る者に最高司祭への道を開拓して見せた、茶番劇を演じた価値もあるだろう
自分の表情が見られない様にゴーレムと自身の顔の連動を止めて無理矢理無表情をつくる、自分はどうしてしまったのだろう?他人に子孫を造らせるという行為を「怠惰」のスキルが最大限のバフをかけてくれていた事には気が付かなかった
アンジュの「勤勉」も優秀な子孫を残す行為にバフをかけていた、相反し相性が最悪な2つのスキルが手を携えて同じ目的を達成させたのだが共にその自覚が無いまま受粉が完了していた、そして「蟲毒壺」のスキルも自身の受け皿を増やしたいと考え拒絶しようする感情を抑えていた




