171.開戦
「虐げられし者達よ立ち上がる時が来たのだ、敗北主義者は我が吊るした、女神を信奉する侵略者を滅ぼす時が来たのだ」
空に映像が映り、声が響き渡る
魔人が演説をしている後ろに先日「法王国」を始めとして人間やエルフ達との和平を延長したも魔王だった人間の女魔術師が物言わぬ肉の塊となって吊るされていた
「今から「法王国」の聖都に挨拶代わりの贈り物を届けよう」
映像が切り替わりアンデットの軍勢と巨大な岩石が並んでいた
「我こそが正当なる魔王である、魔王城は既に我が手にある、戦う意思のある者は集うが良い、その手に勝利を掴むのだ、復讐の時は今なのだ」
魔王を名乗る魔人が詠唱も無く魔力を操作するだけでアンデットや並んでいた岩石が消失する、再度映像が切り替わった
荘厳な神殿を囲む都市が見える、上空に10を超える巨岩が現われた、転移魔法なのだろう次第に速度を上げながら聖都に向けて落下していく、聖都の南へと延びる街道を中心にアンデットの軍勢が現われたその先に城塞都市である聖都の城壁と門が見える
「今から歴代の魔王が無しえなかっ偉業を成しとえよう聖都は死の都と変わる様を見せ
そこで上空に映っていた映像が途切れた
「ツクモ様これはどういう事でしょうか」
疑問をこの世界で我々を鍛えてくれている師のに尋ねた
侵攻時にダークエルフだけが無傷で帰還すると裏切りが露見する恐れが有るため半数をこの世界に修行を兼ねて残す事になった、アンジュ嬢の迷宮の地上部にある森に滞在している時にこの映像を見せられた
「弥生と言う女神の使徒の企みだろうて、降臨の合わせて自分の都合の良い形に世界を整える気だ、潜在的な敵を炙り出して殲滅する気であろう、あの程度の魔王倒せる程あの女魔王は甘くない、お前らの主なら一人で討伐できる程度の魔人だ、十日程もかからず討伐されるだろう」
確かに映像越しに見る限りダフネ様よりも劣るだろう、あの程度の転送は我々をこの世界に転移させた魔女でも簡単に出来る事だ
「詰まらないでち、もう少しましな役者が居る筈でち、なんでこんな大根役者を選んだのでち」
アンジュが不満を言う
「いくら間引く対象の拾い物とは言えあたちが強化したアンデット達が壊されるのは面白く無いでち」
相手にしないでいると更に不満を垂れ流しだした
「あまり強力過ぎると被害が拡大する恐れが有るからよ、噛ませ犬なんだからあれくらいで良いのよ、弥生様の選択に間違いなど有り得ないわ」
アンジュを嗜める台詞を卯月が返すが、卯月も詰まらなそうだ
「やられ役の骨共はともかくあの岩は大丈夫なの、この神殿ならあの程度は平気だけれど、聖都はは大惨事じゃないかしら、ついでに消したい邪魔者でも居るのですか?」
欠伸をしながら私の考えを明後日の方向に深読みする
「聖都には千秋が降臨している、シナリオ通りだ人的被害は避けてくれるさ、間引きたい役立たずな貴族の邸宅に何発か落下させる予定だ人間は魔法で退避させる事になっている」
本当は処分したいところだがカーリアが許さなかったので中途半端になってしまった
今回はカーリアは降臨しない事もあり機嫌が悪いため、不自然ではあるが死人は出さないと約束して女神様に秘密にして貰っている
「弥生から聞いていたが派手にやってくれる、私を信じてくれているからだろうけれど、聞いていたより岩の数が多いアドリブは止めて欲しいな」
慌てるセーラとユリアンを落ち着かせるために敢えて心情を吐露する
予定で二発ほどわざと打ち漏らして不届きな貴族の屋敷に落とす予定だったが面倒くさい、セーラにゴミを救うために神聖魔法を使わすのも悪い全て迎撃しよう
カード化して備えていた「消滅」の魔法に魔力をつぎ込み対象数を増やして全てを消し去った、迎撃してから少し後悔した完全に消し去ったために幻影を消した程度の呆気ない最後だった、手を抜かず残すべきだったかもしれないがもう手遅れだ
「流石です、使徒の力は勇者の時と違いますね」
ユリアンが賞賛してくれたが恥ずかしい
セーラはほっとしていた失敗すれば多くの人が死ぬ事になるから当然だがセーラの活躍の場を奪ってしまったかも知れない
「後は弥生の弟子たちの活躍を見守る事にしよう、弥生が「聖女と勇者と言っても過言では無い」と言っていた2人だ、正体は魔王とその副官だがお手並み拝見だね」
私の出番は転送された岩の対処で終わりだ、そのため軽口が漏れる
私の言葉にユリアンが不快だと言いたげな顔を隠さない、本当に期待しているセーラと対照的だ、私と違い功績を周囲に示さなければいけないが上手くやるだろうか?
見れば「法王国」の正規軍が招集されている、事前に知らされているからでもあるが、予想以上に反応が良い十分に鍛えられている様だ、対する送り込まれた魔王の手下は殆どがアンデットの様だが下位のゾンビやスケルトンが少なく騎士や戦士等装備も充足している上に魔物のアンデットも含まれている
騎士の身に付ける鎧に紋章が刻まれているが見覚えが無いモノだ何処から持って来たのだろうか?古戦場から調達したにしては死体がまだ新しい腐敗はしているが肉は残っている、簡単な相手では無さそうだ
魔法で映像と音声を届けたが途中で妨害させた、聖都の状況も把握できない、十分な戦力も送り込んだ、すぐに映像と音声を妨害したのは被害を隠蔽したいのだろう、魔王として復活させた暗黒神に借りを返さなくてはいけない、聖都を陥落させれば後は自由に暴れていいといわれている
強欲なだけで金儲け以外に才能が無い坊主共にあの巨岩が防げる筈など無い、用意してくれていた数では私の気が済まないため数も増やした、それにしても魔王となり魔力が増大したお陰でこれだけの数と質量を簡単に転送出来るのは素晴らしい、これだけの力があれば異世界の人間に頼る必要も無かった
あれは過ちの始まりだった私のを殺したダークエルフの暗殺者は自らの召喚した人間がこの世界で生まれ変わった者だと聞かされた、私を穴だらけにした武器は異世界のモノだったし辻褄は合っている、私をやる気にさせるための情報だろう、悔しいが有効な手段だ
役立たずで無能な「魔導国」の貴族共にも礼をしなければいけない、晴らすべき恨みは幾らでも有るのだ、まだ届かないがいずれこの世界も手に入れて見せる、今はまだ暗黒神の道具だが全てを我が手に握るのだ




