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166.妥協

クロエから神殿に呼び出された、需要な用件だという


「カオリ様、お初にお目にかかります、クロエ殿から話を聞いております」

そこには背に純白の翼を生やし頭の上に輝く輪っかが浮いているた女性が居た


天使なのだろう、私の創造通りの姿で存在している


「始めまして、どの様なご用件でしょうか?」

間抜けな質問とも思ったが他にかける言葉が浮ばなかった


「まずはこの世界に侵攻した魔王を撃退した事を賞賛いたします、この世界の勇者である貴女に協力をお願いしたい事が有ります」

褒められているが撃退したのは弥生さんだ


私も活躍したが事前にダークエルフとじゃれ合っただけだ、勇者であることは間違いないが私は世界の舵取りには関与していない、察しが良いとは言えない私でも彼女が進行してきた魔王の勢力と敵対している事は想像できる


「私は自分の大切な人達を守っただけですし、その大切な人達にはダークエルフや人狼、魔物とされる者達も含まれます、そしてそんな関係を築き上げた事を誇っています、恐らくあなたの理想とは相容れない世界でしょう、そんな私にどの様な願いが有るのですか?」

私は目の前の天使にそう答えた


「そうですか、貴方も弥生様と同じ考えなのですね、残念です、貴女の理想を否定する気は有りません、それを成立させるだけの力をこの世界を守る方々が持っておられる事が羨ましい、私達が守りたかった人々はもう殆ど残ってはいないのです、そのために力を貸して貰いたかった」

目に涙を流しながらその天使は語る


「弥生様からその者達の保護等の提案は無かったのですか?貴女は弥生様に何を求めたのですか?弥生様は良くも悪くも損得を考慮される方です、冷徹な判断をされたのでしょう、私が感情に流されて進言した所でこの世界全体の意思は変わらないでしょう」


「その上で危惧していることがあります、クロエを初めとして私の大切な人達が純粋に貴方の理想に共感して決断してしまう事です、過ちとは言いません、その決意を愚かな事と断じる事もしません、敬意を払うべき決断でしょうが私のエゴがそれを見逃す事は出来ないのです」


「貴女の理想を叶えるために、どれだけの犠牲を他人に払わせる気でしょうか?私は大切な人達を必要のない危険に晒したくはないのです、貴女が何者であろうと私の大切な人々を傷つけるのであれば許しません、そんな道に誘う者は私のとっては倒すべき悪魔であり、その理想は悪魔の誘惑に等しい消し去るべきモノです」


「その代わりに些か扱いの難しい物ですが魔道具を進呈しましょう、使用時までは悪影響を封じる封印を施しています、使いこなせるのであれば役に立つでしょう」

私が死蔵している「蟲毒壺」で作成した武器を並べた


天使が驚愕している、クロエも驚いていた


「ここに居るクロエは見事に使いこなして見せました、勿論魔道具に使われる様な未熟者には栄光と引きかえに破滅をもたらす様な危険な代物ですが、貴女が抱いている理想や正義と比べれば可愛いモノです、この魔道具は一つで1人を生贄にするだけなのですから、私の大切な者達を誑かす悪魔として退治される前にこれらをもって帰る事をお勧めします」


「貴女こそが悪魔なのでは?この魔道具を作成するのにどれだけの犠牲を積みあげたのですか?」


「その魔道具は私がスキルで取り込んだ毒や呪いそして病魔を練り上げたモノですある意味廃物の再利用です、この世界で現れるはずだった多くの死や災いを取り除いた結果です、それをどの様に活用するかは貴女次第です」


「傑作と称賛される様な代物では有りませんが「毒をもって毒を制す」様な事も出来るでしょう、不要だと言うのであれば無理に持って行けとは言いません、正直持て余していますが他にも欲しがる者達が居るかもしれませんね、誰がとは言いませんが」

半分は脅しだ、その気になればこの天使の敵の手に渡るかも知れないと言っているのだ


ダフネさんにでも見せれば喜んで持ち帰るだろう、戦う可能性の有る相手は共に魔王に仕えていた者達も含まれるのだから


この言葉に帰って来たのは諦めと敵意に満ちた眼光だった


「貴女はこの先あの女の後を継いで魔王にでもなるのでしょうね、本当に残念です、ですがクロエ殿を鍛えてくれた事を感謝します、お陰で私が守る事が出来なかった者達の魂が救済されました」


「この魔道具を頂いた恩も忘れません、私と共に多くの者が多くの敵を道連れにして見せましょう」

聞き捨てならない捨て台詞だ


私が自分のために創造していた刀をアイテムボックスから抜き打ちして天使の身体に刃を振り抜いた、天使を傷付ける気など無い、私が切ったのは彼女を蝕んでいた怒りや恨みだ、この刀はツクモさんが刀で呪いだけを切り裂いて見せた彼の刀の能力だという事で、苦労して自分のその能力を再現したお気に入りだ、その時の試作品もアイテムボックスの中に眠っている


私の望んだとおりの効果が発揮された、怒りや恨みに苦しみつつも彼女を支えてもいたのだろう、天使が呆然としている


「もう一度弥生様と会って冷静に話し合っていかれては如何ですか?私も同席しますので、今までの貴女なら有り得ない妥協と切り捨てた選択肢も考慮してください、私は貴女達をこの世界に受け入れる用意が有ります、貴女が言う様に魔王としてかも知れませんがね」

彼女はうな垂れ、泣きながら付いて来た


「取引で世界を一つ割譲する事を飲ませています、二つとも望んだのですがこの辺りが落としどころでしょう、その世界に受け入れましょう故郷を失う者達は気の毒ですが最後まで戦う事を選ぶもの達もいるでしょう貴女がそれを望むのであればそれぞれの世界に送り届けもしましょう」


「3つの世界の兵力を結集出来れば勝算もあるでしょう、貴女がそれを見届けることが出来るかは分かりませんがそこで勝利すれば、故郷を奪還する戦い挑む未来も見えて来るかもしれません」

弥生さんが最終的にその天使と話し合って基本的な方針が定まった、天使は自分の世界に戻り意見を集約して再び訪れるという


私は怒りや恨みを和らげる神器を創造して天使に持たせたそれは小さなホイッスルだ、ラグビーの様にノーサイドを告げて欲しい


「もう少しで私は堕天使に堕ちるところでしたカオリ様感謝致します」

去り際の言葉が心に残った


魔道具はもう少しの間私のアイテムボックスの肥やしになりそうだ、彼女が仕える神を含めた3つの世界の神の決断次第で自由に使える容量が増えるだろう、このまま眠らせる方が良いとは思うがそうはならないだろう簡単に故郷を諦める事等出来ない筈だ、魔道具達が出番を待っているせめてクロエの様な実力者に渡って欲しいものだ

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