168.お使い
千秋に先駆けて現世に降臨した、分身と統合して、「法王国」と「魔王軍」の和平の延長のための準備を整える、弟子であるカトレアとダリアが歓迎してくれ「魔王軍」側の意見を集約し「法王国」側のセーラ殿とも打ちあわせも済ませ、時期を遅らせて降臨する千秋との勝負のための準備に取り掛かる
今回の勝負には純粋に千秋と勝負を楽しみむ以外に大きな目的がある
1 魔王軍を再編してその支配者そして香織の下に集約する
2 カトレアをセーラ殿が継ぐ最高司祭の次の後継者になるように活躍させる
大きく2つの目的が存在する、そのために好都合な道具がある、暗黒神が土産に持って来た元「魔導国」の八大貴族の当主の魂だ魔王の候補として暗黒神を釣り上げる餌にしたが鮮度が落ちすぎて役に立たず、忙しさに追われヒルダや美咲への生贄にし損ねた不良債権だが今回活躍して貰う事にした
彼の役割は討伐される事が約束された魔王だ香織トカレアが活躍する為の噛ませ犬として敵役として助演男優賞を獲得して貰わなくてはいけない、お約束なやられ役としてある程度の軍勢を伴って目立ってもらう必要があるが丁度いい兵力をアンジュが別の世界で調達していた
アンデット化した魔物だけでなく掃除を兼ねて怨念を撒き散らす恐れのある瘴気を纏った死体を大量に回収しているのだその中から状態の悪い物をごっそり消費してしまう事にした
「弥生様、最高のタイミングでち、迷宮に保管庫を造る前で良かったでち」
アンジュの固有結界がパンクしそうになっていたようだ
異世界に渡るための迷宮を構えるために負担がかかり自分の迷宮を拡張する余裕が無くなっていた様だ、魔王城の地下でアンデットの軍勢を編成して準備を整える事にした、やられ役のアンデットを無駄に強化するアンジュの暴走を止めながら魔王の軍勢を用意した
「一度にまとめて創造したとは言え、ここまでの駄作は早くカオリママとカトレア様に浄化してもらって存在を消して貰わないと困るでち」
アンジュが妙なプライドと拘りを拗らせている、焼きあがった花瓶を自分で割る陶芸家を思わせる
3日で必要数を確保して憂さを晴らすために自身が使役する最高級のアンデットの創造に取り掛かっている、そのアンデットを何処で何のために使う気なのだろうか?それの出番が来る時など無いだろう、明らかにオーバースペックだ先日支援した世界なら相性さえ悪く無ければ魔王の側近にも対抗出来そうだ
「メリッサの所で披露してくるでち」
と言ってゲートを開いて遊びに行ってしまった
知らない内にアンデットを強化されるよりはましだろう、香織に注意を促して好きにさせる事にした、自分が迷宮に引き篭もっていた時にはカーリアと共にいた、アンジュにとって敬意を払える友人が見つかったのだろう、メリッサのスキルは素晴らしいモノだった
私の分身がベットを共にした訳では無いがお互いの知識や研究に付いて語り明かした事でスキルを複製していた使徒になりスキルにも恩恵が加わったのだろう、同じ目的で一晩過ごせばスキルを複製出来る、メリッサからだけではなく多くの強者からもスキルを複製していた、自分が女神を継ぐにあたり大きな力となるだろう
ダフネ様率いるダークエルフの軍勢の内半数とアスタ様が従えた数人の魔人だけが今回の侵攻に出陣した者達の生還者だ魔王は命を落としオークは文字通りの全滅となり師の率いたアンデットは全て消滅した、完全な敗北だ、秘匿していた迷宮を利用した異世界とのゲートを使い撤退することになった
この結果この世界は竜王様が魔王様の権力を引き継ぐ事になった、個人としては力を付けたダフネ様も魔王様を守れなかった責任を取る形で10将を辞任すると申し出たがオークが族長を含めて主力が全滅しており留任する事になった
勇者を含む手駒を失ったアスタ様は留守を預かっていた魔人をいつの間にか掌握して正式に10将の地位を手にしていた、師も軍勢を失っていたが異常なやる気を出してアンデットを創造して軍勢を7割ほどの数に戻して自分の地位を守った、アンジュ殿から刺激を受けた様でアンデットの質は向上している
魔王は空位となっているが暗黒神が新しい魔王を覚醒させるまで竜王様が指揮を執る事になっている、この世界で活動していた勇者達は、魔王様の死の隙をついて一つの世界に戦力を終結させて奪還し、今はその勢いのままもう一つの世界も奪還すべく戦力を派遣している
その世界に対して誰が派遣されるかの会議が招集されている、私は侵攻のためその世界で巨大な迷宮を構えている死霊魔術師の元に使者として派遣されることになった、贈り物を用意し先遣隊でもあるアンデットを編成している所にアンジュ殿が遊びに来たようだ
「メリッサは何をしているのでち」
私を見つけ呑気に聞いて来た
邪険にもできず、事情を話すと一緒に行きたいと言い出した、どうしたものだろう彼女の力は一流だが思い付きで暴走しかねない、今回交渉する相手は今は亡き魔王様に真っ先に協力して地位と力を得た魔術師だ、あちらの世界で魔王にも人間たちの国家にも与せず自分の勢力を確保していた女魔術師だ
正体の分からない実力者で魔王様も一定の敬意を払っていた動きが読めないという点ではアンジュ殿も同じだが行動原理は深い読みで情勢を掴んだ上の行動だろう、あえてこの正反対の予測不能をぶつけてみるのも面白いと思った、転移先は侵攻時に師匠と密かに築いていた迷宮だ
「素晴らしい迷宮でち、生きているのでち、弱い存在はすぐに食われてしまうでち、そのおかげで隅々まで綺麗なのでち」
アンジュ殿が交渉相手の迷宮の入り口で興奮している
「ゴーレムとは違うみたいでち、巨大な魔法生物に見えるでち」
迷宮に入って壁に触れて撫でまわしている
「やめて貰えますか、くすぐったい」
気が付けば人の様な声がする
迷宮が喋っているのだろうか?周囲から何重にも響いている
「すまなかったでち、悪気は無いのでち」
アンジュ殿が謝罪の言葉を告げる
「失礼しましたこの迷宮の主に様が用があって参りました、取り次いで頂けないでしょうか?」
故郷のインターホンの様に機能するかも知れないと声をかえる
「私の中に飼っている者に用なら外に出て待っていなさい今起こしますので」
返事が返って来たが予想外の返事だ
「お詫びにこれを進呈するでち」
魔石らしい物を取り出して床に置くと迷宮に吸い込まれていった、アンジュの言うように迷宮自体が生きている様だ
2人で迷宮の入り口まで引き返して待つ事にしたしばらくすると魔道具に包まれた人型の何かが迷宮から出て来た
「ようこそ人間と妖精、要件を伺おう」
「我が主よりこの迷宮におられる死霊魔術師殿に伝言を預かって参りました」
「成程、其方の主は誤解をしている様だ、其方の言う死霊魔術師と変わる事にしよう」
そう言うと迷宮の中に引き上げていった
「魔道具が使用者を乗っ取っているみたいでち、迷宮に挑む物を選別して宿主にしているのでち、この迷宮を造り上げた主が迷宮と同化しているのかもしれないでち、相当高位魔術師でち自分の創造した迷宮に魂を移して永遠の命を獲得し創作物に意思を持たせて忠実な部下にしているのでち」
アンジュが楽しそうに自説を語っている
「驚きました、そこまで分かるのですか?」
今回は正に迷宮が喋っていた




