169.踏み台
「この世界を占領した魔王の使者でしょうか、あの魔人は息災ですか?」
迷宮から女性が出て来た
直接合って分かったが彼女の持つ杖の意思が道具と化した人間を操っていた、これはアンジュが事前に推測を語って多々お陰だ
そして思い出した魔王はこの世界から魔道具を戦利品として持ち帰り部下に褒美として与えていた事を、魔王様から見れば人間と魔道具のどちらが主導権を持っているのかは些末な気にもしない事だ、目の前の魔術師が協力を誓えばそれで充分満足した筈だ、まんまと利用されたのだろう自分の部下を魔道具を通して支配されていたとしても些末な事かも知れない
「聡い人間の様ですね、そちらの妖精も友好的ですし手を結びませんか、我が主にも同盟者が必要です、自由意思を奪う様な真似はしません貴女達の主に贈り物を届けて下さい気に入るはずですよ」
迷宮の奴隷が私達を誘惑する
「届けても良いでち、ただあたちの主は魔道具程度には支配されないでち、それでもいいでち?」
アンジュは楽しそうに答える
「面白い事を言いますね、貴女達の仕える魔王は死んだのでしょう」
これは魔道具を通じて情報を得ていると言う宣言だ、ある意味勝利宣言でもあるだろう
「あたしの主はその魔王を打ち取った側の世界の者でち、私の主のところまで案内してやるから支配できるか試してみれば良いでち」
「大した信頼ですね、良いでしょう、貴女は私達の正体に気付いた者です、対等な相手と認めましょう、強がりではなさそうですし」
相手の態度が軟化した
「それならあたちから贈り物を送るでち」
そう言いって短剣を差し出した
「魔道具ですね作品で勝負と言う訳ですか面白い」
魔術師がその短剣を受け取る
「確かに受けてりました、主人に届けて来ましょう」
そういって迷宮に引き上げていった
暫く時間が経ち再び姿を現すと態度がさらに変化していいた
「素晴らしい素材の短剣は互角で込められた毒や呪いは我々に再現出来ないものでした、お嬢さんの主に賛辞を送ります、2人を客人と認めましょう、私に付いて来てください歓迎致します」
その言葉を疑いもせずにアンジュ殿が迷宮に入っていく
迷いも有ったが私も付いて行くことにした、そして豪華な客間に通された
「素晴らしいでち、改装を入れ変えた筈なのに不自然な痕跡が見られないでち、弥生様の迷宮みたいでち」
アンジュが純粋に賞賛していた
私も迷宮を操るスキルに自信を持っているし弥生様の迷宮に招待されてスキルに関して一晩語り明かしたがこの迷宮も素晴らしいモノだ、そこで待っていると少年が部屋に入ってきたエルフだろうか?まだ幼さが残っている
「本当の身体はとうに朽ち果てていてね、代わりの器で失礼させてもらうよ、素晴らしい短剣だ、私には使いこなせないのが残念だが、挨拶代わりに頂いておくよ、いずれ此方からお嬢ちゃんの主に挨拶に伺わせて貰うよ、その時はもっと相応しい器でお邪魔させて貰うからね」
挨拶になるのだろうか?自分語りかも知れない
この部屋まで案内してくれた魔術師がお茶を運んできた
「錬金術師殿この迷宮の近くに私の迷宮を創造して構わないでしょうか?問題が有るのなら別の場所を探す事に致します」
テーブルにお茶が準備される間に私がここに来た目的を告げた
実際はもう迷宮を構えれいる事後承諾に近いが恐らく気付かれてはいない、そもそも興味は無さそうだ
「今回は我々の支配下にある現地の魔王が苦戦している様で支援の軍を送る事にしましたがその際に同調して頂きたい」
過大な要求ではない筈だ
ただこの迷宮の主い迷宮にメリットは有るのだろうか
「う~ん、軍を送るのは好きにしたら良いけど、協力すらなら半分までだね、言ってる意味は分かるよね」
エルフの少年の口から出た返事はこうだ
「アンデットで良いのでしたら上質なモノを提供します、返却の必要も有りません魔道具との相性も調整しましょう」
私の手札に有るのはこれだけだ、生きた駒を望まれるのであれば今の私には提供できない
「それで構わないよ後は此方でやり様がある」
「魔道具を貸してくれれば良いでち、敵に売りつけてくるでち、精神支配の効果が出るタイミングを調整できるなら最高のタイミングで味方に引き込めるでち」
アンジュ殿が悪知恵を吹き込んだ
「それとも既に種は巻いているのでち、高価すぎて店の金庫や国の宝物庫で眠っているモノも出て来る頃でち」
子供の様に見えるが流石に私を手玉に取った相手だ私の気付かない事を推測していた
「困ってしまうな、どうやら僕と同じで見た目と経験が乖離しているみたいだね、転生者かな?それとも自分の育て上げた器かな?良いよ協力しよう、君たちが手を組んでいるなら完全にこの世界を掌握しそうだ、正直乱世が続いてくれる方が都合が良いんだけどさ」
楽しそうに笑っている
「妖精のお嬢ちゃんの世界からは手を引こう既に武器だけにされて研究されている物も有るみたいだね、君の主人かな挨拶させて貰いたいが恐ろしいのでこの世界で大人しくしているよ、君も気に入らて居るみたいだし手は出さないよ、役に立つ魔道具も進呈するよ、私がこの子に持たせている杖と同じ性能で余計なモノは無しだ、その代わりここで知った秘密は他言無用で困るよ、悪くない取り引きじゃないかな?自分の仕える魔王を売る訳じゃない」
「ダークエルフに魔道具が渡っているのですね、良いでしょう取引成立です」
断れる状況では無いし、言われる様に悪い取引では無いだろう
約束通り魔道具を送られた死霊魔術を強化し高位のアンデット創造の魔法も魔力を注ぐだけで使用できる物だった
「すまなかったでち、正直疑っていたでち」
私に贈られた杖を手に取りアンジュ殿が言った
「君が居たからね、精神支配の呪いに興味が有るのだろう、君の主人が確保している筈さ返してくれとは言わないから好きなだけ調べてくれていい、僕は新しい術式を組み上げるだけさ、君のくれた短剣が僕に刺激をくれたこれに込められた呪いを越えるモノを練り上げて見せよう、好きな時に遊びに来てくれて良いよ」
手に短剣を持ちながら言うと、楽しそうに別の魔道具を出してルーンを刻んでいく、控えていた魔導士が私達を迷宮の外まで送ってくれた、アンジュも楽しそうにしている渡した魔道具を惜しいとも思っていない様だ
「次に造り上げる作品が最高傑作なのでち、あの子も一緒でち、リディアもその魔道具を踏み台にして上を目指すでち、明日にはその杖も時代遅れの骨董品になるでち」
そう言われて喜びが半減した、さっきの取引が間違いに思えて来た
「気にしなくても良いいでち、気が付かない奴が悪いのでち、秘密にしていても問題は無いでち」
この言葉の意味はすぐに分かった、弥生様が既に手を打っていた、弥生様の手で改めて私に贈られた魔道具も検査されて問題が無い事を確かめて下さった
私はこの魔道具を踏み台にしよう封じられている魔法も自力で使用できるようになろう、その後で師匠にお下がりでプレゼントしよう




